第59話 ハァハァできる馬みいつけた

 スマホを見たアカネが師匠に話しかけてくる。

「おっちゃんハァハァできる買い目ってなんや? なんか秘策でもあるんか?」


 申し訳なそうに答える師匠。

「い、いやその場の勢いというかノリで言っちゃった……」


「……そんな無責任なこというてからに……」


 俺は頷きながら会話に加わる。

「ほんとですよ……この前の配信も変なこと言っちゃうし……」


「あれは謝っただろ? もういいからハァハァできる買い目をみつけようぜ」


「せや、おっちゃん達の解析で分かった馬の力関係おしえてくれへん?」


「細かい数字は教えられないが、上から順に9番、7番、1番、12番、5番、3番……」


 と能力の総合値の高い順に教えている。


「1番って能力3番手なん?」


「ああそうだな。でもこの馬、後ろから行く馬だろ?」

 アカネはスマホを取り出して何かを見ている。


「ちょっとうちハァハァしてきたんやけど!!!」


「なんでだよ?」


「ちょっとこの1番の馬の6走前みてみ?」


 アカネから差し出されたスマホをみると1番の馬の情報が表示されている。


 その馬柱の下には1,1,1と表示されている。

「師匠これって……」


「ああ、1番は逃げたことがある」


 アカネは首を横に振る。

「それだけやあらへん。この時の逃げた時の騎手と同じ前野が今回乗ってんのや!」


 アカネに話しかける。

「そうか。それだと逃げる可能性が高いってことですよね」


「そうやそういうことや! しかも能力高いのに今8番人気で単勝22倍やこれでハアハアせんやつおるんか?」


 師匠が口を挟む。

「しかも馬柱を見る限り5番は逃げれなければ脆い。内にいる1番がハナを叩けば5番は行ききれない可能性もある。そうなれば」


「せや! 過剰人気しとる5番が沈んで過少人気しとる1番が来るってことや」


 アカネは頷きながら口を開く。

「ザキ! 1番のパドックどうや?」


「1番パドック調子良さそうやっていうたやろ。聞いてへんのか」


「すまん。どうせこうへんと思っとったら忘れ取ったわ。ガハハ」

 そういってアカネは笑っている。


「相変わらずひどいの」


 そんな2人に師匠が話しかける。

「じゃあ俺たちのコラボ予想の1回目の本命は1番にするぞ」


「ええよ。っていうか1番本命せんかったらおかしいやろ」


「来なかったらお前のせいな」


「えー1番こうへんかったらおたくらの解析がおかしいってことやろ」


 異世界馬券師&穴の龍コラボ予想!!

 大井5レース 1600メートル14頭立て

 本命は……01 フュージョンアップ


 我々の独自のアルゴリズム解析を行い馬の力を解析した結果、1番フュージョンアップの能力はこの馬の中では3番手である。本来ならば能力抜けて1番手である9番や現在の前残りのトラックバイアスを考慮し能力は5番手ではあるが2番手から5番手まで差がないため近5走全て逃げている5番を推したいところではある。


 それではなぜ1番を推しているのか? 穴の龍の予想によれば1番が逃げる! その根拠は6走前に逃げており。そしてその時の鞍上と同じであるのだ。


 そう感のいいフォロワーはもう気づいてると思うが1番が内枠からそのまま逃げた場合、5番はハナを叩けずそのまま沈む可能性すらある!


 自信度は最強の☆☆☆☆☆☆


 ☆5を超える最強の☆6だあああああああああああああ


 これが穴の龍と異世界馬券師の最強予想だ!! 俺たちを信じろ!!


 買い目単勝1番! 保険に1-9の馬連! 以上!!


「これでよし」

 スマホを打ち終えた師匠は投稿する文を俺たちに見せてくる。


 アカネが答える

「これでええんとちゃう? うちらの買い目は単勝1番にワイド1-4、1-8、1-14でおっきいとこひっかけにいく馬券や」


 ◇◆◇


 ファンファーレがながれ場内の実況が聞こえてくる。

「現在1番人気は7番サンタクレア3.8倍、10倍以内が5頭という混戦模様! 14番サラサラクイーン、ゲート入り完了! スタートしました! 5番モモエチャン好スタート! 1番フュージョンアップも押して押して出していきます!」


 アカネのドスが効いた声が響く。

「ごらぁぁぁぁ行けよ!! 引くなよ!! 前野! ひいたらいてまうぞ!! こちとら1万いれとんねんぞ! 絶対いけよ!」


 女の……子? だよね……


 あっけにとられているとザキさんが話しかけてくる。

「アカネは園田で鍛えてるさかいな。金賭けてたらあんな感じになるんや」


「うちの師匠も同じですよ」と言った瞬間師匠の叫びが聞こえてくる。


「しゃああああああああああ!! 行き切ったぞ!! よくやった前野ぉぉぉぉ惚れたぞぉぉぉぉ!!」


 場内の実況が状況を伝える。

「1番フュージョンアップが前野騎手が主張してハナを行きました! 5番モモエチャンは引いて2番手! 7番サンタクレアが三番手で6番ヤングマンパワーと8番イイネチュウドクが続いています」


 アカネと師匠2人でもう勝ったようなつもりでハイタッチをしている。


 そして4コーナーを馬が回って……

「先頭は1番フュージョンアップ! 楽な手ごたえだ! 5番モモエチャンはズルズルと後退! 7番サンタクレアはちょっと苦しいか! 鞍上の手が動いている! 」


 よし! そのままいけば1番が勝つ!


 そう思った瞬間、師匠とアカネの声が聞こえてくる。


「そのままや! 残せ! 残せや! うしろくんなよ!」


「こいや! 残せいや残る! 残るぞ!!」


 場内の実況が興奮気味に伝える。

「さあ残り100メートル!! 1番フュージョンアップ先頭!!2馬身ほどリード! 12番サプライズメイトも脚を伸ばす! 後方から9番フェイスロックと6番ヤングマンパワーが一緒に伸びてきているが、 しかしフュージョンアップ先頭! 先頭のままゴールイン!! 2着12番サプライズメイト 3着は9番フェイスロックと6番ヤングマンパワーのどちらかわかりません!」


 師匠が吠える

「しゃああああああああああああ!! 単勝ゲットぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 1万買ってたから20万以上はつくはずだあああああ!!」


 アカネも吠える

「きたでこれぇぇぇぇぇ!! うちも単勝1万あるから20万はあるでこれぇぇぇぇ!!」


「よしアカネ写真とろうぜ! 写真! 的中写真だ」


「お! いいね!」


 ということで二人の取った馬券を並べてSNSに投稿しようとする師匠。


「確定でるまで投稿は待った方がいいよな」


「せやね。配当も一緒にかいた方がええやろ」


 5分ほどまっていると掲示板に確の文字が灯る。


 そして配当が表示される

 単勝 1番1020円

 複勝 1番350円 12番260円 9番180円


「あれ? 20倍っていってませんでした?」


 師匠は首をかしげる

「……あれ? 締め切り5分前は確かに20倍あったんだけど……」


 アカネがハッとした顔をする。

「あ! うちらの投稿、締め切り5分前ぐらいやったよな?」


「ああ……あ!!!」


「あかん……やってもた……うちのフォロワー3万。あんたらが2万ぐらいやろ?」


 頷く師匠と俺。


「被っとるものおるやろけど5万人がみてたんやでうちらの投稿……そりゃオッズも下がるで……中央とちごうて平日の地方なんか売り上げそんなにはあらへんからな。こんだけの人数がみてたらそりゃオッズもぐんと下がるで……せっかくハァハァできたんのになあ」


 師匠は首を横に振る。

「俺たちの予想見て損してないんだからそれでもいいんじゃね」


 アカネはちょっと納得してないような感じであったが

「……まあそうやね。うちらの予想みて損した人おらへんならそれでもええか。いうてうちらも10万はとれてるさかいな」

と話していうちに腑に落ちた感じになる。


「そうだそうだ。俺たちだって10万取れてるんだからまあ十分だ」


 ということで師匠は馬券の写真をSNSに投稿する。


 これが最強予想の最強馬券だ!! 単勝10.2倍を見事に的中!!!


 それにすぐリプライが飛んでくる。


<最強予想なら3連単当てろよ! 3連単10万ついてんだろ!>

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