第53話 小学生に負けた?
師匠もほぼ同時に大声を出していた。
「10番差せ!! こい頭で来いやあああああああああああ」
場内の実況も最後の直線に入りボルテージが上がる。
「8番ゴーイングドゥドゥ逃げる逃げる!! 10番ハイハイアジサイが並びかけてくるが!! ぬかせない! ぬかせないぞ!! その後ろから14番サムサモアツサモが迫っているが!」
最後の直線に入ると8番と10番の馬が抜きつ抜かれつせめぎ合いをし、後ろは大分離れている。もうこの2頭で決まりといってもいいかもしれない。
「さあ残り100メートル! 8番ゴーイングドゥドゥが少し抜けているか? いや10番ハイハイアジサイが伸びる! 前の2頭できまりそうです。後ろは5馬身ほど離れて4番サムサモアツサモか! ここで8番ゴーイングドゥドゥ力つきたか! ハイハイアジサイが抜けだしました!! そのまま1着でゴールイン!! 2着は8番ゴーイングドゥドゥ、3着は少し離れて4番サムサモアツサモ! 4着、5着は混戦です!!」
師匠は隣に気づいていない様子でガッツポーズをとる。
「よっしゃああああああああ!!! 俺の、俺たちの本命が1着だぞごるぁぁぁぁぁ!! って2着8かよーークソが! 単勝だったかあクソ!」
どうやら気づいてないので師匠に話しかける。
「師匠、隣の女の子穴の龍ですよたぶん」
「え! まじ穴の龍!?」
ちょっと大きめの声で言ったせいか少女がこちらを向いた。
「せやでうちらが穴の龍やで、昨日の配信でうちらも有名になったさかいなあ。なんやおっちゃんうちらのサインでも欲しいんか?」
「は? お前らのサインなんぞ死んでもいらんわ! 俺たちは異世界馬券師だぞ!」
そういうと少女と隣にいた男は丸い目をしてこちら見て少女が声を掛けてくる。
「へ?! 異世界馬券師って昨日配信で2位やったとこ?」
師匠が首を横に振る。
「ちがう」
その声に首をかしげる二人。
らちがあかないので師匠に話しかける。
「もう! 師匠負けたのは悔しいかもしれませんけど話が進まないので本当のこといいましょうよ……」
「こんな小便臭い小学生に負けていいのかよ? いいわけねぇよなあ!! 小学生は馬券買ったらだめだからノーカンだノーカン! 運営にチクってやる!」
俺たちのやりとりを聞いてた少女が突然大声を出す。
「は!! だれが小学生や!? どこにめぇついてんのじゃ!! うちは25や!! この大人の色香が漂う女がわからんのか!! このふしあなが!!」
そういうと隣の男が話しかける。
「あかねちゃんそれはむりやて、身長140やしそのぺったんボデーで馬券買うときいつも警備員に止められてるやろ」
「梅田のウインズと園田は止められへんわ!」
「そりゃいつもいってるとこやろ……」
どうやらアカネは小学生ではないらしい……ランドセル背負えば小学校に通えそうではあるが……
すると師匠は勝ち誇ったような顔でアカネに話しかける。
「さっきの1レース本命10番だったんだよなあ異世界馬券師は」
「は? あんたらの買い目SNSでみてたけど馬券とれてへんやん」
師匠は大きくため息つく
「はあ……分かってねぇなあ予想家ってのは本命を1着にもってきてなんぼなんだよなあ」
「うちらは8番の単複推奨で複勝とれてんで、あんたらの買い目に乗ったら馬券取れてへんやんけ」
「これはどっちの予想が上か対決なんだよあ。よって1レースは俺たちの勝ちだ」
「は? 馬券取れてへんのに勝ったってなんよ? 馬券取れてこそ勝ちやろ? 複勝3.9倍ついてるしうちらの勝ちやな。そこのあんちゃんもそう思うやろ?」
急にアカネが俺に振ってきた。
……どうしよう……ってあれか師匠がいつも言ってるやつでいいか。
「……異世界馬券師が実質勝ちで……穴の龍さんが本質勝ちってことでいいじゃないですかね……」
そういうと変な顔をするアカネ。
「実質勝ちってなんやそれ」
師匠はうんうんと頷いている。
「そうそう。本命が1着だった俺たちが実質勝ち。馬券とか問題じゃない」
「なんでやねん! 馬券師名乗ってんのに馬券とれへんとかありえへん……」
二人はにらみ合って全く埒が明かないので話しかける。
「それじゃ次のレースで予想と馬券が取れた方が勝ちというのは、1レース目は引き分けということで……」
師匠とアカネが両方同じタイミングで答える。
「俺の勝ちだ!」「うちの勝ちや!」
「まあまあ、次のレースで決めましょうよ……」
するとアカネがこういった。
「まだバイアス分からへんから5レースからなら勝負すんで」
「師匠、じゃあ5レース目で勝負でいいですか?」
「ああ俺たちはいいぜ。どうせ何レースやっても勝つのは俺たちだからな」
ということで急遽大井5レースで馬券対決ということになってしまった……
というか師匠は5レースまで資金持つのか?
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