第13話 守る

白百合京子か、飛んで火にいる夏の虫だな。


体は胸も無いし好みじゃ無いが顔だけは良かったな!


保証人も無し、かも求人募集の見方も解らない馬鹿女だ。


うちは日勤で時給1000円だ。


だから、夜間働くなら25%増しの1250円、これが正規の時給。


そんな事も解からずに、時給980円で納得していた。


つまり、此奴は馬鹿なのか、訳ありの女だ。


こういう奴は何をしても訴えない。


訴えると困る事が多いから大抵は泣き寝入りする。


保証人が居ないという事は頼る相手が居ないという事だ。


従業員に徹底的に虐めさせ、助け船を出して僅かなお金で愛人にしても良い。


仕事で失敗をさせて借金漬けにして奴隷にするのも良い。


それとも監禁して犯すか!泣きつくとこが無いから案外そのまま手元に置けるかもしれないな。


いずれにしても、俺の物になるのは時間の問題だろう。



◆◆◆




『此奴、こんな事を考えていたのか?』




ご主人様がもうじき働きに出る。


万が一にも大変な目に遭うといけないから、どんな会社か調べたら、この会社の社長が婦女暴行で捕まった事件があった。


その他にも労働基準法を無視したり、賃金未払い等、とんでもない会社だった。



だから、念の為、この会社の社長の頭の中をちょっと覗いたら、とんでもない奴だった。



こういう汚い部分をご主人様に見せないのもパートナーの仕事だ。


だから、相手の人間の心を覗く能力も僕たちにはある。


最も廃棄品の僕は表層しか読み取れない。


探索に優れた人造勇者なら、心にダイブして深層心理まで全部読み取れる。


やっぱり、僕はクズ、出来損ないなんだ。




思わず頭に来て周りを見たら人が居なかったから、此奴当身で気絶させてしまったが、どうしようか?


僕の居た世界なら殺して捨ててしまえば問題無いが、この世界だとそれは不味い。


巣穴に放り込みゴブリンのエサにする事も出来ない。



上手く行くか解らないが、僕は此奴の頭を掴み振動させた。


何をしているのかと言うと脳を壊している。


外傷が残らないように脳を壊す、そう言う技がある。


素早く脳を内側から頭蓋骨に打ち付けるように振動させる。


すると、これで障害が起きる。



これは 敵対する相手だが、命を奪ってはいけない相手に行う技だ。


例えば、


取引相手が頭脳派の場合、居なくなってしまったら取引そのものが無くなってしまう。


だが、優秀な場合はその交渉が不利になる。


こんな時にその優秀な人間を使えなくすれば良い、生きているから契約は続行、そしてその代理人との取引きになるから楽に話を進める事が出来る。



本当に凄い人造勇者なら、壊し方を調整して、色々出来るが、僕は失敗作、壊す事しか出来ない。


まぁ、どうなっても、ご主人様の敵だ!



死ななければ、それで良い。


頭を掴み、高速でシェイクさせた。



鼻から出血しているから、こんな物で良いか..



確認の為に様子を見るか?



揺り動かし起こしてみた。



「こんな所で寝ていると風邪ひきますよ」



「うん、あれ僕は何でこんな所で寝ているんだろう...所でお兄ちゃんは誰?」



お兄ちゃん? これは幼児退行しているのか...うん、壊れた。



「いや、君が此処で寝ていたから風邪を引くといけないから起こしたんだけど大丈夫?」



「うん、大丈夫だよ」


「良かった、所で僕のお名前は? お歳は幾つかな?」



「うーんとね!ゆうき、5しゃい」


「偉いね、ゆうきくん、じゃぁこれ上げるからお菓子でも買いな、お兄ちゃんはもう帰るね」


「100円も..ありがとう」


「じゃぁねゆうきくん」


「うん、バイバイ」



これで多分、大丈夫だと思う。



だが念には念を入れおこう。




帰りに、戸籍屋に会いに行った。


「もしかして、何か儲け話ですか?」


「貴方に直接関係ないが、PCテクニカ二クスという会社の社長がいま、脳障害を起こしている! 多分、今なら誰でも簡単に騙せる」


「俺に関係ないが、なかなかの情報だな、それは俺の顧客に流したら喜ばれる!それで幾らだ」


「そうだな、ここのコーヒー代を持ってくれれば良いや」


「安すぎないか?」


「儲けるつもりが無いから、先に話したんだ」


「そうか、まぁ、がせじゃ無かったら、少しは謝礼位はさせて貰う」


「それじゃ」


「ああっ」



これでもう終わりだ。


5歳の頭じゃ危ない奴から会社は守れないだろうから...




ご主人様にお土産を買って帰ろう..



「お帰りなさい、翼!」


「ただいま、ご主人様、今日はお土産を買ってきました」



「何を買ってきたの?」


「お寿司です」


「お寿司良いわね!だけど、これじゃお小遣い直ぐに無くなっちゃうわよ!」


「大丈夫ですよ」


「そう?まぁ無くなったら、またあげるから良いわ」


「ありがとうございます」


余裕はあるんだけどね。



「それで、ご主人様、明日デートしたいんですが受けて貰えますか?」


「ででででデート..いきなりね..いいわ、うん受けてあげる」


顔が、凄く真っ赤になっている、凄く可愛い。


「ありがとうございます」


「それで、何処に行くの?」


「それはお愉しみにしててください」


「解ったわ」




◆◆◆



デートか...


この前のは、ちょっと違う気がする..うん。



明日は本物のデート..


翼がデートと言ったんだから本物のデートよね...


凄く楽しみだわ..今日は眠れないと思うわね..


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