第20話 全財産
「これでよし!」
師匠はそう言ってスマホの操作止めた。
その投稿内容はというと……
異世界馬券師初のG1予想……私が開発した独自のアルゴリズム解析を駆使し能力値の解析を行い、その馬のスタミナ値はメンバー中最高値をたたき出している。
その馬は名は3番チャンピオンベルト!!
買い目はチャピオンベルトの単勝1点勝負!
現時点でオッズは4番人気8.0倍単勝1点で十分勝負になるオッズ!!
自信度は勿論★5!!
異世界馬券師を信じろ!!
#菊花賞 #異世界馬券師
あれ?本命がチャンピオンベルトになってる……
「師匠……いいんですか? さっきまでストラトヴァリチェが本命だーーって言ってたじゃないですか」
そういうと師匠は頭をシャカシャカと触りながら少し目を伏せながら答える。
「……お前の勘を信じてみるよ。結局は長距離戦だしな。スタミナだスタミナがない馬は勝てないはず。ということで俺はここで有り金すべてを単勝1点にぶち込もうと思う」
「……こなくても俺の所為にしないでくださいよ」
「当然、お前も単勝1点にぶち込むよな全財産」
当たり前という感じで師匠はこっち向いてそう言った。
「な、なに言ってんですか? ここ京都ですよ。お金なくなったらどうやって帰るんですか」
「あのな……ギャンブラーはオケラになったら競馬場から歩いて家に帰るもんなんだよ……」
「いやいや……歩いて帰れる距離じゃ……」
「さあ! 馬券を買いに行くぞ」
……さっきは考えなおしてたのに……このG1の雰囲気にあてられたのか……確かに周囲の人のワクワクしているという感じが伝わってきている。
発券機の前に立った師匠は現金の束を発券機にいれマークシートを入れる。
馬券が1枚でてくる。
「1回50万までしか買えないからな」
そういうともう1回現金を束を突っ込み馬券が1枚でてくる。
その馬券には単勝3番チャンピオンベルト500,000。もう1枚の馬券には単勝3番チャンピオンベルト340,000と書かれている。
「もうすっからかんだわ」
そういって財布を見せる師匠。
確かに小銭しか入ってない……
次は俺の番……
師匠が俺を見ている……
やっぱりここは全財産入れないと不味いのか……さすがに京都から東京まで歩いて帰りたくはない……どうしよう……
俺の今の所持金は今日プラスになった分を合わせて25万ほど……
ええいこうなりゃやけだ! すっからかんになってもATMで下ろせばいいだけだ!
マークシートに単勝、3番チャンピオンベルト、25万と塗りつぶし発券機に金を入れ馬券が出てくる。
そして師匠にその馬券を見せる。
師匠はそれを見てぐっと親指を立てる。
「ギャンブラーはそうじゃなきゃな!」
25万と書かれた馬券を改めてみてみる……
ああああああああああああああああ
俺ってバカだよ!! バカ!!25万て普通に1か月働いた対価に貰うお金だよ!! というか俺の手取り月収より多いんだよ!! バカ!! 俺のバカ!!
「っち上手く写真が撮れねぇ……」
師匠の呟く声が聞こえてきたからそっちを向くとスマホで馬券の写真を撮ろうとしている師匠。
その姿をよく見ると手がぶるぶると震えて馬券の写真が取れない師匠の姿がそこにあった。
「師匠……」
「……手が震えて馬券の写真が撮れねぇんだわ……」
「80万も突っ込むから……」
「俺の人生で一番の金額突っ込んでるわ。これが来たら6帯……税金はらわきゃなあ」
師匠の声がちょっとふるえている。
馬券の写真をなんとかとりSNSにアップする師匠。
これが異世界馬券師の馬券勝負だ!
その文言ともに俺の25万の馬券と80万の馬券の写真と#菊花賞のハッシュタグが記載されている。
するといいねが1こついた。
「よしレース見に行くぞ」
震える声の師匠とさっきから心臓がバクバクしっぱなしの俺はメインスタンドに向かった。
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