ど田舎者、お貴族様の一族になる(※ただし末端です)
ユキレラはルシウスの父、前リースト伯爵メガエリスの勧めで、人物鑑定を受けることになった。
この世界は、剣と魔法があり、ステータス・オープンと唱えると自分のステータスが読める世界だ。
だが読めるステータスは自分のものだけで、名前や出自、基本ステータス値と基本スキルの把握に留まる。
それも魔力持ちでなければ不可能だ。
詳細を知るには、専門の鑑定スキルの持ち主から鑑定。受ける必要がある。
鑑定スキルは主に人物鑑定、物品鑑定、魔力鑑定がある。
本人の出自や、どのようなスキルや適性を持つかは、人物鑑定で読み取ることが可能だった。
馬車に揺られてやってきたのは王立学園の高等部、学長室だった。
「あらっ、可愛い子が来たわねえ!」
ユキレラたちを出迎えてくれた墨色の礼装の学園長ライノール伯爵エルフィンは、エルフの血を引くハーフエルフだそうだ。
白い肌と髪に、ブルーグリーンの鮮やかな瞳のとてもきれいな人だ。
首の後ろでひとつにまとめている髪が長いこともあって、一見すると中性寄りのお姉さんにも見える。
だが声は立派な成人男子のものだ。
ちなみに、オネエ口調だがおね兄さんではなく、れっきとした男の人だそう。
そして、人物鑑定スキルの特級ランクの持ち主である。
彼がユキレラの詳細鑑定を行なってくれるようだ。
「外見から一族の血が入ってることは確実なんですけど、鑑定してちゃんとリースト伯爵家の血筋だって証明しろって言われました。出自の履歴を確認してもらえますか?」
既に先触れを出して、用件だけは伝えてあった。
改めて、ルシウスが来訪の目的を告げている。
「それはいいけど、鑑定した後でその子、どうするの? そこまでリースト伯爵家特有の容貌が出てると、普通のお仕事とか絶対無理よ?」
「ちゃんとお世話します! 使い物になるまで教え込みますもん」
「最後まで面倒見られるの? 在学中にあなたがよく拾ってきた仔犬や仔猫や野良フェンリルとは訳が違うのよ?」
なぜか捨てられた仔犬と同レベルの扱いを受けてて、ユキレラはちょっとだけ泣きたくなった。
そんで野良フェンリルなんか拾ってきてたんですかルシウス様。
あれ指定魔物じゃん。
それで実際、ユキレラにはちゃんとリースト一族の血が入っていた。
分家のひとつ、男爵家の係累の子孫だが、4代前なので現在のリースト男爵家とは縁遠い。
その後、エルフィン学園長のもとを辞してすぐまたリースト伯爵家に戻り、ルシウスの父の前伯爵様に鑑定結果を報告した。
そして後日、リースト伯爵家のお抱え弁護士立ち会いのもと、前当主メガエリスの後見でユキレラはリースト一族の一員に迎えられることになるのである。
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