第20話 呼び名


「そういえば、私明日から働きに行かないといけないのよ!」


「ご主人様の勤め先から電話が掛かってきて会社が大変な事になっているから見合わせて欲しいと連絡がありました!」


「そうだったの?」


「はい、伝えるのが遅れてすみません」


「あのね...今思ったんだけど、そろそろご主人様って言うのをやめない?」


「どうしてですか?」


「結婚したじゃない? それなのにご主人様って言うのは可笑しいと思うのよ! どっちかと言うと私が奥さんなんだからご主人様って私が呼ぶのが正しいと思うのよ」


「そうですね、そうしたらご主人様は何て呼んで欲しいですか?」


「そうね...京子って呼んで欲しいわ」


「京子様、こんな感じですか?」


「様も要らないわ」


「京子...なんだか呼びづらいですが..」


「ふふふっ、頑張って慣れてね!」


「解りました」


翼が珍しく困った顔をしてたいるわね。


何時もドキドキしっぱなしだったんだから、たまにはいいわよね!




◆◆◆




そして僕はまた戸籍屋に来ている。


悪い事をする窓口は一つだけで充分だ。



「また、何か良い情報か?そうだ、これ僅かだがこの間の謝礼だ!」



「謝礼?」


「例の工場の情報だ!あんたの言う通りだった、まるで子供の様に社長がなっていたぞ」


「そうですか.?それで」


「あん? ああっ!『会社ごとただ同然で譲る契約をさせてぶんどり、ついでに架空の借金を負わせて家から何から全部貰った』って言っていたな」


「役に立ったなら頂こうか」



札束3つ300万の報酬だ。


これはもうあの会社は終わったな。



「それで、今度は何だ?」


「大した情報じゃないが、大手企業の婦人がお忍びで派手に遊んでいるらしい」


そう、彼奴は身分を偽って遊んでいる。


周りに知られたら、まぁ何かしら問題が起きるだろう。


「それはそれは、それで今回の謝礼は!」


「別に要らないな!そんな大した情報じゃないだろう?」


「そうか、なら好意に甘えようだが、前回と同じで良い話だったらまた謝礼を払おう」


案外、義理堅いんだな。



「本気か?悪いな」


「製薬会社の社長夫人が遊び歩いているだと?それは案外使える情報だぜ!ホストクラブと組んで借金漬にしても良いし、上場企業の社長の旦那が居るから醜聞を恐れ搾り取れる可能性も高い!嵌めるなら、未成年でも抱かせれば...恐喝し放題だ。簡単に考えてこれ位は浮かぶぜ!他にも「製薬会社」と言うのは利用のしがいがありそうだ...まぁ俺は専門外だが、案外貴重な情報だぜ」


「そうか?」


「貴重な情報だ、また何かあったら宜しくな」




憂さ晴らしはこれ位で良いだろう。


あの女は何もしないでも身を亡ぼすタイプだ。


尤も、多分、白百合の誰かがケツを拭くから、大した事にはならないだろうけどな、まぁ良いや。



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