第58話 馬券検討会
「まじか……」
5レースの馬の能力を見て頭を抱える師匠。
「え……嘘やろ……」
アカネも師匠と同時声をあげる。
師匠がアカネに話しかける。
「どうしたんだ?」
「そっちこそどうしたんや?」
「馬の能力とバイアスがな……そっちはどうしたんだ?」
「オッズやなあ……」
「気になる馬の番号をせーので言おうぜ」
「ああええよ」
「せーの!」
「「5番!」」
師匠とアカネはくしくも同じ馬をあげる。
師匠がアカネに普通に話しかける。
「俺らの解析じゃこの馬の能力は5番手、バイアスは完全に前残りで、この5番は逃げ馬。そうなればこの馬を本命にしたいが能力1番手の9番がちょっと抜けてるんだよな……ただこの馬は後ろからいく馬なんだよな……」
そういうとアカネは頷いている。
「せやね。うちらの見立てと同じやね。5番は今2番人気で3.5倍やんか? 今までの5レース全部前残り決着やって……他の客に気付かれとるわこれ。能力5番手評価でこの人気は完全に過剰人気やし、うちらはこの馬10倍以上なら本命にするつもりやったんやけど、今のオッズ3.5倍じゃ推せんわ」
「なるほど。ちなみどれぐらいの確率で5番が来ると思ってるんだ?」
「能力的には1割あるかないかってところやろけど。バイアス考えたら3割、4割で馬券になるんとちゃう?」
「そうかそんなに確率高いか」
「1600で内回りやし、前残りのバイアスやったらもう手が付けられへんで」
「解析によると9番が1番能力高いんだが、それはどう思う?」
「せやね。バイアスがフラットやったら9番はもう1個上のクラスでも勝ち負けすんやない? でもこのバイアスがもろにでてる状況やしな正直頭で来る確率は2割ないと思うで。でもオッズ的には美味しいでフラットやったらオッズ2倍台の馬が5倍で買えるんやさかいな」
「そうかあ……」
「ザキのパドック診断でも5番は調子いいとるな9番も悪くないって」
ってあれ? これ馬券勝負っていうか二人で馬券予想してないか? まあでもこっちの方が予想精度滅茶苦茶上がりそうな気が……あえて黙っておこう。
「おっちゃん買い目はどうするつもりや? 5番から買うんか?」
「ああ、能力2番手からの差は少ないからな。5-9の馬連とワイド、5-9の二頭軸の三連複あたりか」
「でもなうちらのスタイルは5番買えんからね。オッズ的に美味い9番からやね」
「そうだなお前らは期待値特化だからな」
「せやせやって!! これ馬券検討会になっとるんやんけ!!」
アカネは突然びっくりしたような声を出した。
師匠もそれに気が付く
「あ!」
アカネはなにかもぞもぞした様子で呟く。
「な、なんか、こ、こういのうも悪くないな……誰も損するわけやないし……期待値あるんやないの……」
師匠は目をつぶって眉間に皺をよせて腕を組んで考え事をしている。
何を考えてるから分からない師匠の代わりに俺が答える
「そ、そうですよね。誰も損しないし。漫画みたいにフュージョンなんちゃって……」
師匠はやはりずっと目をつぶって何も言わない。
そんな空気を察してかアカネがすまなさそうに話しかけてくる。
「……うちらと同じ目線で馬券の話できたからつい調子に乗ってしもたわ。堪忍してや……」
「アカネさんもこういってますし……師匠の嬉しそうに話をしてたじゃないですか……っていうかむしろ師匠から話しかけてましたよね?」
師匠は目を閉じて何も言わない。
その師匠の態度にアカネもイラついた感じになり
「あん? なんやその態度。うちも謝ったやろ! あんちゃんがいうようにそっちが先に話しかけてきたんとちゃうの? もうええわ。もうおっちゃんとは口きかへん!」
そういうと師匠はカッと目を開くとアカネの前に立つ
あ! どうせまた変なこと言うぞ! 師匠を止めないと!!
「し! ししょ……」
すると師匠は右手を差し出してこういった。
「コラボだ! アカネ! 俺たちとコラボ予想をしてください!」
「「え?」」
不意を突かれて固まるアカネと俺。
「さっき話していて閃いたんだ。俺たちが組んだらこの魔境大井完全攻略できるんじゃないかと。今日1日だけでいい。俺たちと組んで欲しい」
アカネは真剣な表情で答える。
「……うちらは損はせん……期待値だけを追っかけとる。あんたらと組むのは期待値しかあらへん。今日1日コラボして大井の魔物退治しようや!」
そして師匠の差し出した右手を握った。
【緊急告知】
昨日行われた馬券対決!1位の穴の龍と異世界馬券師の究極コラボレーションが急遽決まった!! 本日大井の5レースからコラボレーション予想を大公開する!!
穴の龍と異世界馬券師の究極コラボ予想を信じろ!!
大井5レースの究極予想&究極買い目は5分後に発表する! みんなハアハアしながら待て!
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