第81話 いざ!雪の大地へ
「もちろん、ハツキちゃんの実技試験についてよ。魔力量が0のハツキちゃんに魔法の実技なんて公平性に欠けると私たちは思っているの!魔力量の大小に関わらずに、公平かつ平等な実技試験を今年は取り入れてもらおうと思っているの」
「いいですよ。皆さんと一緒の実技試験で」
「本当にハツキちゃんは謙虚なのね。毎年実技試験では3つの課題を出されて、総合的に審査するのよ。15歳までは自分の魔法適性がわからないので、初歩的な実技試験になるけど、15歳までにどれだけ基礎を身につけたかその成果を見せる場所なの。ハツキちゃんは魔力が0だから魔法は使えないよね」
「そうね。魔法を使えるか試したことはあるけど全然ダメでした」
私は何度かプリンツに魔法のことを教えてもらって、魔法が使えるか試してみたが、全く魔法が使えなかった。
「そうよね。魔力奴隷になったハツキちゃんは魔法が使えるわけがない。だから、今年は魔法ではなく体力測定にすべきだと思ったのよ」
「体力測定?」
「そうよ。魔法を使うには実は魔力と同じくらいに体力も必要だと私は古文書から知ることができたのよ。魔法を使いすぎると魔力が減り体力も消耗するわ。それは、魔力と一緒に体力も消耗しているからなのよ。この学説はカメロパルダリス学院長も推奨していて、最近は授業にも筋トレなどが採用されているのよ」
『肉の壁』が目指す筋肉と魔力の融合は間違ってはいないのである。
「そうなんですね。どのような体力測定を提案するつもりなのですか」
「そうね・・・腹筋とかマラソンとかもいいかもしれないわ」
「腹筋ですか!!!」
私はマラソンなら問題ないが腹筋はヤバいと思った。
「そうよ。古文書には魔法を効果的に発動するには腹筋と背筋を鍛えると良いと書いてあったのよ。そして、魔力を消耗しても持久力をつけていれば疲労感は少なく魔力の回復速度も早くなるらしいのよ」
「マラソンは好きだけど腹筋は苦手だなぁ〜」
「ハツキちゃん好き嫌いはダメよ!シュテーネン専門魔法学院に合格するためには頑張らないと」
「そうね。腹筋頑張ってみようかな」
「さすが、ハツキちゃんね。何事も諦めずに立ち向かっていく精神は見習わないとね。私もシェーネちゃん達と一緒に署名活動を頑張るわ」
その後、ブランシュ達の署名活動の甲斐あって実技試験は腹筋と背筋とマラソンになるのであった。
ブランシュの部屋で私はお腹がはち切れるほどケーキを食べ王都の宿屋に戻ってきた。
「今日は宿屋で休んで、明日はプリンツちゃんと雪でも見に行こうかな」
私はせっかく王都まで来たので、すぐにカノープスの町に戻るつもりはなかった。以前ブランシュに聞いた氷と雪に覆われた国オランジェザフト帝国に行ってみたいと思っていたのである。ブランシュの母親の仇を打つ・・・ためではなく、雪を触ってみたかったのである。
私はこの異世界に来るまでは、ずっと病院のベットの上で生活をしていた。冬場に窓から見える綺麗な雪を見て、病院から抜け出して雪を自分の手に乗せて雪の感触を感じ取ってみたいと思っていた。それに、私が聞いたことがある動揺の『雪やこんこん』では、雪を見たら犬は喜んで走り回ると歌っていた。なので、プリンツちゃんも雪を見たら喜んで走り回ってくれると思ったのであった。
「プリンツちゃん、明日はオランジェザフト帝国に行くわよ」
「次の修行の場所だね」
「違うわよ!雪を見に行くのよ。プリンツちゃんも雪を見たいよね」
「そ・・そうだね」
プリンツは、私に話を合わせるように返事をした。しかし、プリンツは心の中で違うことを考えていた。
ハツキお姉ちゃんは、雪を見にあの白の厄災の女王のいるオランジェザフト帝国に行くと言っている。ハツキお姉ちゃんは僕に油断させるために、あえて、白の厄災の女王の名を出さないでいるのだろう。今回オランジェザフト帝国に行くのは、絶対に白の厄災の女王『白銀狐』と僕を戦わせるためだろう。『白銀狐』がいる大雪山は、柔らかい深雪に覆われた足場が悪い場所だ。『白銀狐』は深雪の上を沈むことなく移動できるが、僕は深雪に沈んでしまい、まともに歩くこともできない場所のはず。身動きも取れない大雪山で、僕よりも遥かに格上の『白銀狐』と戦うことで、僕を強くしようと考えているのだろう。
プリンツはこのように考えているが、私はただ単に雪を見に行くつもりであった。
「プリンツちゃん、雪を見るのは楽しみだね。雪合戦や雪だるまを作って遊ぼうね」
私はプリンツに声をかけるがプリンツは、どのようにして『白銀狐』を倒せばいいのか考えていて、私の言葉は届いていないのであった。
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