第14話 ヒットポイント
「15番の単勝を買えばいいんですね?」
俺がそういうと師匠は眉間に皺を寄せる。
「15番は前走スタート出遅れてるんだよな……出遅れからの2着……ここで一番能力が高いというのは皆が認めてるからオッズ1.5倍……」
「でも1.5倍で1万円賭けたら1万5千円になるんですよね? 損しないならそこ1点でいいんじゃ」
「いや、俺が言ってるのはこの馬は1.5倍で買える馬なのか? その信頼度があるのかということだ。前走の出遅れが気になる。そして今回は8番の能力値とそれほどの差がない。出遅れるとその差が埋まる可能性すらあるんじゃないかと思ってる。そして8番は今6番人気で2番手の能力があるにも関わらず売れてない」
「……なるほど……とどのつまり15番の馬は8番の馬に負ける可能性があるということですかね?」
師匠はうんと頷いて話を続ける。
「そう……だから敢えて8-15の馬連より8-15の馬単のほうが着順妙味があって美味しいんじゃないかと思ってる。俺の見立てでは5分はある」
「5分あるなら8-15の馬単を買った方が美味しいと」
「そういうことだな。8の単勝と8-15馬単。保険に8-15の馬連この3点に1万円づつ入れる。これが取れたら8の単勝が25倍、馬単52倍、馬連が14倍つまり3万が91万になる」
「おおおおすげぇぇぇ……」
「15が勝っても8が2着に入れば保険の分が当たって11万プラスだからな」
「師匠……今度こそはマークシートちゃんと書いてくださいね……」
その言葉を聞いた瞬間師匠は耳まで真っ赤にさせる。
「わ、わかってらああ……あの後5時間かけて歩いて帰った話をしてやろうか?」
「い、いやいいです……」
マークシートにいざ記入する段になってもう一度能力を振り返ってみる。
自分のスマホにも能力を記入している。
8番
HP192
MP0
たいりょく212
ちから321
すばやさ356
まりょく0
みりょく55
ちりょく24
15番
HP324
MP0
たいりょく183
ちから392
すばやさ389
まりょく0
みりょく44
ちりょく32
……師匠は8からって言ってたけど、自分は15番の馬が勝つような気がする……能力も高かったけどHPもメンバーの中で一番高い……HPが何の意味を現わしてるのかわかんないけど。高い方がいいに決まってる。そして8番はメンバーの中で一番HPが低かった。
ここは俺は15番の単勝1万円で行ったほうがいいような気がする……8番はHPが低かったし……なにか嫌な予感がする。
ということで師匠のオススメの馬単8-15ではなく、単勝15番のみを購入した。
「買った馬券をチェックチェックと……」
単勝15番サスライノギターと書かれている。
それを横から覗いた師匠が口を開く。
「え? 8-15の馬単じゃねーの? 1万が52万だぞ?」
「なんか嫌な予感がして……8番はHPが低かったんですよね……」
「HPか……さすがに関係ないと思うけどな……」
師匠は俺が言うことを聞かなかったのか若干不機嫌な様子。
「そうですかね……でも自分の直感を信じてみます」
「ふーん。まあいいや8が勝つか15が勝つか5分ってところだしな」
ということで券売機から離れる。
「じゃあ馬場の方に行くか」
師匠の後ろについていくと、目の前には青々とした芝と内側には砂のめちゃくちゃでかいトラックが広がっていた。
「うわああああやば……ここに馬が走るんですか? 浦和競馬場の3倍ぐらいありますよ……浦和競馬場もデカいと思ったけど……」
「まあな。日本一でかい競馬場だからな。芝コースの1週は約2000メートル。ゴール前の直線は500メートルある」
数字で言われてもピンとこないがまあでかい滅茶苦茶でかい。でかいのに芝はちゃんと管理されてて芝から雑草の1つも生えてない。
「ここで寝っ転がったら気持ちよさそう……」
「たしかに、春にここで昼寝したら気持ちいいだろうな」
馬がぐるぐると輪になって歩いているのが見える。
すると場内アナウンスが流れる。
「8番プリティパワー号は馬場入場後故障を発生したため除外となります。購入馬券の返還は確定後おこないます」
……あ……
師匠の方をみると師匠は頭を抱えていた。
「師匠……馬券外れたってことですか?」
「いや……除外になったから買った馬券はそのまま戻ってくる……91万になる予定がな」
「それは残念ですね……」
「いや、そのまま気づかずに走らせてたらレース中に故障してそのまま負けた可能性が高いからこれでよかった……HPが低いのが気になってって言ってたが極端に低い場合は注意した方がいいな」
そしてレースが始まり師匠の言ったように15番は出遅れたが勝つことができ、俺の1万円は1万5千円になって返ってきた。
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