第16話 好きという気持ち

この部屋に居るのもあと3日間と考えると感慨深いわね。


「どうかされたのですか? ご主人様!」


「ここ暫く、まるでジェットコースターみたいだなと思ってね」


「そうですか?」


「そうよ、良い意味で何が何だか解らないわよ?」


「ご主人様が良いならそれで良いと思いますよ!」



ご主人様か...


ご主人様って言われているけど、私って翼に何もしてあげていない気がするわ。


「ねぇ、翼って欲しい物は無いの?」


「欲しい物ですか? 別にないですね、ですがしいて言うならご主人様ですか」


「わわわわわわ 私っ!」


「はい、僕にとってご主人様以上に欲しい物も好きな人もいません」



覚悟を決めるべきだわね...


翼は絶対に私を裏切らない...


生涯傍にいてくれて...


これでもかと尽くしくれる..


これ以上無い位に愛されているのも解かる。



「そう、解ったわ!シャワー浴びてくる」


顔は、うん、自分で言うのもなんだけど、そこそこ可愛いわ。


だけど、体は貧相だし胸も無いし、チビだから中学生にすら間違えらた事もあるわ。


こんな、物で良いなら、翼が欲しいなら、あげるべきだ。


だって、ご主人様何て呼ばれているけど、私は翼になにもあげていないんだから..


私は念入りに体を洗ったわ。



「ふぅ、気持ち良かったわ、翼も早くシャワー浴びてきなさい」


「はい、ご主人様」



翼はシャワーを浴びに行ったわね。


下着はこれで良いかな?私の体型じゃ余りセクシーなのは似合わないし持っていない。


もう少し大人っぽいのも買っておくべきだったわ。


結局、迷った末、私は ピンクのブラにピンクの下着、同じくピンクのキャミソールを選んだ。



恥ずかしいから、電気を消して、先に布団に入ったわ。


翼は自分からは多分何もしないし、してこないと思うのよね。


だから、私から誘う必要があると思うの


私は男性と付き合った事が無いわ。


キスどころか手すら握った事も無い。


どうして良いか解らないわ。



「ご主人様..電気消してどうしたんですか?」



私は黙って、自分の布団の横をポンポンと叩いた。



言葉がでない私にはこれで精一杯だ。



「ご主人様?」



「翼、私を好きにして良いわ..」


顔が真っ赤になり、心臓がこれでもかって位早くなる。



翼が布団に入ってきた。



どうしよう? 体が震えてきた。


翼の唇が私の唇に触れた。


軽いキスだ..


これは私のファーストキス...


体の震えがさらに増した..翼が好き..本当に好き..だけど...少し怖い..


だけど、翼に喜んで貰えるなら、幾らでも我慢できる。



「もっと、好きにして良いわ..」


口を震わせながらなんとか言えたの。



「ご主人様、無理しなくて良いですよ..」


「無理なんてしてないわ」


「だけど、体が震えていますよ」



「仕方ないじゃない、こんな経験した事ないんだから!」


「だったら無理しないで下さい」



「嫌なのよ、翼は私になんでもくれるわ..今日買ってくれた物だってそうだわ、多分私が死ぬ程頑張ったって何年も貯金しても買えないのよ」


「気にする必要なんて無いんです。僕はご主人様が笑ってくれればそれが幸せなんですから」


「嫌なのよ、私だって翼に喜んで貰いたいもの! だけど、翼は私しか欲しく無いんでしょう!だったらこれしかあげられるものはないわ」


「僕はご主人様に沢山の物を貰っていますよ」


「だけど、それ以上に沢山の物を貰い過ぎているの、もし私がもう少し大人なら結婚だってしてあげるわ、だけど、今の私じゃ、こんなものしか与えられないじゃない..だから、貰ってよ!これしかあげられないんだから」



「僕はこれで充分なんです!愛されているだけで嬉しいんですから。だけど、それじゃ納得してくれないんなら、そうだ、ご主人様! だったら僕と結婚してくれませんか?」


「出来ないわ」


「どうしてですか? 僕の事は嫌いですか?」


「好きよ、大好き、これでもかって位大好きだわ!だけど、私は16歳なの、未成年なのよ!無理なのよ」


「それでも、もし結婚出来るなら、お嫁さんになってくれますか?」


「翼が良いなら、してあげるわ」


「それじゃ、僕と結婚して下さい」


「いいわ、結婚出来るようになったら、翼と結婚する..こんな口約束でいいの」


「はい、それが一番、僕が欲しい物ですから」



翼は優しいわ..本当に私を大切にしてくれているのが解る。


だけど、これで良いのかな?


結局、私は口約束だけで何もあげていないじゃない..


翼が私が欲しいっていうなら、死ぬまで一緒に居てあげる。


そういう気持ちでいる。


それしか無いのかな..


だけど、これって結局は、私が一方的に貰っているだけだわ。


優し過ぎるのも考えすぎよ。



◆◆◆



良かった、ご主人様が結婚してくれる。


これは、僕たち人造勇者にとって一番欲しい物だ。


人造勇者はご主人様の物だ。


そして相手に拒まれない限り生涯を共にしなくてはならない。


自分の全てはご主人様の為にある。


だが、主人にとって人造勇者が全てでない場合もある。


例えば、主人が結婚しても仕える場合だ、これはこの世の地獄だ。


誰よりも愛し、誰よりも大切な人が他人の物になるのだから。


多分、僕はこの辺りにも欠陥があるのかも知れない。


他の人造勇者以上に独占欲が強いのかもしれない。


ご主人様が他の者を好きになる、そう考えると凄く胸が苦しくなる..


他の人造勇者の様に 主人の愛が他に移っても仕える事なんて僕には出来ないと思う。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る