第11話 三等で正解

ご主人様は僕に全額くれると言ったけど...僕はこんなお金は要らない。



「これは翼のお金だから、大切に使いなさい」


「当たったら全部ご主人様にあげる約束でしたから、これは全部ご主人様の物です」


「だけど、これは大金だわ」


そうだ、次に何かする時にお金は必要..


「このくじはご主人様に渡すから換金して、ご主人様の口座に入れて下さい」


「それじゃ、翼の物じゃないじゃない!」


「これは2人のお金、それで良いんじゃないですか!」


「だけど、翼...」


「そうだ、だけど、日常品を買いたいから、その中から1万円だけ下さい」


「あのね、だけど、これは、翼のものだわ」


「僕の欲しい物はご主人様からしか頂けません」


「何、それ!」


「ご主人様の笑顔を見る事をはじめ、傍に居られるのが凄く嬉しいんです!ご主人様は僕を捨てたりしませんよね?」


「そんな事しないわ!馬鹿じゃ無いの!」


「なら、一緒で良いですよね」



『嘘、あの女、あんなイケメンから告白受けているの?』


『生活費を入れる話かな..同棲しているのかな..良いな』



渋々ながらご主人様はくじを受け取ってくれた。




◆◆◆



「解ったわ...翼が良いなら良いわ、本当に強情なんだから!だけどこの金額は翼のお金、必要になったら言いなさい、良いわね!」


「はい」



これって、まるで同棲か結婚みたいじゃない?


『これからは口座を一緒にしよう!』


そう言われているのも同じじゃない!


顔が赤くなっちゃうわ。



「どうかしましたか?」



「別になんでも無いわよ」



くじの換金時間が終わってしまっていたので、今日は家計費から立て替えてちょっと良いお肉を買う事にしたわ。


翼ったら、凄く嬉しそうね。


凄くニコニコしている。



そう言えば、誰かにご飯をつくるなんて、翼が初めてじゃない。


ただ、肉をフライパンで焼いているだけだけど、翼は待ち遠しそうにしているわね。


またパソコンを見ているわ...本当に知識を得るのがすきなのね。



◆◆◆


今、ご主人様が肉を焼いてくれている。


その間、僕はパソコンでドラゴンくじについて調べてみた。


やっぱり、3等にして良かった。


高額のくじの払い戻しは銀行でしか出来なく、しかも50万円以上の高額当選は未成年には払い戻せない。


あの時、感じた危機感はこれだったんだ。


勇者という者は直感に優れていないといけない。


優れた勇者は直感で危機を乗り越える。


例えば、この道を進んではいけない、そういう事が確実に解る。


人造勇者にもかなり劣化してはいるが、そういった能力もある。


但し、不良品、廃棄された僕は、この危機管理能力が1/3しか働かない。


しかも、何か可笑しいという位しか感じる事が出来ない。


今回の場合は直感が働いて良かったとしか思えないな。


1等を取っていたら、家族と仲が悪いご主人様を困らせる事になったかも知れない。



これで方針が決まった...暫くはくじで50万円以下の当選と投資を繰り返す。


資金が溜まったら、戸籍を裏で購入する。


そこから先はまた後で考えれば良いだろう。




「翼、お肉が焼けたわよ」



「うわぁ 凄く美味しそう」


お肉もそうだけど、ご主人様の笑顔...



うん、考えられない位幸せだ...


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