朽ち果ての神々

@sodecaxtuku

第1話 会社を辞める、片目を失う

「ねぇー先輩、この仕事やってくれない?」

「あっ、じゃあついでにこの仕事も」


あいつらはそう言うと俺の机に仕事を置き、昼食をを食べに外へ出て行った。

あいつら、苦労するだろうなぁ。

そう思いつつ俺は椅子から立ち上がり、課長に近づいて話しかけた。


「田中さん、お話があるのですがよろしいですが。お時間よろしいでしょうか?」


「あぁ、良いぞ。手短に頼む」


そう言ったので手短に終わらせる。

懐に仕舞っていた辞表を手に取り、机に置く。


「本日づけで退職する事にしました。今までありがとうございました」


それではと帰る準備をする俺に課長は血相を変え説得して来た。


「こんな唐突に渡されても困るんだよ新目君!それに仕事の引き継ぎはどうなんだ!」


「大丈夫ですよ、既に部長の方へ話は付けてありますし引き継ぎも無事に終わってます。それでは」


そう言うと課長は顔を赤くしながら他にも何か言っていたようだがよく聞き取れなかった。

会社出た際にあいつらと出会ったが何も言われなかった、後で痛い目を見ることが出来ないのが名残惜しいが良しとしよう。


「今日は焼き鳥かな」


俺はそう言うと歩き出し、近くの居酒屋によって酒とツマミを楽しんだ後コンビニに入って、酒を買い込んだ。


「えへへぇ、お酒大好き〜」


周りから変な目で見られてただろうが気にせず帰り、夜が明けるまで楽しんだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「うぇぇぇ」


次の日二日酔いになった、当然である。あれだけの量を飲んで死ななかっただけ良かったと思った方が良い。

しかし二日酔いだと言うのに心は晴れやかだ。


「気持ち悪い」


体調はお察しの通りだが。

しかし、仕事が無いって言うのはこんなに人を幸せにするのか。俺はしみじみそう思った。


ひとしきり嘔吐をして気分も優れた時、ある事に気づく。


「げっ、酒以外なんもねぇ」


いつも残業だったので基本食事は外食だったりコンビニ弁当だったので自炊の為の食材がない。

少し面倒ではあるがしょうがないので買い物に行く。


「めんど」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

家から出て歩いて向かう。強い日差しと働いてからあまり運動をしていないのが相まって既に辛い。


「あっつ〜」


これは流石に無理だと思った俺は何処かクーラーの効いた場所はないか見渡してみると目についた場所があった。


「骨董品屋、か」


そういえば入った事ないなと思い扉を開けて中に入る。そこには様々な物があった。壺に掛け軸、水彩画にまさかの刀まで。しかし、俺はそこで一際目を引く物を見つけた。


「なんだこれ、水?」


それは瓶に入った水のようだ、てか骨董品屋になんで水あんの?俺が疑問に思っていると店の奥から老人が出てきた。その老人は俺の顔を見て理解して、なるほどと頷きながら説明した。


「それは唯の水じゃないですよ、特別な水です」


俺はそう言う老人の顔を見て、質問をした。


「何処らへんが特別なんです?俺からしたらこれは唯の水に見えますけど」


と、質問をするとその老人はニコリと笑い。


「飲んでみたら分かりますよ、飲んでみます?」

「お代はいただきません、約束します」


そう言ってこの水を勧めてきた。その時は丁度喉が乾いており好意を無碍にするのもしのびないと思い、一息に飲み干した。


瞬間


「ぐぁぁぁぁっ!」


左眼に激痛が走った、その余りの痛みに膝をつき。そのまま気を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次目覚めた時、そこは病院だった。

起きて病院にいる事を認識した俺はナースコールをして看護師の方に来てもらった。


「あっ、大丈夫ですか?ふらついたり、視界にいじよ異常は無いですか?」


そう言うナースさんに対して俺は異常を答える。


「目が、片目が見えないんです」


そう言ったナースさんは驚き、すぐに医者を連れてきて診てもらった。

その後、様々な調査を行いでた結論は。


「不明、ですか?」


原因不明、何が起こっているか分からないとのことだった。医者は続けてこう説明した。


「えぇ。考えうる限り、全ての調査を行いましたが全てに異常なし。なのに目は見えない、はっきり言って異常です。脳の方に傷があるようでもないし」

「最後に考えられるのは精神の方ですが極端に見えない、そう言った方を私は聞いたことがありません」


そこまで言うと医者は頭を下げて本当に申し訳なさそうにすみませんと言った。

俺は、その姿に何も言えず家に帰った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その後家に帰る途中ふと思った、あの骨董品屋なら知っているのではと。


「はぁ、はぁ」


俺は走ってその場所まで行った。あの老人にも原因は分からなくても殴る権利はあるだろう。

そう思って走ってきたが。


「なんで、なんで無くなってんだよ」


そこにあった筈の骨董品屋は無くなっており、あるのは空き地と借地の看板だけであった。

俺の気分はまるで狐に化かされたかのようだ、実際に化かされているんだからなんとも言えない。

そのあとの俺の歩幅は極端に小さくなり、様々な事を考え始めた。

仕事の事。両親の事。他に異常はないか。などなど。しかし、一番考えていたのは。


「謎の知識が増えてる」


唐突に生えてきた謎の知識についてであった。

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