第113話 復活


 「本当に緑の大地になっているようね」


 「はい。ドロテーア様」


 「『黒天使』・・・恐ろしい冒険者が現れてしまったのようね」


 「どういたしましょうか?」


 「白銀狐と和平を結ぶほどの冒険者よ。私たちに勝ち目はないかもね」


 「はい」


 「でも、このまま『黒天使』を野放しにしていたら私の計画の邪魔になる可能性は高いわね」


 「ファルコンをぶつけるのはどうでしょうか?アイツはロートを殺したほどの知能犯です。『黒天使』でさえもアイツの頭脳戦の前では無力かもしれません」


 「そうね。でももしかしたら『黒天使』の正体がファルコンだったらと仮定したらどうかしら」


 「ファルコンが『黒天使』?」


 「そうよ。実力的にはイーグルネイル№3だけど、頭脳戦を用いたらファルコンに勝てる者はいないはずよ」


 「たしかにそうかもしれません。アイツなら白銀狐をだまして和平に持ち込む可能性があります。でも、何のためにそんなことをするのでしょうか?」


 「簡単なことよ。ファルコンの求愛を無視した私への恨みよ」


 「叶わぬ恋をこじらせるとはファルコンらしいです」


 「最近は毎日のように手紙が送ってくるし、私がふと窓を見るとファルコンがお城をよじ登って覗き見をしているのよ。危うく私がスパイとして潜入していることがバレてしまうかとヒヤヒヤしたわ」


 「完全にストーカーになっているのですね」


 「そうよ。だからロートを使って白銀狐に襲わせるつもりだったけど、逆にロートを殺し、なおかつ白銀狐と和平を結ぶなんて驚きだわ」


 「こじらせた愛は無敵です」


 「ファルコン・・・そこで聞いてないで出てきたらいいわよ」




 「ボス・・・いや、愛しの姫ドロテーア様、なぜ私の愛を受け止めてくれないのですか」


 「はっきり言ったよね。タイプじゃないのよ!」


 「私も言いました。姫のタイプになれるように努力しますと」


 「そういう性格がタイプじゃないのよ」


 「わかりました。姫の好きな性格に変わりますので私と結婚してください」


 「無理よ!」


 「やはり姫は私の事を嫌いになったのですね。私がこんなにも姫を愛しているのに・・・」


 「ファルコン、あなたの働きには私は満足はしているのよ。でもそれは、上司と部下の間柄であって恋愛感情とは別なのよ。仕事に恋愛をはさむのは良くないわよ」


 「愛があるから仕事も頑張れるのだ!俺は・俺はお前無しでは生きていけないのだ!」


 「ごめんなさい。ホントに無理なのよ」


 「殺してやる。絶対に殺してやる。おれのやさしさ、思い、熱量を理解できないお前なんて絶対に殺してやる」



 ファルコンは完璧にフラれたショックで我を失っている。



 「ドロテーア様、ファルコンの目が完全にやばい感じになってます。ここから逃げた方が良いと思います」


 「いえ、ここで逃げてもファルコンはずっと追いかけて来ると思うわ。ここで決着をつけないといけないのよ」


 

 ファルコンの目は完全に焦点が合っていない。そして、不気味に笑いながらよだれをたらしドロテーアにゆっくり近づいて行く・・・



 「ドロテーア様!」





 「ハツキお姉ちゃん!」


 「どうしたのプリンツちゃん」



 私はシェーネ達と一緒にフンデルトミリオーネン帝国に戻って、『赤朽葉の爪』のアジトを潰したことを報告しキューンハイトの身柄を渡した。そして、カノープスの町に戻ってアイリスさんに素材を渡しお部屋でゆっくりとくつろいでいた。



 「ついに・・・最悪の事態が起きようとしているよ」


 「そうだなプリンツ」



 私の目の前にヴォルフロードが姿を見せた。



 「ロードちゃんまでどうしたのよ」


 「ハツキさん、ついに大厄災である精霊神が不完全な形で復活を遂げました」


 「どういうことなの!」


 「この世界を崩壊させるために精霊神が復活したのです。私達ヴォルフ族はこの大厄災が復活した時のために強くなる努力をしていました。しかし、いま大厄災に立ち向かえるのは私とプリンツだけになっています。不完全とはいえ精霊神は圧倒的な強さを有しているでしょう。勝てる可能性は少ないかもしれませんが私たちは精霊神と戦います」


 「待って私も戦うわ」


 「ありがとうございます。精霊神は今、三つ目の精霊樹壊された大雪山の近くにいると思います。多くの人間が被害にあう前に退治いたしましょう」



 私たちは大雪山へ向かった。




 「どうしてこうなってしまったのだ」


 

 ファルコンは膝をおとして泣き崩れていた。ファルコンの前には血を流して倒れているドロテーアと部下がいた。



 「姫・・・どうして俺の愛を受け入れてくれなかったのだ。俺ならば絶対に姫を幸せにしてあげれたはずなのに・・・」


 「人間よお前の望みは叶えてやったぞ」


 「俺はこんな事望んではいない。俺は姫と一緒に人生を歩んでいきたかったのだ」


 「この女はもうお前から逃げることも出来ないはずだ。ずっと側にいるがいい」


 「違う・・・俺はこんな恐怖におびえた姫の顔など欲しくない・・・」



 死んだドロテーアは絶望を目の前にして、目を見開き口を大きく開けていた。



 「姫・・・姫・・・」



 ファルコンは地面をはいつくばりながらドロテーアの元に近寄った。



 「こんなことをするつもりではなかったのだ。許してくれ姫・・・」



 ファルコンはドロテーアにしがみついて静かに眠りについた。





 


 


 

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