第31話 京都1R

 9:30から馬券対決の配信が始まるということで、京都競馬場のパドックで、師匠と一緒にスマホで配信サイトを開く。すると聞いたことのある声のナレーションが流れてくる。


「さあ! 始まりましたSNS有名予想家による馬券対決!! 企画の趣旨は30組のSNSで活躍する競馬予想家のナンバーワンを決める対決だ!! 今回参加する予想家達はこれだ」


 画面が切り替わり某宇宙大戦風の字幕で、次々と名前のようなものとSNSのアイコンが流れている。


 あれそういえば俺たちのアイコンって作ってなかった気がするけど。SNSのアイコンは卵のはず。すると字幕の真ん中あたりで異世界馬券師という名前が出てきて、アイコンはJRAと書かれた帯封のついた現金の束。


 めちゃくちゃ下品……


「師匠……」


「いいアイコンだろ? 菊花賞の時のやつ」


「アイコン載せるなら俺にも一言聞いてくださいよ。てっきり卵のやつかと思ってました」


「ああすまん。すまん。向こうが急に言ってきてたんだよ。いいだろ馬券買うならだれもが憧れる帯よ帯」


「流石にこれは……」


 と言った瞬間、俺たちと同じように現金をアイコンにしてる予想家が流れてくる。


 いるんだ……他にも……


 結局最後まで字幕が流れているのを見てると帯をアイコンにしてる人が他に3つはあった……


 それを見た師匠が首をかしげる。

「くそーほかにもいるかあ……」


 師匠みたいな人がこの界隈一杯いるんだな……


「しかしなんかTV番組みたいな配信ですねこれ」


「そうだな。すげぇな金掛かってるわ」


 もっと手作り感満載の配信かと思っていたのでTV番組顔負けの配信に少し面を食らった。


 そしてニュース番組のようなセットに映像が切り替わる。画面の中央に30代ぐらいの短髪の男の人と20代前半っぽいロングヘア―女の人がいて男の人が口を開く。


「今回馬券対決は回収率13%男ことケンタと」


 隣の女の人が口を開く。


「ウマジョちゃんねるのヨーコの司会でお送り致します」


 コメントをみると一応この二人有名な競馬系Yotuberらしい。


 そしてケンタと名乗る人が話を進めていく。


「さて東京1Rですがここをフリー枠で予想される方は……」


 1R目からフリー枠使う人はいないでしょうよ……


「ぐんぐん競馬さんですね」


 いるんだ……


「京都1Rですがここを予想されるのは……異世界馬券師さんとがんばる競馬さん、ムーミーの競馬塾さんですね」


 え……まじ?


 師匠はそれを見てパンと頭を叩いて悔しがる。


「やられたわ……1R目からフリー枠使うなんて俺たちぐらいかと思ってたわ」


「あれほどフリー枠が大事っていってて1R目にフリー枠つかうんですか!」


「ああ。そうだよ。ほら他の予想家もいないからインパクト抜群って思ったんだけどなあ他に2組もいたわ……」


「インパクトって……」


「まあまあただインパクトでこの1R目を選んだわけじゃない。この1R目を選んだのには根拠がある」


 そういって師匠は新聞を広げて俺に見せる。


「3番と5番この2頭の評価が抜けてるんだよ。もしこの2頭が評価通りの力じゃなければ……」


「なるほど……それじゃみてみます……プロパティ」

 ちょうど馬がパドックに現れたタイミングだっためそのままステータスを見る。


 3番コウゲンプリティ

 HP221

 MP0 


 たいりょく179

 ちから264

 すばやさ272

 まりょく0

 みりょく54

 ちりょく22


 5番サムライグッバイ


 HP232

 MP0


 たいりょく183

 ちから241

 すばやさ289

 まりょく0

 みりょく44

 ちりょく25


 15頭立てのうち12頭はこの2頭を超えるステータスの馬はいなかった……そして最後の15番


 15番

 ドーナッツパワー

 HP195

 MP0


 たいりょく201

 ちから301

 すばやさ322

 まりょく0

 みりょく41

 ちりょく10


 あ……これだ……


 オッズを確認する……単勝15.1倍 5番人気……


 それを見た瞬間に口元がにやけてくるとともにちょっと体が震える。


「し、ししょう……い、いました」


「いましたって何が?」


「あ、あの二頭より強い馬……」


「まじ?」


 うんうんと高速で頷いて師匠にステータスを入力したPCの画面を見せる。


 それを見た師匠は渾身のガッツポーズをとり身体を震わせ口を開く。


「さっすが俺!! もう作戦完璧じゃねぇか!! これで有馬確定だろ!! 1R目で確定しちゃったわ」

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