天安寺裏参道 その2
忍仁大師の死後、遺体は
暫らくすると釈迦堂の着工に備えて、周囲に埋葬された僧達は新たな墓所に葬られたのだった。そこは、今では黒松の大木が
それより以前に
5人の悪党は、4人までが死後直ちに地獄に堕ちて行ったが、1人はこの世に
人が悪鬼となる時、様々な条件を伴なうのだが、頭目の場合は罪を裁かれる前に
鬼は
地伏妖は、頭目を手先としてこの世に不善と退廃を蔓延させるために現世と地獄を行き来していた。このような鬼は滅多に存在しないのだが、人の心のありようが悪く傾く時に現れるのだった。
地伏妖の手先になった頭目は、生前の名を
地伏妖は、桑原博堂を骨に閉じ込める時、赦しの日を約束していた。
地伏妖が言った。「お前が
地伏妖はそう約束したが、実際にはその百倍の数を以って赦しの日としていた。鬼にとって、偽りや騙しなどで桑原博堂を苦しめることは、己の喜びを倍加させる何よりの喜びの種だった。桑原博堂はただ待ち続けた。待てど暮らせど約束の日は来なかった。百回の落雷があっても赦されることはなかった。
やがて、何百回と言う落雷があっても赦されない絶望の毎日が続き、とうとう鬼への絶対服従を自ら誓うに至った。鬼は、悪鬼と言う人の魂の成れの果てを見下していた。悪事に掛けては鬼を凌ぐ者などなかったからで、桑原博堂のような小悪党に
ある日、桑原博堂は赦しを受けた。
魂に力が漲り、骨から離れ暗い地中から陽の光の中にでた時、魂の自由を感じた。悪鬼が陽の光の下で自由を得ることは不思議だったが、悪鬼となった魂はまだ悪事を成していなかったからで、人を取り殺した時から闇の世界だけが生存の場となるのだった。
桑原博堂が天安寺の墓所に頭をだした時、魂を責め立てるような経の響きが聞こえた。苦しさに耐えて命からがら逃げだしたが、そこら中、経の絶える場所がないほどでその身を責め続けた。天安寺門内に悪鬼が生きる場所を
こんな自由が死後の世界にあることなど思いもしないことだった。上に上にと上昇し、天安寺の伽藍を目にした時、とんでもないところに頭をだしたものだと思った。命を失った時は、鳳来山の草木の他は何もなかったのだが、よりによって寺が幾つもできていたのだった。
桑原博堂は地上に降り立つ場所を探した。疲れを癒さなければならなかったが、桑原博堂には
桑原博堂は人が通ることや、鬼が助けてくれることを願った。数日のうちに朽ち果てる予感に怯えながらひたすら願ったのだった。
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