第2話 魔法を知り、検証する
とりあえず家に帰り突然生えてきたその知識について考える。
もしかしてあの中には睡眠薬が入っていて俺は改造されて知識を植え付けられた?いや、だとしたら短時間すぎるそれにだとしたら何かしら痕跡が残る。もしかして医者もグルか?いや、そんな訳ない。仮にそうでも患者を使う方が適当に拉致をするより簡単だろう。
俺は様々な考えを張り巡らせ、結論を一つ出した。
「考えても意味がないな」
とりあえずそう結論づけ、なんとなく知識にある言葉を言った。
「てか何だよこの知識【アンスール】って、使えねぇだろ」
せめて使える知識が良かったなと思いながらソファに座ってテレビを点け、海外映画を見る。
それ映画は戦争から帰ってきた主人公が今は亡き妻との子供を四苦八苦しながら育てる、涙あり笑いありの名作映画だ。
俺は今回初めて見るのだがその迫力と真に迫った演技、更にはストーリーに魅せられ涙を流していた。
「うぅ、マイケル。カッコ良すぎるだろ」
そりゃあ奥さんもマイケルに惚れるよと見ていて遂にラストシーン、と言うところで音声が変になった。
「えっ!今いいところなのに!」
どうやら映像機器の故障で吹き替え版の日本語から英語に変わってしまった。修理に出すしかないかと思い、少し暗くなった。しかし映画自体は最後まで見れたのでよかった。
映画を最後まで見た俺は風呂に入り湯船に浸かった。
「あぁー」
湯は少し熱かったがそれもまた気持ち良く、思わず声が漏れる。あまりに爺くさいその声に自嘲する。
ひとしきり湯船を楽しんだ後風呂から上がり髪を乾かす。その時にある事に気づいてしまった。特別な遺伝子を持っていない限り必ずなると言われている全世界の男性の天敵。憐れみの対象、その現象とは。
「少し、ハゲてきてる?」
最近は忙しくてシャワーを朝に浴びるようになっていたからよく見れていなかったが、前より確実に薄くなっている。これは由々しき時代だ!
そう考えていると突如として脳に天啓が舞い降りる。
「これ、俺の知識を使えばどうにかなるんじゃ」
そう、もしかしたらという考えである。絶対にどうにもならないしなったとしても気休め程度であろう。しかし、一度頭を過ぎた考え。試さないのは勿体無い。なので俺はその言葉に縋るように言った。
「【イス・フェオ・べオール】」
勿論何も起こらない。恥ずかしさを心に押し込めとりあえず今日は寝る事にした。
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次の日。
窓から朝日が差し込んでくる。
「う、ん」
とりあえず体を起こす、なんか頭が重い。なんだ?風邪でもひいたか?それにしては他は快調だし、しかも重いって言うか重りあるような。
そう思い髪の毛を触る、そこにはフサフサとしか髪の毛がある。ありすぎる。
「!?!?!?」
言葉にならない程に驚き、走って鏡の前に行く。その途中に足が何かに絡まり転んでしまう。
「いっ、てぇ」
そして足を見ると髪の毛が絡まっており尋常な数じゃない、それを見て恐ろしくなり後退りする。するとトンと何かにぶつかり其方の方を向く。
そこには例の骨董品屋の店主が笑顔でいた。
とりあえず反射で殴った俺は悪くない。
「ぶべえっ!」
良い感じの当たりを確信した俺はそいつの胸倉を掴みかかり問いただした。
「おい!お前なんか知ってるだろ!答えろよ!この現象は一体なんなんだ!」
俺がそう言うと老人は笑いながら何かを呟くと俺は吹き飛び壁へと叩きつけられた。
「かはっ!」
衝撃で死ぬかと思った。俺はその爺に文句を言おうと顔を上げると目の前にいた。俺が叫び声を上げる前に口は閉ざされ動きは封じられた。
爺は先程とは打って変わって笑顔とはほど遠い冷たい顔でこちらへ話しかけてきた。
「貴様を生かしてやっているのは貴様が私の後継者足りえるからだ、その温情すらも解らぬとは。全く、嘆かわしい」
その老人はそう言うといつの間にか持っていた杖で俺の首を持ち上げ、また何かを呟いたと思うと何処かへ転移されていた。
その時にはもう拘束も外されており自由の身であったがその老人に逆らう気にはなれなかった。
「貴様にはこれから魔術を学んでもらう、弱音は許さぬ」
死ぬ気で励めよと老人が言い俺は頷くしかなかった。
きっと俺は死なないだろうが死ぬより辛い事が待っている、そう確信した。
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