第13話 ヤンデレ勇者、レベル88888
「やばっ…!」
凄まじい豪風とともに突っ込んでくるそいつを俺は全く見切ることができなかった。
「ハヤトクンッ!」
勇者がいなければ確実にやられていた。
俺は勇者に抱えられ、どうにかその攻撃をよけたらしい。
なにせ一瞬の出来事だったため、俺自身はなにが起こったのかわからない。
「ついてこれる?」
勇者は、あの悪魔から目を離さずに聞いてくる。
一瞬でも目を離すと死ぬ、そのレベルの戦いなのだと肌で感じる。
「まぁ…なんとか…?」
俺のレベル1000に比べ、さっき見たあれが間違いでは無ければ推定レベル50000、桁違いとはよく言ったもんだ。
「…ここで死んだら…もう生き返れないからね…!」
俺は勇者から手を離され、自分の足で地面に立つ。
「まったく、完全に足手まといじゃないですか…?クソ勇者様ぁ?」
地面が揺れている…そして俺の手も震えている…気がする…。
「足手まといかどうかは…自分で確かめなよ…くそ悪魔」
悪魔がにやりと笑ったのが見えた瞬間、その顔が俺の目の前へと現れる。
「去ね」
ただ、そのスピード感で殺された経験は山ほどあった。
間一髪で超高速で繰り出される突き攻撃をかわすと、あいつはあからさまに驚いた様子を見せた。
「人間、なめんなってんだよ…!」
俺は勇者から聖剣を受け取り、それを悪魔に向かって切りつける。
爪で防御を試みようとするも、如何なる物質もその聖剣の前に意味をなさない。
「ちぃ…っ!」
急所を外し足一本を切らせ、悪魔は俺の間合いから距離を取る。
「人間風情が…!小細工を…!」
聖剣が小細工ねぇ…と思ったが、勇者が肩をたたいてきた。
「いやぁ君には、ほんと驚かされることばっかりだよ」
レベル差にして約490000、明らかにレベルが段違いだ。
「いやぁホント、千円の買い物しようと思ったらおつりで五万円手に入った時、みたいなね」
たとえが分かりづらすぎて、まったく意味が分からなかったのは俺だけではないだろう。
勇者が一歩、また一歩と歩みだすたびに花々が芽吹くその姿は、まさしく戦場に立つ聖女だった。
「じゃ、君はそこで待ってて。出番終了」
謎に出番終了を言い渡され、とりあえずそこに突っ立っていると、それを好機到来と見た悪魔はすぐさま俺に間合いを詰めてくる。
「げ…っ!?」
まさに俺に突き刺し攻撃をしようとしていた爪は俺の目の前で止まり、その腕はぼとりと音をたてながら垂直に落ちる。
「……げげげ…!?」
本人も意味が分からないようで、困惑している間にいつの間にか後ろに立っていた勇者に体を真っ二つに切り落とされる。
その一連の流れは、あまりにもあっさりとしすぎていて、見ていた俺にも何が起こっているのかうまく説明できないほどだった。
そして俺は同時に、一瞬勇者のステータスを見た。
今まで修行をしていた間も一度としてみたことがなかったそれはあまりにも異常だった。
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ユリア・アイリス(勇者)
レベル88888
MP88888
物理攻撃力88888
魔法攻撃力88888
攻撃魔力88888
回復魔力88888
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どうりで敵わないわけだ…と俺は謎に納得した。
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