第13話 大惨事が起こる!


 私はヘンドラーの屋敷に身を寄せて優雅で自堕落な生活を二日間過ごしていた。アイリスの作る美味しい手料理とおやつ、そして豪華な屋敷での生活は、病院で過ごしていた私にとってまさに楽園と言っても過言ではない。せっかく丈夫な体を手に入れたので、お外で遊びたい気持ちもあるけども、屋敷の中でもいろんな発見や体験ができてとても楽しかった。


 しかし、私の豪華な屋敷での生活も3日目の朝にとんでもない大事件が起こるとは夢にも思わなかった。



 「私のお部屋が・・・」



 私が目を覚ますと私のお部屋が破壊されていた。窓は粉々に割れ、天井は砕け散り綺麗な青空が見える吹き抜けの天井のようになっていた。私のお気に入りのフカフカのベットは真っ二つに割れていて、家具も粉々になっていた。まるでミサイルでも部屋に落とされたような有様である。



 「ハツキさん、何が起こったのですか?」



 ヘンドラーの屋敷に雇われているメイドの1人であるアゼリアが顔面蒼白で私の部屋に入ってきた。アゼリアは私と同い年の女の子で、青い瞳の長い青い髪の可愛らしい女の子である。しかも、同い年なのに私よりも発育もよく胸をゆさゆさと揺らす姿に私はかなり嫉妬していた。



 「わからないのよ?一体何がこの部屋で起こったのかしら」



 私は部屋が大破した原因が全く思いつかいのである。



 「旦那様に報告してきます」



 大きな胸をゆさゆさと揺らしながら、奥にあるヘンドラーの部屋に向かった。ヘンドラーの屋敷は4階建てあり、4階にはたくさんの部屋があるがほとんど使われていない。私は1番奥の角部屋で、私の部屋から1番遠い部屋をヘンドラー夫妻が寝室として使っていて、100mほど離れている。それほどヘンドラーの屋敷は大きのである。



 「本当に何があったのかしら?もしかしてイーグルネイルが復讐に来たのかしら?それとも隕石でも落ちたのかしら?」



 私は頭を抱えて悩み込む。1番考えられるのはやっぱりイーグルネイルの復讐である。この世界は魔法があるので、隕石のような大きな石を私の眠っている部屋に落として私の殺害を狙ったと考えるのが1番妥当だと思う。



 「プリンツはどう思うかしら?」



 私はプリンツと一緒にこの部屋で住んでいる。なのでプリンツが何か見ていないか確認をとる。



 「・・・」



 プリンツは私を睨みつけて何も言わない。



 「プリンツ、どうしたの?何か怒っているの?」


 「ハツキお姉ちゃん。本当に何も覚えていないの」


 「何を言っているの?」


 「この部屋を壊したのはハツキお姉ちゃんだよ。お姉ちゃんが暴れてこの部屋を大破したんだよ」


 「何を言ってるのよプリンツ!私がそんなことをするわけないのよ」


 「僕はお姉ちゃんを止めようとしたんだよ。でも、殺されると思って諦めたんだよ」



 この部屋を大破させた犯人がわかった。それは寝相が悪く暴れた私であった。



 「ハツキさん、大丈夫ですか?」



 ヘンドラーが私の体を気遣って慌てて私の部屋にやってきた。



 「すごい有様です。防音設備が整っていますので私は全く気づかなかったです。一体この部屋で何があったのですか・・・もしかして、これはイーグルネイルの復讐でしょうか?もうイーグルネイルは、ハツキさんがアードラーを倒したことに気づいたのでしょうか?」



 ヘンドラーは頭をフル回転させて推測する。



 「違うのです・・・」



 私は小声で呟いた。



 「ハツキさん、何か知っているのですね。私にできることがあればなんでも言ってください。ハツキさんのためならなんでも協力をいたします。もしかして、私の娘を狙った犯行でハツキさんを間違って狙われたのでしょうか?」


 「全然違います・・・実は・・・」


 「実は?」


 「これは・・・私の寝相の悪さが起こした大惨事だったの」


 「寝相?」


 「弁償します。必ず働いて弁償します」



 私は頭を下げて謝った。



 「もしかして・・・力が暴走したってことですか?多量の魔力持ちの子供が稀に魔力を暴走させて爆発すると聞いたことがあります。ハツキさんも魔力の暴走を起こしたのでしょうか?」


 「そ・・・そうですわ。魔力が暴走したのですわ。本当に申し訳ありません」


 

 私は寝相が悪くて部屋を大破したとは言い難い雰囲気なので、ヘンドラーの意見にのっかかることにした。



 「お部屋のことは気にしないでください。新しい部屋を用意するので、そこへ移動をしてください」


 「ありがとうございます」



 私は深々と頭を下げた。私はヘンドラーに新しい部屋に案内されて、そこでプリンツと作戦会議を行うことにした。





 「よし!力の制御の練習をしよう」



 私はまだ自分の怪力を上手くコントロールできていない。だからこのような大惨事が起こったのだと思った。



 「どうやって練習をするの?」


 「外に出て魔獣と戦うのはどうかしら?」


 「身分証がないと頻繁に町を出入りできないよ」


 「そうだったわ。それなら身分証を作ろうかしら?」


 「身分証を作るくらいなら冒険者証作ったほうが役に立つかもしれないよ」


 「確かにそうね。私冒険者になって魔獣を退治しながら怪力のコントロールをできるように頑張るわ」



 こうして私は異世界で冒険者になると決めたのであった。

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