第7話 拾ってくれたから..


「あと何日生きられるのかな?」


いい加減お腹もすいてきた...


ここには死体しかない、空を見たのは何時ぶりだろうか?


空ってこんなに青かったんだ..


お披露目まで進んで、パートナーを見つけられた人造勇者は美味しい物も食べられるんだって。


産まれてから今迄、チューブに入った流動食しか食べた事無いや...


僕は何も知らないままで死ぬんだな..


この施設の外の世界の事は本でしか知らない...


あと僅か、あと僅か数字が高ければ、外の世界に出られたのかも知れない。


そうしたら、僕にはどんな人生があったのかな?


綺麗な王女様に選ばれ結婚が出来たのかな?


白銀の鎧を来た騎士になれたのかな?


それとも宮廷魔術師?


勇者?


冒険者や賢者様に引き取られてその手伝い...なんでも良かった。


外の世界に行きたかったな...




「世界を司る6つの力よ運命に導かれし我がしもべを導きなさい」


何処からともなく声が聞こえる..


僕の近くの地面が光輝いた..


嘘だ、これは召喚魔法だ!


周りには僕以外は死体しかない..


僕で良いのかな?


僕しか居ないんだから僕で良いんだよね?


迷わず、光の魔法陣に飛び込んだんだ。


誰が呼んでくれたのかな?



光の先に僕が見たのは..背の低い女の子...この子が呼んでくれたんだ...ありがとう。


だけど、此処は何処なんだろうか?



「あんた誰なの!」


声が凄く可愛い...この人が僕のパートナーなんだそう思うとより一層そう思える。


だけど、僕には名前は無いんだ...どう答えて良いか解らないよ。




「聞こえてないの? あんた誰?」


「聞こえてはいるのですが...何て伝えれば良いのか解らないんだ」



ごめんなさい、僕は失敗作だから名前が無いんだ。



「何故? 名前も答えられないの?」



だって廃棄されたから名前そのものが無いんだもの。



「今の僕には名前はない...しいていうなら勇者に成れなかったクズです」


素直に答えるしかない...失望されたかな?


また捨てられちゃうのかな?





「クズ?、それはどういう事なの?」



まじまじと見つめてくる...説明するしかないない..


どうか捨てられませんように...初めて神様に祈った。



「僕は能力無いから、廃棄、捨てられたんです」



「そうなの?」



「はい、所でなんで僕はここに居るの...廃棄されて死ぬのを待っているだけだったのに」



「私が召喚したからよ!」


やっぱり召喚者だ...こんな僕を召喚してくれるなんて..



「そうなのですか? 貴方は大魔導士様..それで僕をどうしようというんですか?」



あの場所から召喚できるなんて絶対に凄い人だ。



「そうね、貴方を呼び出したのは魔導士ではないけど、私だわ!だったら貴方を私のものにしても良いのよね?」



良いに決まっている、廃棄された僕にはパートナーは居ないし、クズなんだから。



「廃棄されたクズ勇者ですから...」



「そう? だったら決めたわ、貴方は私の傍に居なさい...死ぬまでね!」



パートナーだ...夢にまで見たパートナー...もし、僕に能力があれば、お披露目の後に僕を獲得したご主人様から掛けられる筈だった言葉だ。



「良いんですか? 僕は能力が低い本当にクズですよ!」



クズなのに...廃棄勇者なのに..パートナーが出来た...だけど本当に僕で良いの?



「良いわ、出来る事をしてくれれば構わない!いいわね...もう一度言うわ!私に仕えなさい!」



良いんだ、僕で良いんだ。



「はい」


この人の為なら何でも出来る。


出来損ないのクズだけど...この人の為なら人殺しだって神殺しだって喜んで出来るよ...僕、うん。


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