第32話 単勝5万
ガッツポーズを取る師匠に話しかける。
「ですよね。勝てますよね」
「そうだ。あとは買い目だ。買い目さえミスらなきゃ俺たちの勝ちは決まりだ。未勝利のダート1800だし実力通りに決まるはず……」
すると師匠はスマホを開いてオッズを確認している。そして1分ほどブツブツと呟く。
俺にできることはもうやったあとは師匠が買い目を決めるまで待つしかない、買い目に関して師匠に一任するしかないんだ。
すると意を決したような表情で師匠が口を開く。
「決めた単勝15番5万」
「へ……単勝5万?」
「そうだ。単勝1点全額勝負!」
「いやいやいやいやちょっと待ってください師匠! いきなり全部突っ込んでどうするんですか。外れたらもう失格なんですよ!!」
そういうと師匠は少し不機嫌になりながら答える。
「単勝15倍だろそれに5万入れたら75万になって返ってくる。そうなると回収率633%で勝ち確定だろ?」
……当たれば勝ちは確定だけど……負けたら終わりな買い方で勝負するようなレースなんだろうか? 違う気がする。それにまだ今日の朝一番のレースだ見てない人も多い。
「……それはあまりにもギャンブル過ぎませんか? 最後のレースならまだしもまだレースも残ってる状態なんですよ……それに」
「それに?」
「まだこの番組視聴者数が増えますよ! 視聴者が多いときに当てたらフォロワーも増えますよ! もしここで負けて次のレースとメインレースができなくなったら目も当てられてないですよ……」
俺がそう言うと師匠はうんうんと頷づいている。その姿に若干の違和感を覚える。
「…………俺が本気で単勝1点5万全部ぶち込むとでも思った?」
「思います!」
「思いますじゃねぇよ! そこまで俺も馬鹿じゃない。ここは馬連でいく。3、5、15の馬連ボックス! 本線は3-15,5-15に1万5千円づついれて、3-5は保険。倍率4.2倍で1万いれるとガミはない」
「これなら最悪はずれても1万は残ると……」
「3-15馬連で15倍、5-15は16倍だからなちょうどいい肩慣らしって感じだ」
……師匠は俺が止めなかったら絶対15番の単勝5万ぶち込んでた……間違いない……
師匠はスマホポチポチと触って最後に馬券の写真を撮っている。
そして締め切り5分前になる。
そのタイミングで馬券対決の配信画面をみるとケンタが口を開く。
「さあ京都1レースの締め切り5分前となりました。ここを予想した予想家は3組。全員の予想は出そろっております」
隣のヨーコがケンタが話を終わると口を開く。
「がんばる競馬さんの本命は5番サムライグッバイ。本命にあげた理由は前走は最終コーナーで前が詰まるという不利がありながらも鋭く追い込んできて3着。不利がなければ頭まであったとみている。よってここは本命。5番サムライグッバイを軸にの3連複1頭流しで相手は1,3,6,7,11,14。1点千円で15点購入しました」
ヨーコさんがそういうと画面にネットで馬券を購入したスクショが表示されている。
<1番人気軸かあ>
<ワイの本命と被ったこれは嬉しいのかそれとも……>
<堅いとこだな>
といったコメントが書かれている。
「続いてはムーミーの競馬塾さんの本命は3番コウゲンプリティ。本命の理由はこの馬はデビュー戦の頃から注目している素質馬で、今回調教の動きも抜群。パドックを見た感じできも良く間違いなく軸で勝負できると感じています。相手筆頭は前回不利がありながらも3着にきた5番買い目は3連単3,5の二頭軸マルチ相手は1,2,6,8,10,12,14の7頭で42点各200円で8400円。保険に馬単3,5の裏表5000円」
ケンタがうんうんと頷きながら口を開く
「なるほどこのお二方の本命は1番人気、2番人気と割れました。3組目の異世界馬券師さんの本命はどこですかヨーコさん」
「はい。異世界馬券師さんの本命は……15番ドーナッツパワー。独自のアルゴリズム解析を行った結果、素質が一番高い馬は1番人気、2番人気の3番、5番ではなく15番のドーナッツパワーという答えが出た。しかしあくまでも素質が高いというだけ、枠や騎手に疑問符が付く。そのため買い目は流しではなく3,5,15の馬連ボックスで勝負する。異世界馬券師を信じろ!とコメントに書かれてますね」
そして馬券の写真が表示される。
ケンタが目を丸くさせる。
「1レース目から4万円勝負ですか。これは勝負にでたとみていいんでしょうか? よっぽど自信があるということなんでしょうか」
配信コメントには
<いきなり4万とか草>
<独自アルゴリズム解析ってなんや?>
<15はねぇだろありえんわ>
<異世界馬券師を信じろは草越えて芝。信じるに足る根拠がないんだがw>
うーん……
師匠は余裕の笑みを浮かべ話しかけてくる。
「これレースが終わったら俺たちフォローしてるぜみてろ」
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