第15話 当然の結果
「それでは今からあなたの魔力量を計測しますが、お名前と年齢を聞かせてください」
「私はハツキです!年齢は14歳です」
「14歳ですね。冒険者は14歳からなることができますので、年齢的には問題はありません。冒険者になるには、素性を確認するための面接と実力を測るためのテストクエストを受けてもらわないといけません。なので、魔力量の測定はサービスでおこなっていますので、魔力量が多くても少なくても試験の合否には全く関係はありせんが、ムスケルさんのたっての希望なので、先に魔力量を測らせてもらいます」
シャンデは、受付カウンターの引き出しから透明の水晶を取り出した。
「これは魔力量を測定する魔道具の水晶です。魔力量によって5段階に色が変わりますので、この水晶に手をかざしてください」
私はとてもワクワクしていた。もしかしたら、私は丈夫な体と人並外れた怪力以外にも、莫大な魔力量を備わっているかもしれないと。私はそんな淡い思いも抱きながら水晶に手をかざした。すると水晶は・・・
「これは何かの間違いではないでしょうか」
受付嬢の顔が真っ青になる。
「ありないぞ!こんなことありえないぞ!」
ムスケルが動揺して大声で叫ぶ。
「なんてことなの・・・」
シェーンの瞳からは宝石のように輝く涙が溢れ落ちた。
「水晶の色が変わらないぞ!これは水晶が壊れているのか!」
ニーゼンが受付カウンターに詰め寄りシャンデに大声で叫ぶ。
「そんなことはありません。水晶の色が変わらないということは魔力量は0ということです」
「魔力量が0なんてあるのか!生まれたての赤子ですら魔力は備わっていると聞くぞ」
「ムスケルさんのいう通りです。魔力量が0なんて普通はありません。私の経験上ではいくら少なくても魔力量は100はあるはずです。そして、冒険者としてスタートするには最低でも300は必要だと冒険者ギルドでは考えていますが、魔力量は年齢とともに増えますし、研鑽を積むことでさらに増やすこともできるのです」
「絶対に魔道具の故障だ!新しい水晶を用意しろ」
ムスケルも受付カウンターまだおしよせて、鬼のような形相でシャンデに詰め寄る。
「この水晶は今日も新しい冒険者の魔力量の測定をしましたので、壊れていません。疑うのであればムスケルさん手をかざしてください」
ムスケルは水晶に手をかざした。すると水晶は青色に輝いた。水晶は魔力量が1から299までは赤く光り、300から599は黄色に600から999が青色に1000から1999は黒色に光る。そして、2000以上は金色に光るが金色に光るなんてことはほとんどないらしい。
「ムスケルさん、これで水晶が故障していないことがわかりましたよね」
「そんな・・・そんな・・・こんな可愛いお嬢ちゃんが魔力量が0だなんて・・・」
「俺は信じないぞ!こんな残酷なことがあってたまるかぁ」
ニーゼンが怒りのあまりに受付カウンターを殴りつけて破壊してしまう。
「大丈夫よ。大丈夫よ。生きていれば絶対にいいことはあるのよ」
シェーンが泣きながら私を強く抱きしめる。
魔力量が0という衝撃的な事実に見知らぬ冒険者たちが嘆いているが、私はそれほど落ち込んではいないのである。異世界に転移してきた私はこの世界の人間ではない。なので、魔法が使えないの当然だと思った。それに、私には神様が与えてくれた丈夫な体と怪力がある。
「みなさん。私は大丈夫よ。魔力量が0でも立派な冒険者になってみせるわよ」
「なんて、強い子なの」
「お嬢さん俺が必ず冒険者にさせてやるぜ」
「俺も協力するぜ」
「魔力量が0でも冒険者試験を受けることはできますが、私はおすすめしません。魔力量が0ということは魔法が使えませんし、魔道具を使うこともできません。魔法も魔道具も使えないハツキさんが冒険者試験を受けるのは死を意味することだと思います」
「うるせぇ〜そんなことは俺たちもわかっている。それでもお嬢ちゃんが冒険者になりたいと言っているのだ!俺たちはお嬢ちゃんの夢を叶えてあげたいのだ」
「ムスケルさん、先ほどまではハツキさんに冒険者にならないように言っていたではありませんか?」
「事情が変わったのだ!お嬢ちゃんが冒険者として生きていくことは不可能なのは百も承知の上だ。だからこそ、冒険者証だけでも与えてあげたいのだ」
「俺もムスケルの意見に賛成だ。魔力量が0なんだぞ。この先お嬢さんに待ち受けている人生はそれは過酷なことになるだろう。せめて冒険者になるといる夢を叶えさせてあげたいではないか」
「私も賛成よ。私たち『肉の壁』は全員一致でお嬢さんが冒険者になるための手助けをするわ」
ムスケルたちの冒険者パーティー『肉の壁』は『月華の雫』と同じくこの町で有名なパーティーであり、冒険者ランクは『月華の雫』と同様にCランクでかなりの実力者であった。
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