感嘆符

鈴音

びっくり

異変に気づいたのは学校帰り。仲の良い友人からのLINEに気づき、スマホを開くと、あらゆる感嘆符が消えていた。


友達はありえないほどの数の感嘆符を使うことで有名で、毎度本文より感嘆符の方が多いほどだ。


そんな彼のLINEから感嘆符が消えるとどうなるか、なんと1か月前のメッセージが簡単に遡れてしまった。前は数分かかったのに。


友人も感嘆符が消えていることに驚き、メッセージを送ってきた。普段なら、やばい 感嘆符消えた 。この文に最低10を超える感嘆符がつくのに、この質素な文が一通。もはや驚きを通り越して恐怖を感じている。


メッセージを送るのは怖いので、よく集まる公園に集合することにした。


スマホ片手に現れた友人は、とても悲しげな顔をしていた。何事か聞くと、どうやら部活で作成した作品が消えていたらしい。たくさんの感嘆符だけで絵を描く。なんてふざけた企画だったが、独創性と完成度の高さが評価され、一時は地元の美術館に展示されていたほどの作品。彼は、アイデンティティを失ってしまっていた。


私たちはどうして感嘆符が消えたのか、調べることにした。


インターネットの掲示板、SNS、ニュースサイトなど。しかし、わかったのは感嘆符がないと、文章はわかりにくく、読みにくいことだけだった。


そうして話しているうち、日は傾いて来た。段々と調べるのに疲れて、くだらない世間話を楽しみ始めた。


さて、そろそろ帰ろうかと、もう感嘆符を使うのはやめようとベンチから立ち上がったその時、ふっと風が吹いた。夕暮れの心地よい風だと太陽の方へ目を向けると、一人の老紳士がたっていた。


老紳士は被っていたハットを持ち上げ、丁寧に挨拶をしてくる。杖をつき、モノクルを付けた紳士は、一言私たちにこう告げた。


(君たちが望むならこの感嘆符を返そう。しかし、君たちは昨日こういっていた。感嘆符使いすぎてわけがわからないと。本当に、返して欲しいかい?)


何だこの紳士。と、思った。私たちは、紳士にこう返した。


はい。もちろん返して欲しいです。訳がわからないのは私たちが文を読むのが苦手だから、これから、頑張って文を読めるようになります。


これが正しい答えかわからなかった。でも、紳士はにこりと笑い、指を弾き鳴らす。再び風が吹き、スマホのバイブがメッセージが来たことを伝える。


感嘆符帰ってきた!!!!!!!!やったぁ!!!!!!!!


私たちは、感嘆符を取り返した。


しかし、最後のメッセージが誰から送られてきたか、まだ私たちは知らない

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

感嘆符 鈴音 @mesolem

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ