雲運送
わたしは雲
青白い空を漂いながら人間達の想いを吸いこんで歩いている
勤務時間は日が登ってから沈むまで
下を向いて歩いているとすぐわかる
目が合うんだもの
いっぱいに涙をためた目がこちらを見ていて
何かを訢えてくる
こちらから声をかけることは無いけれどあなたがたは自然とそれを話し出してくれる
溢れたそれを大きく吸い込むと少しだけ丿ドが苦しくなるけれど
その味は誰1人同じ人はいなかった
りんごのように渋さを秘めた甘さと酸っぱさ
それは何十年も歩んだ道の複雑さ
さくらんぼのように小さな思いの中の小さな甘さ
それは未来を秘めたままの終い
水のように冷たくせせらぐ喉の味
それは手を伸ばしても届かないほど
尽きることのない仕事だけれど運べど運べど誰かに届くこの思いは
届けど届けど帰ることはないけれど
ふと同じ道を通りすぎてみるとあなたがたはまた目を合わせてきてくれる
それはまた違うお届け物を。
短編集 代代 @motty11
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます