第10話 小さな幸せ

「翼ぁ~株で2万円も稼ぐなんて凄いじゃない!」



あの中には2万円も無かったはずだわ。


それが4万円になっていた。


1日で倍にする何てそう簡単な事じゃないはずだわ。



「たまたまですよ」


『未来が見える事はまだ伝え無い方がいいかも知れない。期待させちゃいけないし』



「そんな訳無いじゃない! まぁ良いわ、やっぱり貴方凄いのね」


「そんな事言われたの初めてです!有難うございます」



優秀なんて物じゃ無いわ。


文字が解らない状態から 投資?


しかも黒字なんて、翼が優秀じゃ無いなら世の中に優秀人なんていないわ。



「所で、ご主人様、2万円ってどの位の価値があるんですか?」


「そうね、3日間分の生活費って所かしら?」


「それじゃ、もっとお金を稼がないと駄目ですね」


1日に2万円も稼げるなら充分優秀だわ。



◆◆◆


「さぁ翼出かけるわよ!」


「はい、ご主人様」


「翼、どこか行きたい所はある?」


「ご主人様が連れて行ってくれる所なら何処でも良いですよ!」


う~ん、どうしようかな?


私も、実は余り出かけた事無いのよね。


初めてのお出かけだから、近くで良いわね。


「そう、そうしたら今日は初めてのお出かけだから、近くを案内するわ」


翼は周りをキョロキョロと驚いた表情で見ているわね。


「凄いです!スーパーに、コンビニ、お店が僕が知っている物と全然違う...馬車じゃ無くて車、本当に凄いですね!インターネットで事前に知っていたけど、直接見ると全然違いますね...解ってはいましたが、僕が過ごしてきた世界より文明が数段進んでいます(前の世界ですら落ちこぼれの僕がこの世界で...何が出来るのかな)」


どうしたのかな?


はしゃいでいたと思ったら、急にしょぼんとしちゃって...


「どうしたの翼?」


「僕が過ごしてきた世界と全然違うから吃驚しちゃって」


「そう...そりゃそうだわね、此処は翼が居た世界からしたら異世界だもん」




『ねぇ、あの男の子俳優かな?』


『絶対にそうよ...しかし、凄く綺麗な男の子ね...プラチナブランドも綺麗』


《横に居るのが彼女かな?》


『違うでしょう? マネージャーかなんかじゃない?』


どうせ私なんか、翼と釣り合わないわ、言われなくても解っているわよ。



「ご主人様、手を繋ぎませんか?」


「えっ!」


「ネットで見たんです!仲良しはこうやって手を繋ぐんですよ!恋人繋ぎというそうです」


「翼がしたいなら良いわ」


気を使わせちゃったのかな?


でも凄く嬉しいわ。



「それじゃ行きましょうか、翼!」




『嘘、手を繋いだ、しかもなにあれ』


『何であんなチンチクリンがあんな良い男と付き合っているの?』


『信じられないわ』



「うん! やっぱり、ご主人様はこうでなくちゃ...悲しい顔も綺麗だけど、笑顔はその何倍も可愛いよ!」


「つ、翼、いきなり何を言うのよ...その、ありがとう」


べーだっ。


私は女たちに向かってあっかんベーをした。



◆◆◆


歩きどおしだったので少し休む事にしたんの。


近くの屋台でジュースとハンバーガーを買ってきたわ。


うんうん、凄く可愛らしい笑顔で食べるわね。


「これも凄く美味しいですね」


「そう? こんなのは普通の物よ、そのうちもっと美味しい物を食べさせてあげるわ」


「ありがとうございます」


こんな物で喜んでくれるならお安い御用だわ。


「良いのよ」


翼にとっては初めて見る世界だから、はしゃぎまくっているわね。



「あのご主人様、あれは何ですか? もしかして富くじみたいな物ですか?」


何処にでもある宝くじ売り場ね。


「あれは宝くじ売り場ね」


「宝くじってなんですか?」


「富くじと同じだけど、あそこで売っているのは『ドラゴンくじ』って言って、色々な種類があるけど、数字を選んで、当たると賞金が貰えるのよ」


「数字を当てるだけでお金が貰えるんですか? 本当に当てるだけで良いんですか?」


「そうよ」


「どの位の金額が貰えるんですか?」


「そうね、6つ全部の数字を順番を間違えずに当てたら、確か2億円貰えるって聞いたわ」


「そう、なんですか...凄いですね」


凄く興味がありそうね。


「何だったら、1枚買ってあげるわよ?」


「本当ですか?」


「うん、はい300円」


まぁ、当たらないと思うけど、凄く嬉しそうだから良いわ、この位。



◆◆◆



僕はご主人様からお金を貰ってドラゴンくじを買いに来た。


聞いた所、今日の18時30分、締め切りで抽選は19時からだそうだ。


今の時間は16時...だったら..使える。



「プルゴキネーション」


横のボードにやっぱり当たりの数字が貼られている。


全部当てて、1等いや、何か問題があるといけないから、今回は3等にしておこうかな?


それでも金額は376600円...これならご主人様も怪しまないし、うん暫く贅沢が出来る。



◆◆◆



「買ってきました、当たったら全部ご主人様にあげますね」


「そうね、だけど、宝くじは夢を買う物なのよ、まず当たらないわ」


「それじゃ万が一当たったら...ご主人様の買い物に行きましょう.」


「はいはい、もし当たっていたらね」


こういう所は凄く可愛いわね..だけど残念だわ、宝くじはまず当たらないのよ。


でも300円位でも当たったら一緒にアイスを食べるのも良いわね。



さっきから、宝くじを宝物のように持っているわね..


こういう子供っぽい所も素敵だわ。



今後の事を考えたらお金をあんまり使えない貧乏デート。


日常の生活の基盤を教えて、あとはただ見て歩くだけのウィンドウショッピング。


横に翼がいるだけで、それが凄く楽しい。


本当にそう思うわ。


だってどんな宝石よりも翼が輝いて見えるんだから。


もう夜ね。



「さてと、折角だから、さっき買った宝くじ売り場に抽選結果を見に行こうか?」


「はい」


まぁ、まず当たるわけないわ。


「あれ、数字が同じ うそ、5個目まで同じだわ、あと一個で、残念だわね、翼ハズレだわって、嘘.、えっと5個合っていたら3等じゃない、凄いわ当たっているわ」


「やりましたね、3等です」


「3等の賞金って幾らかしら、こういうのって1等だけが高額でそれ以外は案外低いのよ!嘘、3等でも37万6千600円」


「これで、暫くの生活費が稼げましてね」


「翼、貴方、もしかして幸運値が高かったり」


「それ、なんですか?」


「ううん、何でもないわ」


今迄、不幸だったのが嘘みたい..


翼は本当に..天使だわ。


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