第6話 ゆうしゃはこんらんした!

 魔王の日記が読みたい。

 本棚にあった昔の日記も読みたい。


 いやだめだ、魔王の私室に入ってしまったら10分なんてすぐに過ぎてしまう。俺の目的は魔王城から脱出することだ。危ない危ない。

 ……ちょっとだけならいいんじゃないか? あの日記には脱出経路がどうとか書いてあった。昔のページを辿ればそのヒントになるものが書かれているかもしれない。

 などと一人で葛藤すること3分。



 残り:6分52秒



 『勇者を倒したものに次の魔王となる資格を与える』

 ふと、勇者の頭の中に、魔王が死の間際に残した言葉が浮かび上がった。


 はっ、そうか! 勇者は閃いた。


 俺が俺を倒せば、俺が魔王になるんじゃないのか? そうしたら、日記の続きを自分で書くことができる! 昔の日記も堂々と読み放題じゃないか!

 ナイスアイディア! 答えはこれだったのだ!


 ゆうしゃはこんらんし(てい)た!

 ゆうしゃのこうげき! ゆうしゃは1のダメージ!

 ゆうしゃはしんでしまった!


 ゲームオーバー。オートセーブされた場所、魔王城崩壊残り10分の時点に戻り――「ちょっと待て!」


 アナウンスを遮って死んだはずの勇者が叫ぶ。

「どういうことだ! 俺は勇者を倒したんだぞ! 魔王になる資格があるだろう!」


 すると、どこからともなく魔王の声が聞こえてきた。

「確かに魔王になる資格はあるが、お前は死んでしまっただろうが! 死んだものがどうやって魔王になるというのだ! っていうか、自分で自分を攻撃するって何考えてるんだ! ちゃんと脱出しろ!」


「……確かに。死んだら魔王になれないな」

 勇者は何も言い返すことができなかった。


 今度こそ本当にゲームオーバー。

 オートセーブされた場所、魔王城崩壊残り10分の時点に戻ります。

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