第5話 すき焼きとネット
さて何から買おうかしら?
翼に似合う服、似合う服、一生懸命考えた結果、センスの無い私は、店員に丸投げしたわ。
だって私って服のセンスが余り無いから...うん、任せた方が無難ね。
「あのどの様な方の服なのですか?」
「そうね、凄くイケメンで可愛らしい感じかな?うんともかく凄い、美少年なの!」
「はぁ?それでサイズは解りますか?」
「計って来たわ!」
「あののお客さん...サイズじゃ無くて、全部紐で計って来たんですね!さっきからハァハァ言ってもしかして、走ってきたんですか?本当に彼氏が好きなんですね!いいわ、より本気で選んであげましょう!いきますよ、それじゃあ...これとこれ、あれはそれで、これはこれと併せて、これはこれで...」
目まぐるしく動くわね、この店員さん..
「凄く...早いわね...」
「これで、どうですか?」
うん、私が選ぶよりよっぽど良いわ...
「全部頂くわ!」
「はい有難うございます!全部で37650円になります」
結構いったわね...
だけど翼の為なら仕方ないわ。
「そうだ、下着もそのお願い」
「はい」
その後、他に、靴を三足買ったわ。
結構地味に財布に痛いわね。
後はご飯だけだわね。
あんな朝食で喜ぶなんて、凄く不憫だわ。
だったら、今日ぐらいは本当に美味しい物を食べさせてあげるわよ。
奮発してすき焼きの材料を買ったの。
お祝いよ、お祝い!二人が出会ったお祝いだもん。
一度位は良い筈よ...
「ただいま!」
「おかえりなさい、ご主人様!」
「あらっ もう挨拶を覚えたのね?随分早いわね!」
「はい、ずっとネットをして覚えました!」
あれ、スマホを渡した筈なのにパソコンがついているわ。
検索しても文字が読めないから何も解らない筈よね...なんで?
「翼ぁー、あの文字...」
「はい、法則を見ながら考えたら解るようになりました、スマホよりパソコンの方が調べやすいので使わせて頂きました」
「そう、凄いわね...」
これの何処が頭が悪いの?
日本語って凄く難しい筈よ!
それを半日でマスターしたの?
「そう、もっと頑張るのよ!」
本当は褒めて頭を撫でてあげたいのに、なんでこう私は上手く話せないのかしら?
「はい、頑張ります!それでご主人様はご主人様とお嬢様、どちらで呼ばれたいですか?」
何それ、どっちも捨てがたいわ...
「そうね、とりあえずはご主人様でいいわ!」
「はい!ご主人様、それでパソコンにこれが、入っていたのですが使っても良いですか?」
「株の取引きね...」
15才の時にお父様から、株の取引き口座を開設して貰った奴の残骸だわ。
『未成年でも自分で取引き出来る証券会社を選んだ、お前も白百合の家系なら増やしてみろ』
そう言われたのよね。
だけど、お兄さまやお姉さまはちゃんと増やせていったのに私だけがどんどん減っていったわ。
これも私に両親が失望した原因の一つ。
『お前は真面にお金の運用も出来ないのか?』
減る度に怒られ、お兄さまやお姉さまは褒められて、嫌な記憶しかないわ。
お兄様やお姉さまに聞いても、何時も嘘ばかり教えられて...もう殆どお金は入ってない筈。
嫌な思い出しかないわ。
「いいわ、自由にして、残高も少ないし無くなっても構わないからね」
「はい」
私はパスワードと必要な情報を翼に教えた。
さてと、きょうはご馳走だわ。
私はすき焼きを作り始めた。
翼は相変わらずパソコンに噛り付いている。
「翼ぁーご飯が出来たわよ!」
「有難うございます、ご主人様!」
「今日は奮発してすき焼きよ!凄く、美味しいわよ!」
「ありがとうございます、ご主人様! すき焼きって何ですか?」
「ご馳走よ!さぁ食べましょう!」
しかし、美味しそうに食べるわね...作り甲斐があるわ。
昨日の今日なのに、もう箸を完璧に使いこなせているし...
「どうかしましたか、ご主人様!」
「何でもない、さっさと食べなさい」
「はい」
「さてと、今日は貴方の服を買ってきたから、お風呂に入ってからパジャマに着替えなさいね」
「はい、だけど、お風呂の使い方が解りません」
えーとだったら私と一緒に...何を考えているのかしら私...
「ネットがあるでしょう? ちゃんと調べてから入りなさい、良いわね!」
「そうでした」
ネットが使えるようになって良かったわ...じゃなきゃ一緒に...それはそれで...馬鹿じゃ無いの私。
シャワーを浴びて綺麗になり、パジャマに着替えた翼は...はぁ凄すぎるわよ。
「どうかしましたか? ご主人様!」
どうかしましたかじゃないわ..なにこれ..人間離れしているわ。
どうみても、小説の主人公じゃない...ハリウッドスターも裸足で逃げ出すわよ。
「へぇー少しは綺麗になったじゃない!」
「ありがとうございます」
相変わらず、私は素直になれないわね。
「それじゃ、さっさと寝るわよ!」
「はい」
「何、毛布をとろうとしているのかしら? 一緒に寝るのよ...」
「えっ」
「昨日と違って、今日はちゃんと綺麗になったんだから良いわよ!ほら!」
「ありがとうございます」
あれっ、うわぁ凄く良い匂いがするじゃない...これ位いいわよね?
私は静かに翼と向き合った。
だけど、私、多分今日は眠れないわ...絶対。
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