最高のホワイト職場をゲットしました
その後、ユキレラはルシウスの住む家に同居して、名目上は秘書、実態は世話役兼お目付役として雇われることになった。
子爵のルシウスの、秘書という名の何でも屋だ。
そうして提示された給料や待遇の内容に、ユキレラは薄い水色の目ん玉が飛び出そうになった。
おちんぎんすごい。
「こ、こ、こ、これ、何か数字の桁がひとつ多すぎやしませんか!?」
最果ての僻地、ど田舎村から出てきた19歳の、手に職のない男の給料にあるまじき金額だった。
ど田舎村でのユキレラの毎月の稼ぎの倍以上、いや三倍はある。
ちなみにユキレラは故郷では個人商店の従業員だった。
ただでさえ寂れた村なのに、自分の店ですらない雇われ者の給料はとにかく低かった。
親が残してくれていた家があったから生活できていたけれど。
「まだ試用期間だからね。三ヶ月勤めて貰って、継続してくれるならもっと上がるよ」
「更に!?」
何というホワイト環境。
これが王都、大都会クオリティというやつか。
ユキレラは感動に打ち震えた。
そんなわけで、ユキレラのリースト子爵ルシウスの秘書生活がスタートする。
ルシウスの仕事は、兄のリースト伯爵カイルから回される仕事がまず2割。
その兄の学園生時代の先輩だというグレイシア王太女からの仕事2割。
王太女様とも縁があるのけ!? とそこでもユキレラは倒れそうになった。
王都の貴族や有力者たちとの社交2割。
たまに伯爵家の領地に戻って現地の視察がある。
他は暇、もとい時間の余裕があるので、自宅で剣や魔力使いの訓練をしたり、王都、王都近郊へ出歩いたりして遊んでいた。
ほどほどに貴族の義務を果たし、しっかり余暇を楽しんでいる。
なかなか優雅なお貴族様生活といえた。
ユキレラはルシウスの子爵邸に部屋を貰ったので、出勤日も休日も、そして時間帯も関係なくずっとルシウスと一緒にいた。
というより、子爵邸は王都のリースト伯爵家のタウンハウスからスープの冷めない距離にあるレンガ造りの二階建ての建物で、庶民の家よりちょっと広いかな程度の大きさしかない。
ルシウスが実家から独立するとき他にもっと広い邸宅はあったそうなのだが、彼の父親のメガエリスが「実家に近い場所でなければ独立を認めぬ」と親馬鹿を発揮してここに決まったとのこと。
ルシウス本人は派手さや豪華さにこだわらないアケロニア貴族らしい質実剛健派なので、特に問題はないとのこと。
彼の持つ爵位の子爵位は下級貴族でまだ独身のため、社交パーティーを主催する必要がないことも幸いだった。
その代わり、他家の主催パーティーやお茶会にはそれなりの頻度で招かれているのだが。
建物の一階は厨房と食堂、応接室、浴室や洗濯場。
基本的に掃除や洗濯は週に二度、本家の掃除婦が通いで行う。
それで足りない場合はユキレラがやる。
二階は三部屋しかなく、一番大きな部屋はルシウスの部屋で執務室とベッドルームに分かれている。
もう一部屋をユキレラが貰い受けた。
残る一部屋は書庫と倉庫を兼ねた物置きで、よくわからない雑多なものが詰め込まれている。
そんな感じの建物だったので、ルシウスが仕事をしているときはユキレラは執務室で補助しながら業務を覚え、それ以外のときは一階の食堂でお茶を楽しみながらおしゃべりしていたわけだ。
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