第9話 ゆうしゃはまおうじょうをだっしゅつした!

 残り時間0分22秒。


 ようやく勇者は魔王城の入り口までたどり着いた。長い道のりだった。

 あとは扉を開ければ外に出ることができる。

「魔王よ。俺の勝ちだ!」

 勇者は勢いよく扉を開け、魔王城から脱出した。



 一体どのようにして勇者は魔王城から脱出することができたのか? その一部始終を紹介しよう。


 残り時間9分59秒。


 カウントダウンが始まると同時に、勇者は魔王の私室へ急ぐ。そしてタンスの中から目覚まし時計を見つけると、タイマーを5分にセット。急いで眠りにつく。


 残り時間4分43秒。


 目覚まし時計の音で目覚めると、勇者はステータスを確認する。

 勇者

 LV:87

 HP:20/857

 MP:5/248

(以下略)


 ここで、勇者は中級回復魔法ベイホミを唱える。MPは全て消費してしまったが、HPは125まで回復した。


 そして急いで魔王の私室から戻ると、そこからは脳筋(脳みそまで筋肉になったかのように、考えることをせずにただひたすら突き進むという)戦法だった。


 魔王の間から出ると、骸骨剣士を一撃で粉砕。階段を降りてドラゴン、ゴーレム、鎧の騎士も普通に戦って撃破。なにせこちらはダメージを1程度しか貰わない。もう、一撃でやられてしまう勇者様ではないのだ。


 残り4分01秒。


 大広間についた。敵の数はおよそ100。そのほとんどは一撃で倒せる相手ばかりである。敵一人に対して2秒かかったとしても、200秒。勇者は余裕をもって突破することができると見積もった。


 バッサバッサと敵をなぎ倒し、大広間を抜けた時点で残り1分5秒。疲れてはいたが、HPもまだ30程度残っている。

 階段を降りて一階へ。そこでも容赦無く敵は襲いかかってくるが、勇者の相手ではない。ほとんど一撃で片付けながら見事、入り口までたどり着いたのだった。


「さあ、姫様に凱旋報告だ!」


 扉の向こうから眩しい光が勇者を照らす。彼は心も体も疲れ果てていたが、その顔は充実感に満たされていた。


CONGRATULATIONS!

次回、最終話です。

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