第4話 パートナー
「あんた、名前は?」
「僕はY-00421…廃棄物…ゴミです」
ゴミ?
この子がゴミだって言うの?
綺麗な銀髪に白い肌。
見た目は…そう王子様と言っても過言では無いと思うわ。
「Y-00421? もしかして特殊部隊のコードネームか何か? 廃棄って除隊でもされたっていうの?」
どうみても軍人には見えないわ。
まるで…そうね、新品の人間みたい。
「私はアレス様が勇者を作ろうとして失敗して廃棄された…ゴミです」
アレス…古の賢者じゃない。
確か、もう数百年も前の偉人だわ。
『作ろうとした?』もしかしてホルムニクスみたいな物かしら?
だけど…どう考えても猫や犬なんて比べ者にならないわね。
だって、彼は人間。
しかも、凄い美少年なんだから。
「あの、あんたは捨てられたという事は、所有者は居ないのよね」
「はい、捨てられた存在ですから…」
「それなら、貴方わたしのパートナーになりなさい」
「パートナーってなんでしょうか?」
「私と一緒に生涯を過ごす存在よ…お互いに助け合って生きるのよ」
私が酷い事をしているのは解かるわ。
『作られた存在』の彼にはきっと記憶が無い。
だから、そこにつけ込んでいるのは…解るわ。
だけどね…一人はもう嫌なの。
1人ボッチはもう嫌なのよ…
「僕で宜しいのですか? 能力が無くて捨てられた存在ですよ? 貴方が呼んでくれなければ、あのままただ死んだ存在…役立たたずです。それでもマリル様はパートナーにしてくれるのですか?」
「あのね、私は貴方を召喚魔法で呼んだのよ? 召喚魔法は生涯のパートナーを呼び出す魔法なの…それで貴方が来たと言う事は『運命』なのよ…私が望んで呼び出して、貴方が来た。私が拒む訳ないわ」
彼の中身は解らないわ…だけど召喚で来たと言う事は『私にとって必要な存在』という事だわ。
それを差し置いても…見れば見る程綺麗。
こんな人と生涯を一緒に過ごすなんて…それだけでも充分よ。
「本当に良いのですか? 僕みたいな者で良いなら、マリル様と一緒に居たいです。パ、パートナーにして下さい」
「解かったわ、たった今から貴方は私のパートナー、生涯を一緒に過ごすのよ! 良いわね」
「はい」
「そうね、一緒に暮らすなら名前が必要ね」
「名前ですか?」
「そうよ!Y-00421以外に名前は無いの?」
「ありません」
やはりホルムニクスなのかな?
だったら、私がつけても良いわよね。
賢者アレスが作った存在。
そして、銀髪の美しい美少年。
だったら…そうね…単純かもしれないけど『銀嶺の勇者』から名前をとろうかしら。
彼も銀髪で美少年だった…そういう伝説があるのだからね。
「なら、貴方の名前は今日からセレスよ」
「セレス…それが僕の名前…僕だけの名前」
「そうよ、セレス、これから宜しくね」
「はい、マリル様」
今日からはもう一人じゃない。
彼セレスが何時も私の傍に居るもの。
「うん」
こうして私は生涯のパートナーを手に入れたのよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます