第50話 穴の龍
ここはさすがに師匠には釘をさしとかないと……
「師匠ひどいじゃないですか? 俺の名前連呼して……」
「……舞いあがっちゃってた……」
「でしょうね。もう俺は圭一郎でいくしかないじゃないですか」
「み、苗字は言ってないから……」
「そんな問題じゃないんです。俺が言いたいのは通話するってことを俺に言わなかったことです」
「だって他の人には言っちゃダメっていわれてたし……それにサプライズかなあって」
「はあ……それって部外者に言ったらダメってことですよね? 俺達はチームなんですよ? そんな重要なことは共有するべきじゃないんですか?」
「……」
ふてくされた少年の様に何も言わない師匠。
「まあいいですよ。今度何かあって俺に言ってなかったらもう解散ですよ! 解散! 音楽性の違いによって解散です!」
「……分かったよ……あと言ってないことが1個あるんだけど……」
「なんですか? 言って下さい」
「決勝ラウンドはもしかしたらTVでやるかもって……」
「え……まじですか?」
「この配信で人気があったら決勝ラウンドはTV中継でやるかもって話があるって言ってた」
そういってスマホを見せる師匠。
そこには運営から決勝ラウンドはTV中継になった場合中山競馬場のスタジオに出演してもらいたいとの一文が……
「もしかしてこれ師匠一人で出るつもりだったんですか?」
「だってよ……TVにでてたらお前パドック見れないだろ? だから圭一郎がパドックみて俺にステータスをメールして俺がTVでバッチリ本命を当てて最強の予想家として……」
そう言って親指を立てる師匠。
……問い詰めてよかった……
「TVは俺と師匠2人で出ますよ!」
「パドックはどうするんだよ……」
「それはTVの人と掛け合ってみましょう」
◇◆◇
配信では師匠の所為でなんか微妙な空気の中1位の発表をしている。
ヨーコさんが苦笑しながら話しかける。
「なかなか個性的な方でしたね」
ケンタも苦笑いしながらそれに答える。
「そうですね。どこか変わったことができる人じゃないと予選を突破するのは難しいのかもしれませんね」
一呼吸置いてケンタが再び口を開く。
「さあ予選ラウンド第1位の発表です。ヨーコさんお願いします」
「みなさんご存じだとは思いますが第1位は回収率なんと2692%!! 穴の龍さんです!!」
「凄いですねエリザベス女王杯をアオイハル単勝1点で的中。まさに驚愕です。それでは穴の龍さんと通話していきましょう」
ピコピコと呼び出し音が鳴った瞬間
「どうもー胡散臭い予想家でーす」
いかにもいかつそうな男の声が聞こえてくる。
「……ケンタです穴の龍さん第1位おめでとうございます!」
ケンタがそう答えた瞬間。
バシーンという音が聞こえてくると同時に関西弁の女の人の声が聞こえてくる
「あんた何言ってんのん? そんなこと言うたらさっきのおっさんのせいで、ひえっひえっの配信の空気、さらに悪くしてどないすんの!」
「そないいうてもこれでうけるかとおもうて」
「はあ、そんなんやからあんたはあかんのよ。もっと空気読みや。通話変わりや」
「はいはい……」
ひと悶着が終わったあとケンタが話しかける。
「だ、大丈夫でしょうか穴の龍さん」
さっきの声とは明らかに違う声色の女の人の声で答える。
「すいません。大丈夫です」
「では改めて第1位おめでとうございます!」
「ありがとうございますぅ」
「しかし凄い回収率ですね2692%! しかもエリザベス女王杯で帯獲得、流石ですね!」
ちょっと関西弁のニュアンスで答える穴の龍。
「たまたまですってたまたま」
「3レースのうち2レース的中されてますし的中レースすべて高配当というのはもはや実力だとおもいますが、その予想スタイルなど教えてください」
「私、アカネっていいますけど、さっき出た空気の読めん男がザキって男なんですが、ザキが馬を見て、私がデータとかトラックバイアスを担当してます。それでオッズ的に妙味がありそうなところを選んでるって感じですかねあとは企業秘密かなー」
ちょっと砕けた感じになってきた穴の龍のアカネ。
「穴の龍さんも二人組なんですね。ザキさんがパドックを担当、アカネさんがデータ派ということなんですね」
「そうやね。ザキは昔牧場で馬乗りしてたさかい馬を見ることは得意やねんなー。私は親が競馬好きやったから物心ついたころからずっと予想しててん凄いやろ?」
「なるほどー分業されているとそれでは決勝ラウンドの意気込みを教えてください」
「有馬記念の本命きまったで」
「もう決まってるのですか?」
「はあ。ちゃやろケンタ君。そこはまだ早いやろ!って突っ込まな」
「す、すいません。では改めてまだ早いやろ!」
「せや、ちょっと宣伝するで、明日の大井競馬無料予想だすさかい、みんな儲けてや! そいじゃ決勝ラウンドもぶっちぎりで勝つで!」
そうしてプツっと通話が切れた。
配信のMC二人が圧倒されたという感じで映し出されケンタが口を開く。
「凄いパワフルな方というか嵐がきたというか」
「私も圧倒されちゃいました」
「個性的な方たちが揃ったという感じですね! 決勝ラウンドが今から楽しみになってきましたねヨーコさん」
「そうですね。早く決勝ラウンドが見たくなってきました」
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