第4話 すばやさが高い馬を選べばいいだけ
とにかくだ、とにかく鑑定眼で金を稼ぐ方法を考えないと……
そ、そんなのあるか? 冷静に考えればなんかある。絶対なんかある。
初対面で名前を百発百中で当てる占い師とか?
……名前だけ当ててどうすんの? そのあとの占いなんてできるわけがない。
な、なんかないか? 鑑定眼を使ってお金を稼ぐ方法……
……ない。たぶんない。今考えつく限りはない。
ど、どうしよう……鑑定眼しか使えないのに仕事辞めてしまった。
明日しれっと仕事に行くという手もある……が、あんな辞め方しちゃったし戻れる訳ないというか、戻りたくない。
主婦の軍団がこっちを見てヒソヒソ話ししてる。
そりゃそうだ。変な呪文唱えて落胆したり、立ち上がって突然、ベンチを殴るやつなんて傍目でみたらやばい奴。
とりあえずこの場を離れて家に帰ろ。
10分程歩いてアパートに着く。
歩いてる間も色々と考えてみたけど、なんにも浮かばなかった。
Ahoo知恵袋や6chで相談してみようかと思ったけど、タダのネタって思われるだけだし……とりあえず明日からバイトを探そうという結論になった。
部屋に入り、部屋着に着替え、座椅子に座り、テーブルの上のリモコンを操作して、正面のTVをつけチャンネルを適当に回す。
平日の昼間だし、なーんにも面白そうなものはやってない。
「勇者様がこのざまか……」
テーブルに突っ伏す。
テレビを見ながらプロパティと呟く。何の表示も現れない。
「本物みないとステータス表示されないんだな……」
芸能人のステータス見て馬鹿にしてやろうと思ったのに……
「はあ、つまんね。またエルラインに行きたいんだけど……」
◇◆◇
「ケイ! おい! ケイ!」
「あ……」
目の前には銀色の甲冑をまとった騎士の姿がある。
「ケイ、ぼーっとするな。戦闘中だぞ!」
「アルフレイ……ってことはここはエルラインか?」
騎士のアルフレイはは?というような表情をする。
「当たり前だ。何寝ぼけてんだ? 俺たちは海王竜リヴァイアサンの討伐にきてるんだろ!」
「そ、そうだった。ごめん……」
「俺がおとりになるから、魔法でリヴァイアサンを攻撃してくれ」
「え……でも俺、魔法は……」
「何言ってんだ、お前は勇者だろ?」
そういうとアルフレイは盾を構えて、大きな蛇の様な竜の前に立つ。
「ケイ頼む!」
もうどうにでもなれ! 手を真っすぐに伸ばしサンダーと呟いた。すると空から稲妻が現れリヴァイアサンに直撃をする。
「使えた! 俺、魔法が使えた!! 俺は勇者だあああああ……」
……ゲートインスタートしました! 3番リヴァイアサンサンがハナを切った……
遠くの人の喋り声が聞こえてくる。
……さあ直線にはいったリヴァイアサンサン粘っている……
気が付くと元の部屋におり、テーブルがヨダレで濡れている。
時計をみると16時過ぎそしてTVでは競馬中継をやっている。
え、俺さっきエルラインにいたよな? もしかしてあれは夢……
「ファイヤ」
手を伸ばしてファイヤと呟いてみるが当然のように魔法は使えない。また夢を見たのかよ! クソ!! ふざけんな! 俺をもてあそびやがって!!
もしかして鑑定眼も夢?
窓を開けるとちょうど通行人がいた。
「プロパティ」
そう呟くとステータスが表示される。
……さっきエルラインに行ったのは完全な夢だったのか……
そしてTVからは「推奨馬は5番、1番、10番、8番の4頭でお願いします」という競馬中継が聞こえてくる。
へぇぇこんな平日なのに競馬ってやってんだなあ
「推奨理由はですね。5番のタダノエンペラー胴が詰まって短距離向けの体型ですし、この相手ではスピードは一枚上手かなと……」
TVの中では馬がなんか人に曳かれて歩いてる。
競馬なんて一番、足が速い馬が勝つんだろ? 素早さが高い馬選べばええだけやん……あ……そっか普通の人は鑑定眼なんて使えない……ということは鑑定眼つかってすばやさが高い馬みれば簡単に当たるんじゃね!!
そうだ! 俺の鑑定眼を使って素早さが高い馬を選べば絶対に当たる!!
……ただ俺の鑑定眼はTV越しでは使えない。故に競馬場にいく必要がある。TVではもう最終レースっていってるし場所は浦和らしい。いまからいっても間に合わないだろ。
明日も競馬ってやってんのかな? スマホを取り出して『10月22日競馬場』と入力をする。
すると浦和競馬開催中という文字。10時半に1レースと書いてる。
浦和かあ。まあいけない距離じゃないし、この力を試すチャンスだ。明日浦和競馬場に行ってみよう。
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