第25話 【閑話】 親子

株主総会の件が終わり、一段落がついたわ。


翼は凄いわね、もう私に家族へのコンプレックスは無いわ。


あれから、暫くして私たちはタワーマンションに移り住んだのよ。


翼ったら、当初は六本木にある有名なマンションを買おうとしたのよ、流石に分不相応よ。


「あそこは維持費が凄く高いから辞めよう」


そう言わなければ、即金で買いそうだったわ。


買う理由は私の為だけなんだもの。


翼に聞くと『私が傍にいるなら何処でも良い』みたいだし、勿体ないわ。


結局、良く話しあって、遊園地がすぐ傍にあり、区役所も近くにあり、治安が良い場所のマンションを買っの。


価格は2億8千万、放って置いたら10億よ。


此処でも、高いと思うけど、管理費が意外に安いので此処に決めたのよ。


ちなみに白百合製薬の株はもう既に全部手放したみたい。


『京子のトラウマが治ったからもう必要も無いよ』だって。


此処に住んでから暫くして、お父様から、小包が届いたのよ。


小包には綺麗な陶器の時計があり、お父様の自筆で「結婚おめでとう」と書いてあったわ。


それから暫くして秘書が1千万のお祝い金を持ってきたわ。



「高広様からの結婚の祝い金です!お嬢様、最近では高広様は何時もお嬢様の事ばかり話しています」


「そう、ありがとう」



嬉しけど、なんだか複雑だわ。




◆◆◆


翼と話し合ってお返しを買いに来たのよ。


お父様が欲しい時計は解っているわ。


かなり高額だがそれはあったの。


サンジェルマンロタックスオイルスター これはロタックスの中でも珍しい文字盤で凄く変わっているの。


数が少なく売りに出たら高額。


この時計を持つのが夢だと言っていたから丁度良いんだけど、恐ろしく高いのよ。


だけど、翼は、『その位なら大した事無いよ』だって。


通常は4500万の相場だが、足元を見られて5000万だったけど即金で買ったわ。


翼がね。



そして、結婚祝いのお返しとして送ったの。


ちなみに、お母さまとお兄さま、お姉さまからは届いて無いから何も送らなかったわ。



暫くしたら、お父さまからお礼の電話が掛かってきた。


「京子、お義父さんから電話だよ」


「どうしたのお父さん?」


「この時計、ありがとう、一生大切にする」



横で聞いていた翼が複雑な顔をしているわね。



「それね、翼と一緒に探したんだ..結構見つけるのに苦労したんだよ」



普通に話せるわ。


もう劣等感は無くなったみたいだわ。


「そうか、それじゃ翼くんにも、お礼を言わないとな代わってくれないか?」


「お義父さん、お久しぶりです」


「こちらこそ、この間は失礼した..」


「いえ、こちらこそ目上の方なのに高広くんと呼んで申し訳ありませんでした」


「あの場合はこちらが礼を失したんだから仕方ないさ」



翼も、うん普通に話しているわ。


良かったわ。



それからも、ちょくちょく連絡がありお父さまとは偶には食事を一緒にする間になったの。


だけど、他の家族からは連絡がまだ来ないのよね。



◆◆◆





それから暫くして、お母さまから連絡があったのよ。


「助けて頂戴!借金が溜まってしまってどうしようも無いの!このままだと私終わってしまうわ」


かなり困っているみたいだったわ。


だけど、翼が横にきてスピーカーフォンにしたの。


「僕たちより優秀な百合子さんがいるでしょう?」


「そうだわ、百合子姉さんにどうにかして貰えば良いじゃない?」


「それが、東吾も百合子も助けてくれないのよ!このままだと私、何されるか解らないわ」


どうしよう、悩んだ末、私は翼にお願いした。



「翼、お願い、助けてあげて」


「京子が言うなら良いけど!条件付きにします」



翼は、助ける条件として、お義父さんに一緒に話すという条件をつけたわ。


「そんな」


「大丈夫ですよ、お義父さんに話すだけです!それでお義父さんが助けてくれるなら、それまで、もし助けてくれないなら、僕たちが助けますから」



「大丈夫よ、お母さん」





その日の夜に二人は家に来た。


お母さんはまだお父さんに事情を話していないみたいだわ。


お母さんが事情を話すとお父さんが怒りだしたわ。



「お前は何馬鹿な事しているんだ、嫁いだ娘に迷惑を掛けるなんて」



「ごめんなさい、貴方」


「それで幾ら、借金したんだ!仕方ない俺が出す!その代わり二度と京子に恥をかかせるな」


「解ったわ!でも貴方」


「幾らだ、お前がそんなしおらしい顔をしているんだ500万か1000万か? 出してやる!但しもう夜遊びは許さないからな、良いな!」


「それが..」


「幾らなんだ!」


「3億6千万」


「何だと本気で言っているのか? そんな金直ぐには用意出来んぞ!何に使ったんだ」


「知らなかったのブラックダイヤモンドというお酒が1瓶3000万もするなんて」



ネットで翼が調べたんだけど、通常は1本300万位。


だがホストクラブ相場なら3000万は普通みたいだわ。



「翼、払ってあげようよ!どうにかなるわよね」


「翼くん、京子払う必要は無い..こんな白百合の面汚しの為にそんなお金なんか」



「お父さん、だけど私は払ってあげたい、居場所がなくなる辛さは良く解るからね。その代わりこの話は終わりにしてあげて」


「良いのか? そんな大金.翼くんはどうなんだ」


「仕方ないですね!京子を産んで貰ったし、結婚の保証人になってくれた。まぁ今ある現金全部かき集めればどうにかなるでしょう」



「本当...京子、翼さん...ありがとう」



「京子、翼くん、済まない...本当に迷惑かけて...」


「任せて下さい」


翼に任せれば大丈夫よね。


◆◆◆



僕は次の日、現金を用意して待ち合わせ場所に翼と一緒に行ったも。


お母さんだけでなく、お父さんも居た。


一緒にホストクラブに行ったのよ。


お金を払うと言ったら急に対応が優しくなったわね。


あとは翼に丸投げで大丈夫よね。



「また、宜しくおねがいしますね..」



「もう二度と来ません...コリゴリです」


「そう言わないで」



「お金を払って領収書も貰ったから終わりで良いでしょう? これはちゃんと税申告しますから気を付けてくださいね!」



「そう? 借金はこれで終わりだけど?呼び込むのは俺らの自由でしょう?」



「あのさぁ、今回は面倒くさいから、お金払ったけどさ、.次くるようなら、殺すよ、マジで全員!」


翼を怒らせたわね。


翼が言っていたんだけど、人造勇者が本気で殺気を出すと、森の魔獣ですら襲ってこないそうよ。


翼はそこ迄出来ない見たいだけど、それでも人間相手に放つと体が震える位の事は起きるらしいわ。


「だんまりですか? なら今殺しちゃいますかね?ついでにその自慢の顔の鼻を削いで、目を潰しちゃいましょうか?」


「あああああああっ...しない、何もしない...お金も返します...だから殺さないで...」


「あああっ許して下さい」



「お金は良いですよ!払います!だけどまた絡んでくるなら、今の冗談が本当になります」



「解った!俺らはもう構わない!だから帰ってくれないか..」



『あれは、本当に人を殺す人間だ..多分逆らった瞬間に本当に鼻が無くなったかも知れない...もう二度と関わらない』


『死にたくないなら...関わっちゃいけない』



普通の人間じゃこうなるわね。



「聞こえてますよ?約束破ったら...嫌ですよ...それじゃ帰りましょう」



「「......」」


◆◆◆



「流石は翼、お芝居が美味いわね」


こうでも言わないと、不味いわ。


翼なら話を合わせてくれるよね。


「ははは、バレました? ああでもしないと又関わってくるでしょうからね」



「そうか、お芝居か大したもんだ...」



「凄いわ、お母さん本気にしちゃったわ」




◆◆◆



「それで、お義母さんなんで此処にいるんですか?」


「何でお母さんがいるのよ」



「良いじゃない、お母さん外に出掛けるとお父さんに怒られるから此処しかいけないのよ」



「私達、新婚なのよ? 余り邪魔しないで! 姉さんか兄さんの所に行けばよいでしょう」


「あんな子達、子供じゃないわ...困った時には助けてくれないんだから..私の娘は貴方だけよ」


「そんな事言われても許せないわ」


本当にこんな時ばかり、全くもう。


「解かっているわ..だからこうして足を運んでいるんじゃない...それに今日はお父さんも後でくるわ」



最近、私の両親が入り浸っているのよね。


今日もこれから一緒に食事をするって勝手に決めているし...


お父さんも来たわ。


家族と仲直り出来たのは嬉しいけど、2人の時間が減るのは嫌なのよ。



「もう、新婚なのよ? いい加減にして」


「親子なんだからいいじゃないか? なっ翼くん」


「そうよ親子なんですもの..良いじゃない」



二人っきりも良いけど...これはこれで良いのかも...


だって、翼も嬉しそうだからね。



「そうですね、もう少し日数を減らして貰いたいですがこれはこれで良いですね」


翼は4人分のステーキを焼きながら笑顔で私を見つめてきた。




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