第4話 ゆうしゃはたからばこをあけた!

 残り:8分47秒


 約1分、勇者は考えていた。逃げてばかりはダメ、戦ってもダメ、とすれば、自分にできる手立てはなんなのだろうか。HP1、MP0。全てはこれがいけないのだ。少しでも回復する手立てがあれば、局面は打開できるのだが……。

 そのとき、勇者は閃いたのだ。


「取っていなかった宝箱があったはずだ!」


 魔王戦に備えて大量の回復薬を持ち込んだため、道中、勇者はそれ以上荷物を持つことができなかったのだ。なので、魔王城の途中にある宝箱には目もくれず突き進んできたことを思い出した。


 しまった、もしかしたらあの宝箱の中に最強の武器や防具が入っていたのかもしれない。そうしたら魔王との戦いがもっと楽になっていて、こんな瀕死の状態じゃなかったはずだ。

 いや、宝箱の中はエリクサーが入っていたのかもしれない。超貴重な完全回復薬といわれるエリクサーだからこそ、宝箱に大切に保管されているはずだ。


 よし。宝箱からエリクサーを回収して、HP、MPを完全回復させる。そして迷宮脱出呪文リレミトでこの場を去る。ふふふ、我ながら完璧な作戦じゃないか! と勇者は、魔王の間で一人、薄ら笑いを浮かべた。


 残り:5分10秒


 敵に遭遇しないように、たとえ遭遇しても相手に気づかれる前に攻撃したり、先制攻撃を行うなどして、勇者はなんとか宝箱がある場所まで辿り着いた。そこには誰も手をつけていない、金色に縁取られた赤い宝箱が三つ、横一列に整然と並んでいた。


「よし、エリクサーゲットだぜ!」


 ゆうしゃはたからばこをあけた!

 なんと、たからばこはミミックだった!

 

 ミミックはこちらがみがまえるまえにおそいかかってきた!


「うそ!?」

 勇者は、死んでしまった。


 ゲームオーバー。

 オートセーブされた場所、魔王城崩壊残り10分の時点に戻ります。



 おまけ

「残り二つのどちらかがエリクサーなんだな?」

 <早送り>

 なんと、たからばこはミミックだった!

「また!?」

 勇者は、死んでしまった。


「ってことは、残りの一つがエリクサーなんだな?」

 <早送り>

 なんと、たからばこはミミックだった!

「二度あることは三度ある……のか!?」

 勇者は、死んでしまった。

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