第49話 異世界馬券師の師匠です
「つ、通話って誰がするんですか!? もしかして俺ですか!?」
「そんなわけないだろ。俺がするに決まってるだろ?」
師匠はそういってスマホをもっていまかいまかと連絡を待ってるように見える。
「よかった……なんの心構えしてませんでしたよ……」
ん?ちょまてよ?……師匠が通話に出る?! そっちの方がまずい気が!!
「し、師匠、通話で変なこと言ったりしないですよね?」
「俺も大人だぜ? そんなこと言うわけないだろ? ちゃんと言うこともメモってるし、ビシッと異世界馬券師を信じろっていってやるから安心しとけ」
「いやそういう意味じゃ」
「え? インパクトが足りない? そうだよないつものフレーズじゃつまんないよなあ…… あ! くるぞ配信!」
「インパクトではなく普通に……」
「しー! 聞こえないって」
俺の言ってる途中で言葉を遮った師匠はそのまま俺の話は聞かずに配信を見始めた。
配信画面は第2位の発表が始まろうとしている。
ケンタがにこやかに話し始める。
「それでは第2位の発表です!」
どこかソワソワしている師匠が呟く。
「ほら呼ばれるぞ。異世界馬券師って」
そしてヨーコさんが声が聞こえてくる。
「第2位はなんと回収率283%で異世界馬券師さんです!」
「異世界馬券師さんはなんとエリザベス女王杯をアオイハル本命にされ複勝を見事に的中され回収率283%と素晴らしい回収率をたたき出されました。異世界馬券師さんも通話できるとのことなのでつないでみましょう」
……きた……師匠の様子はというと咳払いをしたりはしているが思ったより落ちついて見える。これなら大丈夫か?!
師匠のスマホがピコピコと鳴った!
しかし師匠は通話に出ない。
「え!? 通話に出ないんですか師匠?」
首を横に振る師匠。
「ワンコールで出たりしてみろ? え? この人たちめっちゃ喜んでるな。たかが予選通過ごときで? て思われるだろ? 予選なんか余裕で通過しました感を出していくんだよ。決勝の勝負はもう始まってるんだ! ゴッツ競馬の連中が3コールぐらいで出てたから俺たちは10コールは待たないと」
ピコピコと流れる音に配信は微妙な雰囲気が流れてくる。
ケンタが神妙な顔してコメントを出す。
「異世界馬券師さん? 通話可能ということだったのですが……」
「師匠! 出てくださいよ」
「……きゅう……じゅう……」
そういうと師匠は持っていたスマホの通話ボタンを押す。
「こんにちは! 初めましてケンタです! 異世界馬券師さんですか?」
ちょっと早口気味にしゃべる師匠。
「異世界馬券師の師匠です! 好きな食べ物は肉とビールです!」
余裕かましてたわりに師匠テンパってないか?
「いえ、異世界馬券師さんの師匠ではなく異世界馬券師さんをお願いしたいんですが」
あ……そういったらそうなるよ師匠……
「だから俺が異世界馬券師の師匠です」
通話してる間に口を挟むのは気が引けるけど
「師匠、そんな言い方したら勘違いしますって……」
その声が聞こえたのかケンタが話しかけてくる。
「あーーすいません。異世界馬券師さんのメンバーの師匠さんてってことですよね」
「そうそう! 異世界馬券師は師匠の俺と圭一郎の」
あ! やば俺の名前が
「師匠! 名前は言わないで……」
「……二人組なんで……ってもう言っちゃった」
もう全部配信に乗っちゃってるよ……
ケンタも何かを察したのか
「異世界馬券師さんは二人組で通話されてる方が師匠さんということですね」
あえて名前を言わずに進行してくれたケンタに感謝……
「エリザベス女王杯の予想は見事でした。今日のレースは新馬戦も的中されてましたし、1レース目も実質的中みたいなものでした。見事な的中率のその予想スタイルなど教えていただければありがたいですが」
師匠は待ってましたという感じで自信満々に答える。
「企業秘密です」
配信に微妙な空気がながれる
「あ……えっと前もっていただいた資料によりますとパドック診断を主体にされていると……」
「そうなんですよ! 圭一郎がパドックで馬を……」
もう反射的に声がでた。
「師匠!」
「あ! ごめんまたいっちゃった」
ケンタは普通に流して
「メンバーのもう一人の方がパドック診断をされているということなんですね」
「そうです。圭一郎が馬を見るんです。その数値を俺が判断してバシッと予想をするってスタイルです」
……もういいや俺の名前もう隠さなくても……しかも企業秘密っていいつつ全部ばらしてるし……
「数値化ということですが、これが独自のアルゴリズムを用いて数値化ということなんでしょうか?」
「はい独自のアルゴリズムです! あ!これは言わないと! えっと有馬記念では独自のアルゴリズムをバージョン2にします!」
「なるほど。それでは最後に決勝ラウンド有馬記念にむけての意気込みをお願いします」
「え、もう最後ですか? 他の胡散臭い馬券師を信じて損をしてるそこのあなた! 異世界馬券師を信じろ!! 異世界馬券師を信じろ!!」
「あ、ありがとうございました……」
そういって通話は切れた。
「なあ……圭一郎、俺たち傷跡残せたよな。これインパクト抜群だったよな……」
「師匠、それを言うなら爪痕ですよ……」
俺にとっては深い傷跡をのこしてしまったけど……
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