第3話 ゆうしゃのこうげき!

「ちくしょう! 魔物が複数いたら、そりゃ逃げられないこともあるよね!」


 誰にいうわけでもなく、自分で自分に言い訳をする勇者であった。冷静に考えてみれば、逃げるのは100%成功するわけではない。一度でも逃げることに失敗してしまえば、敵の攻撃を喰らって即終了。ゲームオーバーである。

 であれば、全ての敵を倒しながら進めばいいのではないか……HPが残り1だとしても、やられるまえにやる! 逃げるだなんて勇者の名折れ! よし、そうと決まればやるしかない! 後ろは振り返らないのだ!



 残り:9分22秒

(魔王消滅直後に戻っているので、タイムは再び残り10分からスタートします)



 魔王の間の扉を開けると、そこに立つのは骸骨剣士。相手が叫び声を上げる前に、剣で敵の頭蓋骨を叩き割る。


「よし、行けるぞ!」

 今度こそ魔王城を脱出してみせる! 勇者は意気込んで階段を下りた。


 すると前回と同様にドラゴンとゴーレム、鎧の騎士がこちらに向かってやって来た。やられる前にやる! 勇者は先制でドラゴンを一刀両断にする。そしてゴーレムの攻撃を華麗にかわすと、その体の中心に剣を突き刺す。核を破壊されたゴーレムは一瞬にして崩れ落ちた。


 素早い攻撃であっという間に2体の仲間が倒されて、鎧の騎士は怯んでしまった。しかし魔物にも魔物の誇りがある。鎧の騎士は自らを奮い立たせて、大きな叫び声を上げて勇者に向か……勇者はもう、その場にいなかった。

 鎧の騎士の動きが止まったのを見逃さず、すかさず逃げたのだった。(逃げるだなんて勇者の名折れ! じゃなかったのだろうか……)



 残り:6分54秒



 魔王城大広間。

 ここにはやってくるであろう勇者を待ち構える魔物たちが、大勢待機していた。気づかれない場所からその様子を観察して、勇者は次の一手を考える。一対一ならほぼ負けることはない。問題は敵が複数でやって来たときだ。先ほどはうまくいったが、次も同じ手が通じるとは限らない。

 勇者は遠回りしてでも、別のルートを探すことにした。だが、やはり敵には遭遇してしまうのだ。


「どうしてここにスライムが8体も……」

 合体する系の水玉の魔物キングスライムになるスライムたちが現れた。攻撃をして4体までは倒せたが、残り4体に反撃を食らい(もちろん最強装備だからダメージは1なのだが……)、勇者は死んでしまった。


 ゲームオーバー。

 オートセーブされた場所、魔王城崩壊残り10分の時点に戻ります。

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