社会的勇者召喚〜勇者召喚に賛成か、反対か〜

ヘイ

第1話


 そこは異世界オーランド。

 そんな異世界オーランドの中の一つの国、ザカラスタ国はいくつもの政党がマニフェストを掲げ、政治を取り仕切ろうと躍起になっていた。

 疾る選挙馬車。

 ばら撒かれる宣伝のチラシ。


「我々は隣国ヴァルハーデンの脅威から我が国を守るために、軍事費の増強を──」


 拳を握りしめ、男は叫ぶ。

 民衆はヒソヒソと話す。


「誰がお金を払うと思ってるのよ……」

「そうよねぇ。召喚魔法だってタダじゃないのに」


 召喚魔法に使われる金額は金貨30,000枚。日本円換算で約100億円。国民にとっては大きな問題である。例えば資金調達は税の引き上げによって行われるだろう。

 国債の発行もあり得る。敵国ヴァルハーデンは魔皇帝が支配する巨大帝国であり、彼らへの警戒体勢の為にザカラスタは既に多額の出費をしている。出費の原因はそれだけではない。

 引退した騎士への年金の支払いにも多く支払われている。彼らの引退後は今まで非常に安定している。国を守護すると言う名誉と危険性のある仕事に努めたのだから当然の権利であると主張するやもしれない。


「勇者召喚は反対! 断固拒否する!」


 叫ぶのは中年の程の騎士が数十名でスピーチの邪魔をする。


「そも! そもそも! 勇者は我らを救うのか!」

「あったことすら無い異邦の民に信頼を置くのは危険ではないか!」

「たった一人! 或いは数人に我らの将来を託すなど賭け事も良いところ! 国が賭け事をするなど何たる汚職!」


 騎士たちは政党の代表者以上に鍛え上げられた身体で声高に叫ぶ。

 尤もらしいことの様に、民衆の心に呼びかける様に、不安を煽る様に語るが彼らがこの行動を起こした理由は自らが職を失ってしまうかもしれないと考えたからだ。


「勇者召喚、反対!」

「勇者召喚、反対!」

「勇者召喚、反対!」


 騎士達は叫ぶ。

 

「ムゥ! マトモにスピーチも出来んのか!」


 男は忌々しげに騎士たちを睨みつけてから空気の悪さを感じ背後に止めていた馬車に乗り込んだ。


「次のエリアに向かってくれ」

「はい。次は5番街でございますね?」

「ああ」


 馬車は走り出す。

 騎士達は馬車が走り去っていくのを見送った。


「何であんなに必死になってんだろうな……」


 十代後半の学徒などは友人と話しながら人混みの中を歩いていく。


「んー……? まあ、関係なくない?」


 彼らの関心は向かない。

 勇者が召喚されたからと言って学校の生活が明確に変化するわけではないと思っているのだろう。


「俺たちは学生で、政治なんて大人がするもんだろ? 社会は大人が作るんだし」


 何を言ったって分かっていないと言われる様な物だ。


「それに選挙権なんてないんだし」


 それもそうだな。

 2人はいつも通りの会話に戻る。集まっていた民衆も次第にばらけていく。


***


 こんな感じの勇者召喚を行うか否かで争う、なろう系小説とかどうですか?

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