雲運送

わたしは雲

青白い空を漂いながら人間達の想いを吸いこんで歩いている

勤務時間は日が登ってから沈むまで

下を向いて歩いているとすぐわかる

目が合うんだもの

いっぱいに涙をためた目がこちらを見ていて

何かを訢えてくる


こちらから声をかけることは無いけれどあなたがたは自然とそれを話し出してくれる 

溢れたそれを大きく吸い込むと少しだけ丿ドが苦しくなるけれど

その味は誰1人同じ人はいなかった

りんごのように渋さを秘めた甘さと酸っぱさ

それは何十年も歩んだ道の複雑さ

さくらんぼのように小さな思いの中の小さな甘さ

それは未来を秘めたままの終い

水のように冷たくせせらぐ喉の味

それは手を伸ばしても届かないほど


尽きることのない仕事だけれど運べど運べど誰かに届くこの思いは


届けど届けど帰ることはないけれど


ふと同じ道を通りすぎてみるとあなたがたはまた目を合わせてきてくれる

それはまた違うお届け物を。

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短編集 代代 @motty11

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