第13話 中央競馬

これから師匠と行くところは東京競馬場というところらしい。府中にあるっていってたけどなんで府中競馬場じゃないんだろ? それだったら浦和競馬場は埼玉競馬場じゃないの? といった小さな疑問が浮かんだが口に出さない。


 聞いたところで師匠がそんなこと知るはずもないだろう。


 東京競馬場に向かう電車の中で師匠が呟く


「しかし、本物みないと分からないって不便だな……これだと他場は買えないってことか……」。


「……すいません」


「圭一郎が謝ることじゃねぇよ。他場を買ういい方法はなんかねぇかな……」


「さっきからたじょう、たじょうってたじょうってなんですか?」


「他場は他場だろ……ま、まさか中央競馬を知らない?」


「ちゅうおうけいば? 競馬に違いがあるんですか? 浦和競馬となにが違うんですか?」


 は? という顔する師匠。


「お、お前、競馬なんも知らないのか? 赤ちゃんか!」


「なんですか。そのツッコミ。うちの親がギャンブルが嫌いで競馬とかなんも知らないんですよ」


 師匠はふーっと息を吐いて話始める。


「競馬には中央競馬と地方競馬ってのがあるんだよ。日本には。それで一昨日の浦和競馬は地方競馬。今から行く東京競馬場は中央競馬だ」


「中央競馬と地方競馬ってのがあるんですね? でも浦和って地方になんですか? いや東京以外は地方か……埼玉は田舎もんってよく言われるもんな……」


「場所で地方競馬っていうんじゃねぇよ大井にある大井競馬も地方競馬だ。中央競馬以外が地方競馬ってこと」


 この後も中央競馬と地方競馬の違いを師匠は早口で話し続けた。


「……これが地方競馬と中央競馬の違いってことだ」


 師匠が言うには地方競馬は地方自治体が管轄してて、中央競馬は農林水産省が管轄してるって違いらしい。まあそんなことはどうでもいいけど。


「土日にTVで中継してて馬が芝の上を走ってるだろ? あれが中央競馬だよ」


「あーそういえば浦和競馬は砂でしたね走るとこ」


「そう。あれはダートっていうんだ。中央競馬はダートと芝両方あるんだよ」


「それでたじょうってなんですか?」


「ああ。他場ってのは中央競馬は2,3か所で競馬やってんだよ。今日は東京、京都、新潟の3場開催」


「……京都、新潟の馬はどうやって馬を見るんですか……」


「テレビで……」


「ですよね……」


「まあ。いい今日は東京競馬場の馬に集中しよう。今日は他場は買わない」


 そういうと師匠は新聞を広げああでもないこうでもないと呟いている。自分もスマホを弄ったり、窓から景色を見たりしながら電車の乗り換えをする。


 だんだんと電車の中の人が多くなってくる。そして府中競馬場正門前駅に着く。電車の中の人たちがどっと降り始まる。

「さあついたぞ。俺たちも降りるぞ」


「この人たちみんな競馬場にいく人たちなんですか?」


「ああそうだ」

 ちいさな子供を連れた家族や若い女の子、浦和競馬場にいた人たちとはちょっと違う感じ。師匠はいかにもって感じだけど、その師匠がちょっと浮いてる感じすらある。


「……中央の競馬場は苦手なんだよな……」

 師匠がボソッと呟く。


 駅のホームには金の馬の像があり、駅からまっすぐにドームになった通路がまっすぐに伸びている。


 その通路を通っていくとテーマパークのような欧州風の内装の建物の中に入っていく。


「……すご……」


「ああ凄いだろ。こんな格好でくんのいやなんだよな……」

 そういいながらずんずんと歩く師匠に周囲をキョロキョロとみながら歩いて置いてけぼりくらいそうになりながらついていくとパドックにたどり着いた。


「さあパドックについたぞ」


 パドックも浦和競馬場よりおおっきくて馬の数も多い。


「まだ未勝利戦か。とりあえずこのレースから買うか」


「分かりました。やりますよ」

 俺はいつものようにプロパティと呟く。


 プログノージェス

 HP250

 MP0


 たいりょく197

 ちから252

 すばやさ234

 まりょく0

 みりょく54

 ちりょく22


 いつものように馬の力が見える。その値を師匠に伝える。


 ゼッケン8番の馬を見る。


 プリティパワー

 HP192

 MP0


 たいりょく212

 ちから321

 すばやさ356

 まりょく0

 みりょく55

 ちりょく24


 あれ? 浦和じゃ300超える馬はいなかった気がする。


 とりあえず今まで見た馬の中で1番能力が高い。


 師匠は新聞をみながら俺の言った数字を記入している。


 10番の馬もすばやさ322、ちから301と300を超えているのがある。そして15番の馬。


 サスライノギター

 HP324

 MP0


 たいりょく183

 ちから392

 すばやさ389

 まりょく0

 みりょく44

 ちりょく32


 うわ……この馬400に近いよ……


 18頭すべての能力を師匠に伝えた。


 師匠はその数字をみながらぶつぶつと呟く。

「やっぱり15番か。前走は不利があったから負けただけか。1番人気で1.7倍か……ここは堅いか。相手は10番と8番ってとこか」


「師匠。馬の力が浦和と全然違うんですけど……400近い馬なんて浦和にはいませんでしたよ」


「そりゃそうだろ。中央で勝てる馬はエリートだからな。中央で勝てない馬が地方に行くんだよ。まああの15番はオープン辺りに行きそうな感じもする」

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