第6話 劣化魔法

マリルは『武器を選んで』って言うけど…余り予算は無いよな。


僕には新しい服を買ってくれたけど、マリルの服は所々ほつれている。


だから、出来るだけ安くて質の良い物を選ばないと…


『広域鑑定』を無詠唱で使った。


これは『神眼の勇者』が持っていたスキルだ。


オリジナルの勇者なら街や村ごと鑑定して高級な物や必要な物のありかすら特定できる。


出来損ないの僕じゃ…精々が半径10メートルしか使えない。


貴重な武器が2つこの店にある事が解かった。


1つは…お店の奥に飾ってある黄金の剣。


沢山の宝石が嵌め込まれていて…うん物凄く高そうだ。


もう一つは樽に無造作なに放り込まれている複数の中にあった。


錆だらけで汚い。


剣というには細すぎて半分の厚さしかない。


だが、長さは通常の剣より少し長い。


なんだ、これ…良く解らない…


やはり僕は出来損ないだ、本来なら『広域鑑定』だけで物の名前や特色も解かるのに…貴重な物としか解らない。


仕方ない『鑑定』


僕は無詠唱で鑑定を使った…結果。


偽聖剣 デュランダル


古き女神●●が聖剣を作る練習として作った剣。


結局、古き女神●●は聖剣を作る才能が無く、本物は完成しなかった。


本来宿る筈だった『聖』『光』の魔法は付与されていない。


だが、『不破』のみ宿っており…破壊される事は無い。


これが良い…多分金額も高くはない筈だ。


「これは幾らでしょうか?」


「ああっそれか? それは冒険者が使い潰しで使う様な物だから、銀貨2枚で良いぜ」


「マリル、これにします」


「ちょっと、セレス、そこ迄安い物にしなくて良いわ…ほら、このナイフとかの方がいいんじゃない?」


「いえ、初心者ですから、この剣で充分です…より良い装備はもっと腕をあげてからで大丈夫です」


多分、この店じゃ1番の業物がこれじゃないかな?


態々お金を使って『劣る剣』を買う事も無いだろう。


「そう? セレスがそう言うなら良いわ…そうね、冒険者をしてお金が溜まったらもっと良い装備買ってあげるわ…店主、この剣を貰うわね」


「あいよ」


一瞬、この店主嫌な顔をしたな…マリルは貴族らしい恰好をしているから..お金がとれる、そう思ったのかも知れない。


マリルは剣の代金銀貨2枚にお手入れセット銅貨5枚の代金を支払った。


◆◆◆


「セレス、本当にそれで良かったの? 言っちゃなんだけど錆錆だわ」


「実際の所は解りませんが錆びる前は、そこそこ良い剣だったみたいです。上手く錆を落とせたら掘り出し物かも知れません」


「へぇーそうなんだ? よく解かったわね?」


「何となくですよ」


流石に、こんな劣化魔法しか使えないなんて…恥ずかしいからマリルには内緒にしておこうっと。

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