第8話 期待値を狙え
掲示板の1番上に5の文字が点滅している。それを見て手に持った馬券をもう一度確認する。
単勝 5番アラアラシイオトコ 300円
馬券に印字されている。
当たった……人生2度目の馬券が当たった。師匠のおかげだけど当たった。
「確定したな。換金にいくか」
師匠はそういうと券売機の方に向かう。券売機には人が並んでおり、その後ろに並ぶ。
「この馬券を券売機にいれるんですね?」
「そう、馬券を入れるとお金が出てくる」
自分の順番になり券売機に馬券を入れる。シュッとあっという間に取り込まれジャラっという音がする。券売機の下の方にある円形になったところにお金がでてきている。
300円が600円になって返ってきた。
すげぇ本当に倍になった俺の金。
「師匠ありがとうございます!」
すぐ隣にいる師匠にそういって頭を下げる。
「お、おい。こんなところでやめろよ。恥ずかしいだろ……」
周囲の人がこっちを見ている。
「ま、まあいい次だ、次行くぞ」
ということで馬を見て、師匠にステータスを伝える。
師匠は新聞にその値を書き出し割とすぐに口を開く。
「8番の複勝だな」
「複勝?」
「ああ、次のレースみた感じ5頭が同じレベル。トラックバイアス、騎手、オッズを考慮すると8番の複勝でいい。それでも2倍はつくからな」
「複勝ってなんですか?」
「ああ、そこからか、複勝ってのは3着以内に入ると当たりってなる券種だよ。ただ配当が安くなる」
「5番の単勝だといくらになるんですか?」
「8.3倍」
8.3倍……ゴクリ……俺の600円が5000円になる……
「た、単勝にしましょう師匠!!」
師匠は呆れたというような表情をしてこういった。
「さっきもいったようにここは5頭がほぼ同じレベルなんだ。単勝5点買えばトリガミになる」
また師匠がわけわからん専門用語を並べて話してる。
「トリガミ? トリガミってなんですか?」
「当たっても損をすること。単勝5頭を100円ずつ買って一番人気がくると2.5倍で500円入れて半分にしかならない。それなら複勝1点勝負がいい」
「な、なるほど……」
「5頭がほぼ同じ強さであれば複勝であれば60%の確率で当たる。その中で複勝オッズが一番いいのが5番だ。単勝だったら20%の確率。圭一郎の全財産をこの20%に賭けるかそれとも60%に賭けるかどうする?」
「……ギャ、ギャンブラーなら20%に勝負するべきかなって……」
そういうと師匠は驚いた表情をする。
「言うねぇ。ただそんな考え持ってると確実に負けるよ。一時は勝てるかもだけど、期待値がちょっとでも高い方を選ぶのが勝てるギャンブルの定石だ」
……まーた師匠がわけわからんことを言っている……
師匠は俺が戸惑っているのを気が付いていないのかそのまま自分に酔ったように話を続ける。
「圭一郎の能力があれば勝てる馬がある程度絞れるということは、回収率が高い馬が狙えるってこと。回収率が高いってことは期待値が狙える。つまり勝てるギャンブルができるってことなんだ。まあ偉そうに言ってる俺の回収率は80%だけどな! あはははは!!」
何をいってるのか分からない師匠の話は終わってとりあえず一緒に笑っておいた。まあここは師匠の言う通りにしておいた方が無難か……
「じゃあ複勝を買えばいいですね?」
「ああ。圭一郎の全財産600円を8番の複勝に入れろ」
ということでマークシートに記入し8番の複勝に全財産の600円を投入。
そしてレースが始まり場内の実況アナウンスが聞こえてくる。
「4コーナーを周って先頭は4番レッツラゴーゴー! 半馬身差で6番ニートキングオー、そのすぐ後ろに5番マイニチガエブリイ、8番ギュウギュウヅメ、7番イイコナンデス!」
そして馬達がドドドドドという足音とベシベシと騎手が放つ鞭の音を響かせながら目の前を走り抜けていく。
「勝ったのは6番ニートキングオー、2着は4番レッツラゴーゴー!! 5番マイニチガエブリイ、8番ギュウギュウヅメ7番イイコナンデスが3着争い!!」
え……もしかして外れた?
掲示板の横にあるデカいモニターにスロー映像が再生されている。
そのスロー映像を場内アナウンスが実況している。
「3着は内マイニチガエブリがわずかに入線しているように見えます。確定までお手元の勝ち馬投票券はお捨てにならないようにお願いします」
師匠が俺の方をみてこういった
「あっぶね……ギリ3着だったな」
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