第62話 極秘事項と腹筋
「アードラーが殺された経緯を知りたいのでしょうか?」
「いえ、違うわ。まず、Cランク冒険者の『月華の雫』がアードラーを倒せるはずはないのです。もしかしたら、何か隠し事があるのかも知れないと陛下は推測したのです。しかし、ヘンドラー男爵が嘘を言うとは信じられません。もしかしたら、『真紅の爪』を報復を恐れて、何か隠している可能性があります」
「確か兄は何かを隠しているような表情をしていたわ。そう・・・誰かの顔色を伺っているような」
「そうですか・・・。実際に会って私が話を聞きたいと思っています。そして、『真紅の爪』は奴隷売買を生業としているので、アードラーがマーチャント家を襲ったのは娘のセリンセさんを狙っての犯行だと思いますので、私の兄とカーネリアンは、昨日出発してマーチャント家の護衛をする事になりました」
「もしかして、『真紅の爪』の報復があるのでしょうか?」
「その可能性はあると思いますが、町から出なければ問題ないと思います」
「それはよかったです」
「では、みんなと一緒に出発をしましょう」
シェーネは私にいらぬ不安を与えないために、カリーナだけにこの事を話したのであった・・・が、馬車の表ではショコラがみんなに同じ話をしたいたのであった。
シェーネが馬車から出ると、シェーンが近寄ってきた。
「シェーネさん、話はショコラさんから聞いたわよ」
「ショコラ!!!これは内密だと言ったよね」
「よん!忘れたよん・・・」
「実は、アードラーの事件の件で気になることがあるのですわ」
「シェーンさん何か心当たりがあるのですか?」
「実は、ヘンドラー男爵は王都に行く時は必ず3組の冒険者が護衛をするはずなの。そして、カノープスの町で唯一のBランク冒険者『満天の星空』が必ず同行しているはずなのに、あの時はなぜか『月華の雫』のみが護衛だったのよ。私たちは冒険者ギルドマスターのアーベンがこの事件に絡んでいるのではと思っているのよ」
「その話詳しく聞かせて欲しいわ」
シェーンはシェーネにアーベンが怪しい理由を力説した。
「確かに、シェーンさんの話は信憑性が高いわね。アーベンが『真紅の爪』に情報を渡し、手薄になったヘンドラー男爵の馬車を襲わせたと。となると今まで『真紅の爪』が奴隷売買に必要な人狩りをする時は、アーベンと同様に『真紅の爪』への情報提供者がいたって事になるわね」
「盗賊ギルドよん」
「盗賊ギルド?」
「ショコラ!その情報は内密だと言ったわよね」
「忘れたよん」
「シェーネさん盗賊ギルドってなんのことかしら」
「盗賊ギルドとは、あくまでそのような組織があるのではと噂されている話なので、まだ公にはされていないわ。盗賊ギルドとは、暗殺・誘拐・強奪など裏の依頼を受けるギルドのことを指すのよ。盗賊ギルドとイーグルネイルは密接な関係を持ち、盗賊ギルドの依頼のほとんどはイーグルネイルが実行していると言われているわ。もし、冒険者ギルドマスターが盗賊ギルドも兼ねていれば、全ての情報はイーグルネイルに筒抜けになっているので、盗賊ギルドの依頼の達成も容易くなるはずね」
「そんな恐ろしいことがあるのでしょうか!」
「あってはいけないことだわ。でも、シェーンさんの推測からアーベンが盗賊ギルドである可能性は高いわ。もしかして・・・ヘンドラー男爵もその事に気づいて、詳しい経緯を隠しているのかも知れないわ。カノープスの町に行ったらまずは、アーベンの素行を調査しないとね」
「そうよんよん」
シェーネたちが重大な話をしている時、一方私は・・・
「がんばれ!お嬢ちゃん」
「もっとお腹に力を入れるのだ」
「フン・フン・フン」
「がんばれ!もう少しで腹筋ができるぞ!」
「そうだ。目指せ腹筋一回目」
「ウ〜ン・ウ〜ン・ウ〜ン」
私は退屈だったので、少しの合間を見つけてトレーニングしていたムスケルとニーベンに腹筋の仕方を教わって挑戦をしていた。だが、怪力を手に入れたのにもかかわらず、私は腹筋が一回もできなくて苦戦していた。
「ハツキちゃん何をしているのよ」
大事な話を終えたカリーナが私の姿を見て唖然とする。
「ハツキちゃん頑張るのよ!」
シェーネは私の腹筋をしている姿を見て、拳を握りしめて応援を始めた。
「頑張るよん」
ショコラも同様に応援を始める。
「お嬢ちゃんファイトよ」
「お嬢ちゃんがんばれ!」
「もっとお腹に力を入れるのだ。そして後は気合だ」
『肉の壁』の3人が熱いエールを送る。
「ウ〜ン・ウ〜ン・ウ〜ン」
私は唸り声を上げながら必死に腹筋をするが、まだ一回目ができない。
「ハツキちゃん。ハツキちゃん。もう無理はしないで!よく頑張ったわよ」
「もう限界よん。これ以上は危険よん。止めるのよん」
シェーネとショコラはこれ以上は無理だと判断した。
「ウ〜ン・ウ〜ン・ウ〜ン」
それでも一回目をやり遂げたい私が頑張って腹筋をする。
「お嬢ちゃん・・・」
「もういいのよ・・・」
「・・・」
『肉の壁』の3人も私の限界を感じとる。
「えい!」
私は最後の力を振り絞ってお腹に力を加えて腹筋を成功させた。
「お嬢ちゃん、ついにやったのね」
「やりやがったなチキショー!」
「すごいぜ、すごいぜ」
「あなたは本当に素晴らしいわよ」
「最高よん」
5人は私に近寄ってきて励ましの言葉をかけて私を取り囲む。
「ハツキちゃん、やっぱりあなたは諦めない心の強い女の子ね」
「そうよん」
「みんなでハツキちゃんを胴上げするのよ」
「もちろんだぜ」
「みんなでお祝いだ」
私は腹筋を成功させみんなに胴上げをされるのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます