夜明けの終わりに青が鳴る

華ノ木

夜明けの終わりに青が鳴る


僕は夜明けが好きだ。


どれだけ昼が騒がしがろうとも、夜にも騒ごうとも、……夜明けは静かだからだ。



僕は体質としてあまり寝ないでも過ごすことができる。……いわゆるショートスリーパーと言うやつだ。


最初から夜明けが好きだった訳でもない。きっかけは他愛もない事だ。



ある日、午前4時くらいに目が覚めた時のこと、今まで気にもしたことがなかったが、ふと空を見てみようと思った。


ーーなんて綺麗なんだろう。


気付けば僕は外に出ていた。もともと一人暮らしだ。咎める人なんてどこにも居ない。


だが、空の景色よりも、周りのいつも騒がしい道が静まり返っている、そんなに空気に心が支配されてしまった。


そこから僕は夜明けの数刻、空を、空気を見ようと外へ出るようになった。


そして夜明けの空に慣れてきた頃、僕は自分が通う学校へ行った。こんな夜明けの時間に誰もいやしないだろう。そう思って。


案の定、学校は不気味なほど静かだった。もちろん人の気配なんてものは無い。今の季節は夏、もう時期夏休みに入ろうかという時期だ。僕が真っ直ぐに進んだ場所はプール。校庭など、広い場所で空もをあげるのも良かったがどうせならいつも進んで行かないようなところに行きたくなったからだ。


プールにいくと、一応というように柵があったが大した高さもないのでそのままよじ登ってプールに侵入した。侵入して最初に思ったことは、美しい、それだけだった。初めて見た夜明けの空と比べても話にならない程の美しさだ。


今日が雲ひとつない空であったのも理由のひとつだろう。しかし、暗いようで明るい空、シルエットでしか分からない建物、徐々に輝きを失っていく星々……。そして、薄く明るい光が反射してより1層青く輝くプール。まるで絵でしか見た事のないような風景だった。


今日が休日で良かった。でないと夜明けのギリギリまでここに居座って学校に遅れてしまう事になりそうだ。


帰ってからも僕は今日の夜明けの空を思い浮かべていた。今、空を見ようとも夏の暑い日差しに刺されるだけだ。後数時間もすれば夕方の時間になるだろう。そうだ、夕暮れの景色はしっかりと見ていないじゃないか。




夕暮れの空もなかなかであった。しかし、夜明けの空の青い景色の方が断然良く感じた。


また数日して今度は真夜中の空を楽しんだ。


雲もなく、月は光り輝いて、星々も僕達も照らしているようだった。


今日は騒がしさもない。いつもの夜明けの空とは時間以外何も違わない。しかし、結局のところ、夜明けの空の方が良かった。多分瞬間の景色なら真夜中の空の方がいいだろう。だが、夜明けの空の変化していく空模様に、あの薄暗い青い空に、僕は惹かれた。まるで空気までもが青に侵されているように。


今日も僕は夜明けの空を見上げる。


青く、静かで、儚げな空を見るために。


青は今日も鳴る、僕に夜明けを教えるために。


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お読みいただきありがとうございます!

この話はカクヨム甲子園創作合宿テーマ『空』のお話です。上手くかけたかどうかは分かりませんが楽しんでくれたなら幸いです。

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