エピソード4
見慣れない部屋。
白い天井と壁。
大きな窓からは、煌びやかな夜景が見える。
広すぎるリビング。
大きな薄型の液晶テレビ。
さりげなく置かれている大きな観葉植物と上品な間接照明。私が座っている黒い皮のソファも部屋の雰囲気によく合っていた。
ガラスのテーブルを挟んだ向こう側にも、同じ黒いソファが置いてある。
シンプルな部屋。
私は蓮さんの家にいた。
◆◆◆◆◆
子供みたいに胸にしがみついて泣く私を、蓮さんはずっと抱きしめていてくれた。
「大丈夫」
「お前は、もう1人じゃない」
「もう、我慢しなくていい」
「感情を隠さなくていい」
まるで、言い聞かせる様に……。
耳元で何度も繰り返し囁かれる言葉。
低く静かな声で繰り返される言葉。
ようやく、涙が止まり顔を上げると、私を見守る漆黒の瞳。優しく穏やかな瞳。
蓮さんは、私の頬に手を当てて親指で涙を拭ってくれた。
そして、蓮さんは涙の流れた頬と泣きすぎて腫れた瞼に優しく唇を寄せた。
それから蓮さんは、何も言わずに車を走らせて私をここに連れてきた。
繁華街にある、お洒落な高層マンションの最上階が蓮さんの家だった。
地下の駐車場に車を止め、オロオロとする私の手を引いてこの部屋に来た。
玄関の前で立ち尽くす私は、『施設に帰るか、この部屋に入るか選べ。』って言われた。
施設に帰るって言って途中で逃げようかと考えていたら、微笑みながら『途中で逃げたらどうなるか分かるな?』って軽く脅されたから諦めた。
『……この部屋に入る。』って言ったら蓮さんは満足そうな笑みを浮かべていた。
リビングに入った私に、蓮さんは自分のTシャツとハーパンとタオルを差し出して『風呂に入ってこい』って言うとバスルームに案内してくれた。
久しぶりに大泣きした私は、疲れきっていたので素直に従ってお風呂に入る事にした。
脱衣場の鏡で自分の顔を見て叫び声をあげてしまった。
泣きすぎで、目は充血して瞼は腫れていた。
その上、マスカラが涙で流れてタヌキみたいになっていた。私の叫び声を聞いて飛んできた蓮さんに『顔がすごい事になってる。』って言ったら『今更、なに言ってんだ。』って呆れたように笑われた。
家に着いてすぐに『風呂に入ってこい』って言われた意味が分かった私は、恥ずかしくなったから『お風呂に入るから出て行って!!』って蓮さんに逆ギレしてみたら『ごゆっくり、タヌキさん』って余裕でかわされた。
改めて蓮さんには、勝てない事が分かった。
蓮さんの家はお風呂も大きかった。
バスルーム自体も広かったけど、バスタブも大きかった。
何人でお風呂に入るんだろう?って疑問が浮かび私は首を傾げた。
バスルームには大きな窓もあった。
だから意味はないけど窓の前に仁王立ちして外の景色を眺めてみた。
ここは高層マンションの最上階だから外からは見えないって分かっていてもやっぱり恥ずかしかった。
脱衣場に行くと、着替えを入れている籠の一番上にコンビニの袋が置いてあった。
中を見ると、下着が入っていた。
蓮さんが準備してくれたようだった。
どんな顔して買ったんだろう?と想像して1人で笑ってしまった。
リビングに戻ると、蓮さんがケイタイで誰かと話していた。窓の外を見て話していたから、表情は分からなかったけど、低くて冷たい声だった。
ケイタイを切って私に気付いた蓮さんは、ソファを指差して『座ってろ』って言った。
その声は、いつもと同じ優しい声だった。
蓮さんは、ペットボトルのお茶をくれた。
『俺も、風呂入ってくる。』って言ってリビングを出て行った。
ソファに近付いた私はどこに座ればいいのか分からず、とりあえず手前のソファの隅に座った。
私は蓮さんを待つ間、目を閉じペットボトルを腫れている瞼に当てた。
お風呂に入って腫れは少し引いたけど、違和感がある。
しばらくすると遠くでドアの閉まる音がした。
こちらに近付いてくる足音。
リビングのドアが開く音。
そして、こちらに近付いてくる気配。
「目、痛いのか?」
蓮さんの声がすぐ近くで聞こえた。
「……痛い……」
私は、ペットボトルを瞼の上に当てたまま答えた。
離れていく気配。
少し離れたところで引き出しを開け何かを探す音。
引き出しを閉め、こっちに近付いてくる気配。
そして、私の横に座る音と振動。
「目、開けろ」
私はペットボトルを瞼から離し、ゆっくりと瞳を開いた。
白くボヤけていた視界が少しずつ色を取り戻していく。
「真っ赤だな」
私の瞳を覗き込んだ蓮さんが小さく舌打ちをした。
その蓮さんが何かを持っている事に私は気付いた。
私は、目を細めて焦点を合わせる。
……それって……もしかして……。
「……それなに?」
「あ?」
私は、蓮さんの手を指差す。
「目薬」
「誰が使うの?」
「目が痛いのは誰だ?」
「……私?」
「分かってんじゃねーか」
「……!!」
私は、蓮さんから少しずつ離れた。
「おい、なに逃げてんだ?」
後退りした私は、ソファの隅に座っていたせいですぐに肘置きと蓮さんに挟まれた。
「……無理」
私は、首を大きく横に振った。
「何が?」
「……目薬」
「何で?」
「……怖いから」
そう言って、私はソファから立ち上がり逃げようとした。
……そして、すぐに捕まった……。
私の腕を掴んだ蓮さんは、自分の方に引き寄せた。
腕を引っ張られた私は蓮さんの膝の上にすっぽりと嵌ってしまった。
ヤバい!!
この体勢だと逃げられない……。
そう思った私は、両手で両目を隠した。
「何やってんだ?」
蓮さんの低い声。
「目薬は無理!」
私は首を大きく横に振る。
「大人しくしてればすぐに終わる」
呆れたように蓮さんが言った。
「絶対、イヤ」
私は、両手に力を入れた。
「……お前、おかしいだろ?。俺にヤられそうになったときは、抵抗しなかったくせに、たかが目薬ぐらいでそんなに抵抗しやがって」
「それとこれとは別だもん」
私の言葉に大きな溜息を吐く蓮さん。
「いい加減にしろよ?俺に無理矢理、目をこじ開けられんのと自分で開けんのどっちがいいか選べ」
……そんなのどっちもイヤに決まってんじゃん。
私は、そう思いながら蓮さんの様子を伺おうと指を少し開いた。
その時、私の視界に映ったのは蓮さんの長い指と小さな目薬のボトルだった。
……ひっ!!
私が危険を察知した時にはすでに遅かった。
スローモーションのように水滴が私の瞳をめがけて落下してきた。
この時、私は初めて知った。
人は予想していなかった事態に遭遇すると身動き1つ出来ない事を……。
私は、瞳を閉じる事も出来ずただ呆然とその水滴を見つめていた。
……そして、見事に目薬は両目ともに的中した……。
「……!!」
私は、声にならない叫び声を上げていた。
◆◆◆◆◆
「いつまで、拗ねてんだよ」
ソファの隅で体育座りをする私に声を掛ける蓮さん。
「……」
そんな蓮さんを私は恨めしそうに睨んだ。
「分かった。もう目薬はしねぇーから」
蓮さんは手に持っていた目薬をテーブルの上に置いて両手に何も持っていない事を私に見せるために掌を広げた。
「な?」
「……うん」
「だから、もう機嫌直せ」
「……うん」
「こっちに来い」
ソファの真ん中辺りに座る蓮さんが自分の隣をポンポンと叩いた。
私は、恐る恐る蓮さんの隣に移動した。
◆◆◆◆◆
私は上手く話せるだろうか。
私の気持ちを蓮さんは分かってくれるのだろうか。
私の話を聞いて蓮さんはどう思うんだろう?
私と同じ事を思うのかな?
『私なんか生まれてこなければよかった』って……
頭の上に、少しの重みと温かい感触。
「話したくないなら、無理に話さなくていい」
心配するような優しい瞳。
吸い込まれるような漆黒の瞳。
私は、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「夢をみるの」
「夢?」
私は、頷くと瞳を閉じた。
◆◆◆◆◆
古くて狭い和室。
その部屋の端っこで蹲っている小さな女の子。
自分の腕で身体を抱きしめる様にして震えている。
甲高い怒鳴り声。
(……怖い……助けて……)
若い母親が少女の目の前に立った。
(……ごめんなさい……お母さん……)
母親は冷たい視線で少女を見た後、力いっぱい少女の頬を叩いた。
何度も、何度も……。
倒れた少女の髪の毛を掴んで、身体を起こすと、少女のお腹辺りを蹴り上げた。
苦しそうに呻き声を上げた少女は、お腹を押さえて蹲った。口や鼻から流れる真っ赤な血。
少女の透けるように白い肌に赤や紫の痣が浮かび上がっている。
(……許して……お母さん……。)
弱々しい少女の声。
母親は、蹲った少女を冷たい視線で見下ろすとその場から離れた。
そして、テーブルの上にあったタバコに手を伸ばし火を点ける。
白い煙が出るタバコを強張った顔で見つめる少女。
(止めて……!!)
母親は躊躇う事もなく手に持ったタバコを少女の背中に押し当てた。
◆◆◆◆◆
私は、ゆっくりと瞳を開けた。
私の話を聞いていた蓮さんは顔を強張らせている。
その瞳には、悲しみと怒りが溢れていた。
私は、着ていた蓮さんのTシャツを脱いだ。
「美桜?」
下着姿の私に戸惑っている様な蓮さん。
でも、その視線は、まっすぐ私の瞳を見つめていた。
それを確認した私は、ゆっくりと蓮さんに背を向けた。
私の背中に刺さる蓮さんの視線。
「……んだよ。これ……」
掠れた蓮さんの声。
「罰だよ」
「罰?」
「私が生まれてきてしまった罪に対する罰」
私の背中には、無数の火傷の跡がある。
タバコの火を押し付けられて出来た火傷の跡。
「私、親に捨てられたって言ったでしょ?」
私は蓮さんに背中を向けたまま話し始めた。
今、蓮さんの顔を見る勇気は無い……。
「あぁ」
「本当は、保護されたの」
「保護?」
「うん、児童相談所に……」
「……!!」
蓮さんの身体が強張ったのが分かった。
「“母親の虐待から私を守るため”の保護なんだって」
迎えにきた児童相談所の人が私を連れて行く時、お母さんにそう言っていた。
「……」
蓮さんは何も言わない。
でも、ちゃんと話を聞いていてくれているって分かったから私は話そうと思った。
「私には、お父さんがいないの。いないって言うか、お父さんが誰だか分からないってお母さんは言ってた」
「私を妊娠してしまったから仕方なく産んだんだって……。だから、お母さんは私の事が大嫌いなんだって……」
「それでも、私はお母さんの事が大好きだった。
どんなに、傷つけられても仕方ないって思った」
「仕方ない?」
蓮さんの低い声。
「うん。私が、望まれてないのに生まれてきてしまったから……。お母さんが悪い訳じゃない。私が、悪いの。だから、お母さんは私を叩くの。この、火傷も、罪を犯した私にお母さんが罰を与えたの。自分の犯した罪を忘れないように……」
叩かれた傷は長い月日が癒してくれた。
でも、この火傷の跡はこの先も消える事はない。
私が、死ぬまで……。
死ぬまで罪を忘れないように……。
「……でも私は期待してたの……」
「期待?」
「どんなに、私を大嫌いって言うお母さんでも保護された私を迎えに来てくれるって……。でも、児童相談所に来たお母さんは私に言ったの」
「……」
「『あんたなんて生まれてこなければよかったのに!
あんたのせいで、あたしの人生、滅茶苦茶になったのよ!二度と私の前に顔を見せないで!!』って……」
涙が溢れてくる。
さっきあんなに泣いたのに……。
私の身体のどこにこんなに涙があったんだろう?
「……美桜」
蓮さんが、優しく私の肩を掴んだ。
まるで、壊れやすいものを扱うように私を自分の方を向かせた。
私の頭の中では、お母さんの言葉が、何度も繰り返されていた。
呼吸が乱れる。
肩が大きく揺れる。
「美桜、大丈夫だ」
蓮さんの肩を持つ手に力が入る。
身体が震える。
「美桜、落ち着け」
呼吸が上手く出来ない。
手が痺れる。
「美桜、ゆっくり息をしろ」
蓮さんの言葉は、耳を素通りするばかりで頭の中には入ってこない。
頭の中が真っ白になった時、唇に温もりを感じた。
苦しさしか感じていなかった私は温もりを鮮明に感じた。
その温もりが蓮さんの唇だと私が気付くのに時間は掛からなかった。
重なった唇。
息苦しさから開いた唇の隙間から侵入してくる舌。
私の舌を捕らえたそれは絡むように動く。
「……っん!……」
私の口から漏れる声に蓮さんの手に力が入る。
身体の力が抜ける。
ゆっくりと蓮さんの唇が離れた。
「美桜。目を開けろ」
私はその言葉に従いゆっくりと、瞳を開けた。
至近距離にある蓮さんの顔。
「ゆっくり呼吸しろ」
私は、息を吸い込み、そして、ゆっくり吐き出した。
それを、何度か繰り返した。
蓮さんに言われる通りに……。
「どうだ、まだ苦しいか?」
「ううん、もう苦しくない」
私は、首を横に振った。
蓮さんが、安心したような表情で溜息を吐いた。
「過呼吸だ」
自分の身に起きた状況が理解出来ずに首を傾げる私に蓮さんは教えてくれた。
「過呼吸?」
「あぁ。今まで、息苦しくなった事ないか?」
「ない」
私は、首を横に振った。
「そうか」
蓮さんは、そう言うと一瞬、思いつめたような表情をした。それから、私に脱いだTシャツを着せてくれた。
そして、私を軽々と持ち上げ自分の膝の上に座らせると両腕でスッポリと包み込んだ。
蓮さんの匂いと温もりに包まれた私は、安心感を覚えた。
甘く大人っぽい香りは、多分、香水の香りだと思う。
そして、微かにタバコの香りが混じっていた。
「なぁ、美桜」
「うん?」
私は、蓮さんの胸に顔を埋めたまま返事をした。
「悪かったな」
「……?」
「お前がツライ事を無理に聞いて……」
その声は、本当に申し訳な意と言うように弱々しい声だった。
「別にいいよ。私も話したいと思ったから話したんだし……」
私の背中にある蓮さんの手がゆっくりと動き出した。
私の背中を撫でるように上下に動く大きな手。
蓮さんの手の温もりがとても心地良かった。
「お前がいつも繁華街にいる理由も1人になるのが怖い理由も解った」
「……うん」
「でもな、いくら理由があっても俺はお前があそこに行く事には納得できねぇ」
穏やかで優しい蓮さんの声。
「……」
「だから、ここにずっと居ればいい」
「……え?」
「ここで俺と一緒にいればいい」
……はっ?
……蓮さんと?
……一緒に?
蓮さんの言葉は素直に嬉しかった。
……でも、それは無理だと思った。
そんな事をしたら蓮さんに迷惑をかけてしまう。
私は施設にいるんだから。
数日の無断外泊くらいなら長い説教ぐらいで済むけどずっとここにいるとなると大問題になってしまうのは必然的だ。下手すると警察沙汰になってしまう。
私は、蓮さんの腕の中で小さく首を振った。
「ダメだよ。そんなことしたら蓮さんに迷惑が掛かっちゃう」
いくら蓮さんがいい人で私を心配してくれていると言っても昨日初めて言葉を交わした他人にそこまで迷惑を掛ける事なんていくらなんでも図々しすぎて出来ない。
……やっぱりここははっきりと断らないといけない……。
お断りの言葉を探していると……
「あ?好きな女と一緒にいるのがなんで迷惑なんだ?」
蓮さんが不思議そうな声を出した。
その言葉に、私は思わず顔を上げた。
「……好きな女って……誰の事?」
「今、誰の話をしてんだ?」
「……私?」
「分かってんじゃねぇーか」
……。
……。
……はぁ?
……。
……。
……蓮さんの“好きな女”って……。
……。
……。
……もしかして私!?
そう理解した瞬間、顔が赤くなるのが分かった。
また、からかわれているのかと思ったけど蓮さんの表情は真剣だった。
「で……でも、昨日会ったばっかじゃん」
「あぁ。話したのはな」
「……どういう事?」
「去年の春くらいからお前があそこにいる事を知っていた」
……去年の春ってちょうど私があそこに行きだした頃だ。
「初めは、ナンパ待ちかと思っていた。でも、声掛けられてもついて行かねぇーし。しかも、ずっとシカトしてるし」
……よくご存知で……。
「毎日、毎日あそこで何してんだろうって思ってた」
「……」
「そのうち、あそこ通る度に、お前を見るのがクセになってんのに気付いた」
昨日、蓮さんが私の方を見たのは偶然なんかじゃなかったんだ。
「……蓮さんの気持ちは嬉しい。でも、やっぱりここにいる事は出来ないの」
「なんで?」
「だって、私は施設にいるんだよ。2日、3日なら何とかなるけどずっとここにいるのは無理だよ……」
「あぁ。その事なら心配するな。もう、手は打ってある。お前の答え次第ですぐに解決できる」
……えっ?
全然、意味が分かんない。
手は打ってある?
すぐに解決できる?
「お前はそんな心配しなくていい」
蓮さんは平然と涼しい顔で言った。
その顔を見ていると本当に大丈夫な気が……。
……ってダメだよ!!
これが一番重要な問題なんだし……。
「で、どうする?」
「……はい?」
「お前は俺と一緒にいるのか、いねぇーのか、どっちか選べ」
……。
なんで、この人はいつも二択なんだろう?
もう、聞かなくても分かってるくせに……。
優しくて、力強くて、自信に満ち溢れている瞳。
吸い込まれそうな漆黒の瞳。
そんな瞳で見つめられたら、こう答えるしかないじゃない……。
「……一緒にいる……」
「それでいい」
蓮さんは、満足そうに笑った。
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