第2話 廃棄された僕
「Y-139 は廃棄だな..」
聞こえているよ...
「こんな役立たずに時間を掛ける訳にはいかない」
解かっている。
こうして僕はそのまま穴に捨てられた。
ここには人造的に作られた勇者のなり損ないが捨てられている穴だ。
僕、以外の者も捨てられているがその殆どは死んでいる。
ここの施設の穴の中では魔法も使えない。
ドラゴンの数倍の力があっても破壊は出来ないから、ここに捨てられたら、ただただ静かに死んで行くしか無い。
僕に魅力があれば何処かのお姫様が引き取ってくれたのだろう...
僕に無双する力があればミステルナイトに成れたのかも知れない...
僕に強大な魔力があれば何処かの国で宮廷魔導士として生きれたのかも知れない...
だが、欠陥品の僕にはそんな夢も見る事も出来ない...
お披露目の前に基準を満たさなかった僕は、廃棄されたのだから...
「もう疲れたな...作り出されてからずうっと休む間もなく訓練ばかり...普通の人間に産まれたかった」
普通の人間に産まれたら、恋愛をしたり、家族がいたり、今とは違った筈だ...
僕たち人造勇者は規定値さえ満たしていればお披露目に出られる。
そして、そこで各国と交渉して将来属す国を選ぶ...
ある者は綺麗な王女様の結婚相手に...
ある者は国認定の勇者となり数々の特権が与えられ国を守る。
だからこそ、僕たち人造勇者を人々は羨ましがる。
だが、そのお披露目にたてる人造勇者1人に対して廃棄されている人造勇者がどれだけいるのか人々は知らない。
そして廃棄された者には死しかない...
僕はあと何日生きられるだろうか...死ぬまでの時間は僕が生まれて初めて手に入れた自由だ。
せめて夢見ながら...楽しく死んでいこう...
それが僕の最後なのだから...
目を瞑り、静かに眠った...多分、僕はもう目を覚ます事は無い筈だ。
『あんた誰なの?』
どこからか、可愛らしい少女の声が聞こえた気がした。
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