第34話 実質当たりは本質ハズレ
「これって全部ハズレってことですよね……」
師匠は力なく頷き呟き始めた。
「ああ……持ってる馬券は馬連だからハズレ……」
師匠はそう言って馬券を俺にみせる。
馬連3-15 15000円
5-15 15000円
3-5 10000円
計40000円
と確かに書かれている。
「俺はちゃんと15番がこない可能性も考慮して3-5の馬連も買い目にいれた。しかし結果は1着3番、2着7番。俺達の馬券はハズレ、つまり1R目で5万つかえる内の4万が消えた……」
すると師匠は突然ムキーーーッ!と言って馬券をぐちゃぐちゃにしておもむろにスマホを取り出して配信を見始める。
配信では司会のケンタが京都1レースがどうのこうのと言っている声が聞こえてくる。
「おっと京都1レースはいきなり波乱の展開となりましたねぇヨーコさん」
「まさかの展開にびっくりしました。リスナーの皆さんもびっくりされたんじゃないでしょうか? コメントも降着という展開にはびっくりというコメントが多いですね」」
「ですね。ここで1レースの予想されていた予想家さんは3組、それぞれの結果を見てみましょう」
するととなりのヨーコさんが手書きのフリップを出す。そこには各予想家の名前と買い目が書いてある。
がんばる競馬 三連複一頭軸5ながし相手1,3,6, 7,11,14 各1000円 計15000円
ムーミーの競馬塾 3連単に頭軸マルチ3-5-1,2,6,8,10,12,14 各200円 馬単3,5表裏
異世界馬券師 馬連3-15、15000円 5-15 15000円 3-5 10000円
それを見てケンタが口を開く。
「的中はがんばる競馬さんのみということですね。 おっと三連複23倍ついておりますしこれは一歩リードということになりますね」
師匠が首を横に振る
「ふん! 15点買って23倍とか負けみたいなもんだろ! な! 圭一郎」
「はずれるよりましでは……」
ボソッと呟く。
「え? なんて?」
……あ……心の声が出ちゃった……まあいいや聞こえてないみたいだし。
語気強めで「そうですね!」と答えておく。
配信ではヨーコさんが頷きながらケンタに話しかけている。
「そうですね。3レースしかない馬券対決。一つでもレースが当たらないときついくなりますよね」
「ええ、そういう意味では外れた二組の予想家さんは今後の展開がきつくなりそうです。ただ個人的には異世界馬券師さんはほんとに惜しかったと思います。降着がなければ人気薄の15番1着でしたからね。予想自体は間違っていなかったということですからね」
俺たちへのコメントも比較的好意的なコメントが流れているが……
<あの6番人気本命推奨で実質1位はすげぇぇな。まあ馬券は外れてるけど>
<予想は当たってるし強気の買い目も気に入った。異世界馬券師のSNSフォローしとくわ>
<俺は菊花賞帯ったときから異世界馬券師を信じてるぜ>
<↑信じて馬券を外したやつ>
<実質当たってるからセーフ>
<実質あたり? 実質あたりは本質ハズレだからアウトだろwww>
<は? 6番人気の15番本命にして1着入線は実質当たり>
<でも馬券は外れてるんですよね? それはハズレです。実質当たりなんてありません>
ふと師匠の方を見るとスマホに顔を真っ赤にさせながら打ち込んでいる。
怒気を含んだ声で俺に話しかけてくる師匠。
「くそ! ふざけんな! 実質当たりでいいだろうが!」
「そいつ煽りたいだけだから相手にしない方がいいですよ。師匠……それにそんな奴は馬券で見返したらいいんですよ。新馬戦とエリザベス女王杯が残ってますし」
「そ、そうだな。こんな輩は馬券で見返すに限るな。ぐーのねがでないほどざまぁしてやる!! このアンチコメクソ野郎のアカウント名は……と」
煽ってきたやつのアカウン名を師匠はメモにコピペしているよう。そのアカウント名は鼻くそコレクションという明らかに捨てアカっぽい名前だったが……
「まあ、終わったことを気にしても仕方ない。最終的に勝てばいい。それに新馬戦は気になる1頭がいるんだよなあ。この馬の取り捨てが上手くいけばいっきにまくれるぞ!」
「そうですね。次で取り戻しましょう!」
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