鈴音

からんころん

―いつからだろう、いつもこうだったのだろうか。私は手にもつ武器を握りなおす


空は曇天、青い空を見た事はない。チリン、チリンと遠くから音が響く。時間だ


ぽぉん、と、間の抜ける爆発音、続いて空を裂く破裂音。誰かが発砲した音だ。恐らく敵の攻撃だろう


私たちはいつでもそうだった。銃を握り、鈴の音と、爆発音とが鳴れば人が死ぬ、建物が壊れる、世界の形が歪になっていく


からんころん、薬莢が飛び、転がる音。この戦場で唯一落ち着く音、転がる死体の懐を漁り、血まみれになっても、この音が私を癒してくれる


ぱぁん、からんころん、ぱぁん、からんころん。遠くない、でも私には届かない。音はすぐに止んだ、誰かがまた死んだらしい


目の前に敵を見つける。見つかっていない。サイトを覗く。落ち着かない心臓、乱れる呼吸、それに合わせて上下する銃身。引金に指をかける、弾が出ない


カチッ、と、引鉄を引く音だけが響く。気付かれた


ビルから剥がれた看板と、骨だけの車と、死体とが並んでいる。助かった、すぐに転がりこむ


ぱぁん、ぱぁん、からんころん。撃たれた、でも当たっていない。落ち着け、大丈夫


マガジンを抜く、弾は十分、スライドを引く、詰まっていた弾が飛ぶ、マガジンを挿して、リロードして、構える。敵の攻撃に備える


一歩、二歩、三歩。足音が止まる。まだ飛び出さない。じっと、待つ。まだ、まだ、まだ


物陰から飛び出した影、敵だ。引金に指をかけている。撃たれる、いや、撃たれた


運が良かった、顔の横を掠める。相手の目線は右、体は左に。すぐには立ち上がらない。相手の足にタックルをする


足を掴み、そのまま押し倒す。右足を地面から離し、股間に体を押し付ける。嫌な感触には目を背ける。姿勢を崩し、相手は倒れた


グラウンドに持ち込む、腰にはナイフ、すぐに奪い取る。体を起こして殴りかかってくる。やらせない。ジャムは治した。そのまま頭に向けて撃つ。僅かに逸れた。頭皮を掠る


右の頬を殴られる。痛みは感じるが、問題は無い。相手の銃はどこへ?右斜め前方に転がっていた。よし


そのままトドメを指す。相手の腹に倒れて抱きつき、首にナイフを突き刺す。捻る。吹き出す血で服と顔が汚れる。気にしない


ぱぁん、からんころん、薬莢が飛ぶ音、敵?味方?


ビクンと飛び跳ね、その命を零したのは、敵の方だった。よかった、味方だ


チリン、チリンと鈴の音が鳴る。今度は、喇叭の音が鳴り響く。終わりの時間だ


拠点に帰って、報告をする


血塗れの顔をお湯で洗い流し、服を洗濯係に、衛生兵に殴られたところの治療をしてもらい、部屋に戻る


銃をバラバラにする。マガジンから弾を抜き、本体からも弾を抜き、それぞれパーツの点検をする。問題は無い


弾の点検、補充をし、回収した薬莢を袋に入れる。そして組み直した銃のロックをかける


始まりの時間はいつも朝早く、今は空が赤に染まり、暗くなりつつある時間。ご飯の時間だ


食堂に向かう。道中で敵から奪った装備と薬莢を装備係に預ける。ついでに、ナイフの整備を頼んでおく。気持ちばかりのお金も渡して


中途半端に温く、無駄に塩辛いスープと、固くてパサパサするパンを頬張る。美味しくはない


食べている時、放送がかかる。今日の結果だ。敵が12、味方が14。こちらの方が多く殺した。これで48戦36勝12敗


あと4回勝てば、戦争は終わる。我々の勝利で


あと4日、生き残れるかわからない。それでも、美味しいご飯を食べるために、薬莢の音を聴きに、響かせに行く

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鈴音 @mesolem

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