第5話 ゆうしゃはあしもとをしらべた!
「仕方ねぇよ、
またしても勇者は自分に言い聞かせるように言い訳をしている。
さて、打つ手なし……なのだろうか。もうこうなったら、全て成功するまで逃げるを繰り返すか、あるいは敵の攻撃が当たらないことを願って戦い続けるか。
勇者には、その二つの攻略法がうまくいく青写真が描けなかった。1ダメージもらうだけでおしまいなのだ。もしかして、この部屋に脱出のためのヒントが隠されているのではないか? 勇者はそう仮説を立てた。
ここは魔王城最上階、魔王の間。なぜかこの部屋には他の魔物たちは入ってこない。もしかするとここに……。
勇者は魔王の玉座の裏側に回り込んだ。そして、
ゆうしゃはあしもとをしらべた!
なんと、かいだんをみつけた!
「ヌハハハハ! 当たりだぁ! これで魔王城を脱出できる!」
勇者はまるで魔王のような笑い声を出しながら、階段を降りて行った。
残り6分33秒。
「ここは……!」
降りた先は小さな部屋だった。タンスにベッド、机の上には書きかけの日記まで置いてある。どうやらここは魔王の私室のようだ。
「魔王はここで寝泊りしていたのか……」
勇者は思わず机の上に置いてある魔王の日記をめくってしまった。
「○月○日○曜日
人間界に送り込んでいた副官ガラモスが勇者に倒された。魔界に乗り込んでくるのも時間の問題と思われる――」
他人の日記を覗き見するって、なんか背徳感があってドキドキするな……。しかも魔王のもの……って、もう消滅したから堂々と読んでも問題ないよな。勇者はそう思いながら、夢中になって魔王の日記を読み進めた。
「○月◎日■曜日
骸骨剣士の報告によると間も無く勇者が魔王の間へやってくるらしい。もしものときに備えて、脱出経路をここにしめ……」
ここで日記は終わっていた。
「おい! 脱出経路をちゃんと書いておけよ! どうして途中でやめたんだよ!」と日記に対してツッコんだ後に、自分自身にもう一度ツッコんだ。
「俺が来たからじゃねぇかよ!」
そのときだった。
天井がぐらぐらと揺れたかと思うと、ズゥン! という音が響き、部屋が崩れ落ちた。
残り:0分0秒
日記に夢中になりすぎたあまり、10分経過したことに勇者は気づかなかった。
ゲームオーバー。
オートセーブされた場所、魔王城崩壊残り10分の時点に戻ります。
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