第3話 ロザリア治療院のスタート

これで、命は助かったわ。


だけど、貰ったお金もすぐに底をつきそうだわ。


実は売れば、物凄くお金になる物があるのだけど、今迄売らなかった物がある。


これは叩き売る事にしたわ。


幾らの値が付くか見ものなのだが、売る相手がくるのはもう暫く先だだわね。



それはそうと目先のお金が余り無いわ。


何か手はないかしら?


物が殆ど入っていない異次元収納を探してみたら4枚の紙が出てきた。


そのうちの1枚は「聖女支援の約束証明」だった。


一通り見直した。


碌なもんじゃないわね。


全部国や王族、貴族の都合の良い事が書かているわ。


しかも、小さな文字で、「魔王討伐後は無効」と書いてある。


殆ど詐欺だわ、詐欺。


だけど、無効にならない文章が二つだけある事に気がついたのよ。


『治療院を自由に作って良い』という権利と『貴族や王族の治療に必要な物は自由に手に入れられ、そのお金は王家が負担する』


そう言う内容よ!


本当にゴミだわ!


私達を使い潰す為の書類としか思えないわ。


だけど王と法皇のサインも入っているのよね。


なにか使えないかしら?



◆◆◆


よく考えて、私は、冒険者ギルドに来た。


ここで治療院をすれば冒険者が利用するから『絶対にお金になる事は確定』だけど、それは不公平だから、誰にも許されない。


『普通は』ね。



「ギルドマスターはいますか?」


「ロザリア様...いえ、ロザリア何の御用でしょうか?」


「横の空き地を借りて、治療院をしたいのだけど?」


「何を寝ぼけた事を言っているんですか? そこはいかなる治療師も治療院に出来ない決まりになっています。解り切っている事ですよね」


「だけど、聖女は別よ!」


「はぁ?元聖女様、あなたの特権の多くはもう破棄されています」


「はい、これ読んで」



私は、書類を見せた。


「確かに、殆どの権利は無いわ!だけど、二つだけ残っているのよ!良いわ、貴方は王命と法皇のサインを無視できるほど偉いのね!王城に訴え出てくるわ!」



「うっ、すみませんでした」


「もう遅いわ、決めたわ!流石に王命に背いたら、ただの市民の貴方は只じゃ済まないんじゃないのかしら?」


「ごめんなさい、本当にごめんなさい」


「だから、遅いのよ!貴方の対応は既に記録石にとったから、覚悟して頂戴!」



「何を揉めているんだ」



来たわね。


「ギルドマスター、助けて下さい、ロザリアが無理を言うんです」


「何だ?」



めんどくさいわね。


仕方ないわ、私は事情を話した。


「聖女支援についてか?確かに使えなくなると俺も聞いたが、たしかにこの2つは生きているな!しかたねぇ貸してやる一か月金貨3枚だ、それ以下にはしねぇ」



「解ったわ..後払いでお願いするわ」


「出来ねぇな」



随分吹っ掛けるし、酷い対応ね!なら良いわよ、こっちも考えがあるわ。



「それなら、仕方ないわ!この子で払うわ!」


「はっミランダで? 何お前は言っているんだ?」



「罪状は王命及び法皇命、及び、聖女侮辱罪ね。皆んなから、元聖女とか言われてたから私も忘れていたけど..書類がある以上は私は「聖女」よ!最も、殆ど権利は無いけどね! だけど、その子は、ギルドマスターも呼ばずに王命と法皇命を無視したわ!殺しても許される筈よ?違うかしら?可哀そうだから奴隷で許してあげる、この子を買ってくれない?」


「聖女、貴様ぬけぬけと!」


「ギルドマスターならご存知でしょう? 勇者セイルや私達がどんな思いをしたのか!冒険者が依頼を果たして報奨が払われなかったらどう思いますか? ましてパーティメンバーが全滅してまで果たしたクエストだったら?その子が踏みにじったのは、そんな中私の手に残った僅かな権利なのよ!それを踏みにじったのよ!私が悪いのかしら?」



「仕方ない...ミランダのミスに対して1年、横の空き地と小屋を貸してやる!無料で良い!それで良いか?」


あくまでもミスに対してのけじめね。


買わないという選択をしたのだから、善人なのでしょうね。


「それで手を打つわ!ちゃんと証文も交わして貰うわ、その後は金貨3枚で月借りれるという事もね」


「解ったよ、その代り、この子との事は水に流してくれ」



「良いわ」




これでロザリア治療院がスタート出来るわ。



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