クズ勇...こんな素敵な方を捨てるなんて..私が貰うわよ!

石のやっさん

第1話 出会い

「世界を司る6つの力よ運命に導かれし我がしもべを導きなさい」


私は六芒星の前で杖を振るっている。


魔法学院の生徒...違うわ


魔法使いの見習い....違うわ..


魔法使いのお嫁さん...全然違う..


私は...東京で暮らす、普通の女の子よ。


それが何で召喚の呪文を使っているのかって?


宝くじって買わないと当たらないじゃない?


だったら召喚の呪文も同じだと思うのよ!


毎日唱えていればいつか呼び出せるかも知れないじゃない!


正直、6億円当たるのと使い魔を呼び出せるのを天秤に掛ければ...案外同じ位かも知れない、そう思うのよ!


勿論 一等は 美少年で王子様タイプ  二等は 凛々しい勇者タイプ  三等はしゃべる猫とか?


幼稚園から今迄暇さえあれば唱えていたのよ..そろそろ当たるんじゃないかな?


呪文や魔法陣は本やインターネットで調べた物を使っている。


中には本物もあると思うの..





私の名前は 白百合京子、お父様は白百合製薬の社長をしている。


本来なら、次女とは言えお嬢様として扱われ、執事やメイドに傅かれお屋敷生活をしている筈なんだけど...




「お前の様な娘は要らん」


そういうお父様の一言で屋敷を追い出された。


300万円の手切れ金を渡されて...


なぜ、そうなったのか?


それは、私がお兄さまやお姉さまに嫌われているから...




私には百合子と言う名前のお姉さまと東吾というお兄さまがいる。


その二人の兄姉は恐ろしく優れている。


兄の東吾は中学から国立に入り、高校、大学と全部国立を卒業している..しかもその全部を首席で..そして研究員として父の会社に入り今や父の片腕だ。


姉の百合子は凄く器量が良い、母の「この子は絶対に美人になる」そういう確信から、白百合の紋章にちなんで名前も百合子、名前にまで百合が入っているのは今迄無かった、母の愛を受け止めて育った姉は美人に育ち、正に彩色兼備の完璧お嬢様に育った。


その兄姉に比べると私は到って平凡。


どんなに努力しても何一つ二人には勝てなかった。


そして、才能も無く変わり者の私は家族から孤立していった。


寝る間も惜しんで勉強しても駄目、死ぬ程頑張っても部活で成績が上がらない。


私みたいな人間こそが...馬鹿なのよ...


1日16時間勉強しても並みの成績しかとれない..


手が擦り切れる程ラケットを振っても駄目..


努力もしないで成績が出せない人は「怠け者」本当に努力しても何も手に入らない物が本当の馬鹿なの..



本当の馬鹿..馬鹿は白百合には要らない..


普通じゃない子は白百合に要らない..


そして、こんな劣等生は妹として要らない.. 


だから、私は「白百合」から捨てられた。


ここで、泣くような子なら同情して端っこに置いてくれたかも知れない。


だが、私は泣かなかった。


多分、私は何処か本当に可笑しいのかも知れない。


何時からか自分の感情が余り外に出せなくなった。



そして、そんな私は学校でも孤立していった。



姉の様なお嬢様学校に行けなかった私は普通の公立の高校に入った。


最初は、白百合と言う事で期待をされていたが、成績が悪い私は直ぐにメッキが剥がれた。


最初は取り巻き見たいな子がいたんだけど..お金を持っていない私から皆んな離れていった。


白百合の娘だから奢って貰える...そう思っていたのかな?


だけど、私、白百合だけど、お小遣いが1日200円、昼食費コミなんだ..奢れないよ、パンとジュースで終わりなんだから。


「あいつ凄く貧乏くさいな」


「多分、妾の子なんじゃ無いの? 何時も貧乏くさい」



多分、白百合じゃなければ同情して貰えたんだろうな...



ともかく、白百合の苗字があるのにカーストは最下位..


まぁ、虐められない分幸せかな..無視はされているけど...



高校位は卒業しないと将来困る。


だから、貰った300万を切り崩して高校卒業までは持たせなけれないけない。


既にこのアパートを借りるのに25万円使ってしまった。


アパートの保証人にすら白百合では誰もなって貰えず、保証会社を使った。


家財道具に5万円使ってしまった。



残りは270万円


将来を考えたらバイトも探した方が良いだろう。


だが、バイトに受かっても保証人をどうするか考えなければならない。


《状況は最悪ね..》



いくら考えてもどうしようも無い事は、どうしようもない..





だから、私は日課の召喚魔法を唱える事にした。


「世界を司る6つの力よ運命に導かれし我がしもべを導きなさい」


1人は嫌...


本当に誰でも良いよ...


私を見てくれて...


傍に居てくれればそれで良い...


本当に何でも良いの..


来て..


通販で買った、唯一のぜいたく品、英国製の魔法の杖18000円を振った。


何も起こる筈が無い..


だが、今日は違った...



《嘘、魔法陣が光輝いている..本当..これは夢では無いの?》



まばゆい位に光が広がっていく..うんマンションで良かった、家賃4万円だけどカーテンを閉めているから、光は他に漏れないだろう。


そして、魔法陣の中心に間違いなく男の子がいる。


「ここは...」


起きない筈の事が起っちゃった。


奇跡が起っちゃった。


奇跡に感謝して体を震わせながら声を出す。



「あんた誰なの?」


上手く言えない物なのね...


なんで私はこうなのかしら?





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