第14話 いざ冒険者ギルドへ

 私はヘンドラーに冒険者ギルドへ行くと伝えると、ヘンドラーは紹介状を書いてくれた。私は紹介状を受け取り崩壊した部屋の修理をヘンドラーに託し、後ろめたい気持ちで屋敷を出ていった。


 冒険者ギルドの場所はヘンドラーに教えてもらっていたので、迷うことなく簡単につくことができた。



 「たのもぉ〜」



 私は勢いよく冒険者ギルドの扉を開き中へ入って行く。私の大声でビビったのかギルドに中にいた数名の冒険者が口を唖然として私のことを見ている。


 冒険者ギルドに入ると中央に大きな掲示板のようなものがあり、そこに、冒険者ランクごとにクエストが張り出されている。そこに張り出されている紙を、奥の受付のカウンターに持って行き依頼を受ける仕組みになっている。そして、掲示板の周りにはレストランのようにテーブルと椅子が用意されていて、そこで飲食をすることができる。


 私がギルドの中に入った時には4組の冒険者がお酒を飲みながら、どの依頼を受けるか相談している様子だった。しかし、私の堂々たる掛け声にビックリしたのか、ギルド内はシーンと静まり返っていた。


 もちろん私がいた世界には冒険者ギルドなどない。なので、私はどうしたらいいのかわからないので、冒険者になりたいと叫んでみることにした。



 「私、冒険者になりたいのです!どうしたら冒険者になれるのですか?」



 私の大声に真っ先に反応したのは、坊主頭のかなり厳つい顔をして屈強な体をした男であった。



 「お嬢ちゃん。ここは子供の遊び場ではないぞ!ここは死と隣り合わせの世界で生きる危険な職業の冒険者が集う場所だ。おままごとなら家でしてくれ」


 「私は冒険者になりたいのぉ〜」


 「そんな華奢な体で冒険者になれると思っているのか。魔力に自信があるのかもしれないが、魔獣と戦うには俺様のような屈強な体も必要なのだ」


 「ムスケル、子供相手にそんなにムキなるな。そのお嬢さんにも何か事情があるのだろう。俺が思うに身分証が欲しいのだと思うぜ。身分証を手に入れるにはかなりのお金がかかる。しかし、冒険者証は試験を通ればタダで手に入るのだ」


 「そんなことは百も承知の上だ!だからこそ俺はお嬢ちゃんに忠告しているのだ。冒険者証が欲しくて命を落として者を何人も見てきたのだ!俺はもうそんな悲しい姿を見たくはないのだ」


 「お嬢ちゃん。ムスケルがきつい言葉で言ったのは、お嬢ちゃんのことが心配だからなのだ。だから、冒険者になるのは諦めてくれないか?」



 ムスケルの仲間のニーゼンが優しい言葉でわって入ってきた。ニーゼンも坊主頭で顎髭がフサフサてイカつい人相をしているが、ムスケルがボディビルダーのような屈強な肉体に対して、ニーゼンは相撲取りのような脂肪と筋肉の塊のような体をしている。なぜ、こんなに具体的に体つきがわかるかとうと二人とも肉体を見せつけるように上半身は裸だからである。



 「心配してくださるの嬉しいですけど、でも、私は冒険者になりたいの」


 「どうしてもなりたいのか?」


 「はい」


 「ムスケル、ニーゼン、お嬢ちゃんの意思はかなり堅いみたいよ。お嬢ちゃんはよほど魔力に自信があると思うのよ。魔力量の測定を見てから判断しても良いかもね」



 二人の仲間のシェーンという女性が声をかけてきた。シェーンは女性であるが、シェーンは二人と違って細身なグラマナスな体型だ。しかし、ギリシャ彫刻のような美しい筋肉を備えている。シェーンはその美しい肉体美を見せつけるようにビキニアーマーを着ている。



 「確かにそうだな。まだ子供でも魔力量が多い者はいる。試験クエストなら突破することも可能かもしれない。しかし、もし冒険者になったとしても、絶対に無理なクエストは受けるな。それが絶対条件だ」



 ムスケルはまるで私の父親かのように私に厳しく怒鳴りつける。



 「はい」



 私は話が長引くのが面倒だったので素直に返事をした。



 「シャンデ、お嬢ちゃんの魔力数値を測ってくれ。それを見てから冒険者試験を受けれるかどうか判断してやってくれ」



 シャンデとはこの冒険者ギルドの受付嬢である。派手なピンク色のショートカットの可愛い女性である。


 

 「わかりました。しかし、冒険者ギルドとしては、来るものは拒むことはできません。あくまでも自己責任での判断を尊重してます」


 「冒険者が何人死のうが関係ないって言いたいのだな」


 「そういうわけではありません。個人の意思を尊重するのが冒険者ギルドの方針になっています。しかし、冒険者の命を守るのも冒険者ギルドの役割です。なので冒険者ランクがあり、ランクにふさわしクエストしか受けれないことになっています」


 「それはわかっている。しかし、この間『月華の雫』が全滅した。あの『月華の雫』だぞ。ヘンドラー男爵様は一部の貴族からかなりの恨みをかっているのはギルドも把握していただろう。ヘンドラー男爵様の護衛を『月華の雫』のみで任せたのはギルドの落ち度ではないのか?」


 「その件に関してはギルドマスターの判断でしたので、私は何も申し上げることはできません」


 「俺の知っている情報では、ヘンドラー男爵様は毎回3組の冒険者を護衛につけるようにギルドに依頼をしているはずだ。しかし、あの時は『月華の雫』だけだった。なぜ護衛の数を減らした」


 「残念ながらギルドマスターは今王都へ行っています。なので、私がお答えすることは何もありません。その件につきましてはギルドマスターが戻られてからお聞きください。これでその件の話は終了します。今からそのお嬢さんの魔力を測定したいと思います。お嬢さん、こちらへ来てくれるかしら」



 私はシャンデに呼ばれて受付カウンターの前まで行くのであった。



 

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