第4話 はじめての朝

朝、目を覚ました。


私は凄く心配だったのよ。


凄く怖かったわ。


直ぐに私は横を見た。


うん...夢じゃなかった。


朝起きたら居ないんじゃないか?


余りの寂しさに見た夢なんじゃないか?


思わず、そう思ってしまった。


だけど、彼はそこに居た。


今迄の人生で唯一の私の成功。


何も手にする事が出来なかった私が唯一手に入れた存在。


それが横で静かに寝息を立てて寝ている。



名前を考えないとね! 母親が自分の子を愛おしく思う気持ちが良く解るわ...


クズって言っていたから...クスオが良いかな?


駄目ね、そんな適当なのは絶対に駄目だわ!


浮かんでは消し、浮かんでは消しを繰り返す。


駄目駄目、最高の名前を考えないと駄目なんだから。


1時間考え、ようやく私が思いついた名前は「翼」だった。


彼は廃棄されたと言っていたわ。


それは多分、私と同じ、いやもしかしたらそれ以上に底辺なのかも知れないわ!


だから、そこから一緒に羽ばたいていく存在...


何もない私が未来に進む大切なパートナー。


『翼に』


これが良いわ...翼、貴方は私と一緒に未来に羽ばたくのよ...



◆◆◆




まだ寝ているわね...


可愛らしい寝顔、何時までも見ていたくなるわ..


ただでさえ美少年なのに彼は私の努力が実った唯一の結果.なんだもん、本当に目の中に入れても痛くない位に可愛いわ。


普通、どんな美少年だろうとじっくり見れば、どこか欠点が見えてくるわよね。


召喚した私の贔屓目もあるのかも知れないけど、欠点なんて何処にもないわ。見れば見る程、愛おしさがこみ上げてくる。


これの何処が失敗作なの?


翼より美しい人間なんて、私は見た事が無いわ。


兄や姉?


あれは人工的な物...そう振舞っているだけだわ!


こんな風に美しいと思った事は無いわ。



「まだ寝ている」


多分、疲れているのね、今は好きなだけ寝てて良いわ。



さてと、今日は学校は休もう、翼の服に翼の靴も買わなきゃいけないし...生活用品も買わなくちゃいけないわね。


卒業だけ出来れば良いんだから...休んで良いわ。



「おはようございますご主人様!」


ようやく起きたのね...


「ご主人様を待たせるなんて最低よ!」


可笑しいわ、なにか優しい言葉を掛けようと思ったのに..なぜ憎まれ口しかでないのかしら?


「ごめんなさい、ご主人様、明日からからちゃんとします」


「別に良いわ!別に何かして貰う事も無いから..」


さてどうしようかしら?


そうね、まずはご飯ね。


「朝食にしましょう! といっても大した物はないけどね」


「はい」



あらかじめ、炊いていたご飯に、味付け海苔に卵、インスタントの味噌汁。


実に味気ない朝食ね。


1人で食べるつもりだったんだから仕方ないじゃない。



「こんなご飯初めてです」


「大した物じゃないわ、ほら良いから食べなさい!」


「はい」



私は箸だけど、翼にはフォークを用意したわ。


「あの、ご主人様、僕も同じのが良いです」


「そう、だけど難しいわよ?」


箸は外国人には使い辛いんだから。


「頑張ります」


「そう、なら頑張って」


あれ?危なっかしいけど...ちゃんと箸で食べているわ。




「ごちぞうさまでした」


「ごちそうさまでした」


あれれっ?しっかり挨拶できている..何でだろう!



「何で貴方は箸が使えて、ごちそうさままで言えるのよ!」


「ご主人様の真似をしました」


「そう...」


初めて見ただけで、出来る物じゃないわ。



凄く賢いわね...頭悪くないじゃない。




「それじゃ、私は買い物をしてくるわね」


一緒に行きたいけど、流石にこの恰好じゃ連れて歩けないわ。


靴も無いし、ボロ着のまま連れ歩くのは可哀想だわね。


「はい、それでご主人様、僕は何をしていれば良いでしょうか?」


「そうね」



あんな簡単に真似ができるなら インターネットの使い方を教えようかしら?出来たら御の字だわ。


色々教える事が省けるからね...



「それじゃちょっと良い?」


パソコンを立ち上げて見せた。


よくよく考えたら文字すら解らないのだからネットサーフィンも出来る訳が無い。



「これで色々調べるのですね」


「そうだけど、よく考えたら翼は文字が解らないわね..」



だったらスマホを渡そう。


どうせ、誰からも掛かって来ないし。


これなら、音声認識 CONTOROを使えば良いわ。


簡単に使い方を教えた。



「それじゃ行ってくるわね!」


「行ってらっしゃい」




外に出てから気づいたわ...音声で調べても、回答は文字だから意味無かったわ..


まぁ仕方ないわ、帰ったら一つ一つ教えていくしかないわね。




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